金融危機の悪影響が、アメリカの実体経済にも急速に広がっています。特に自動車産業は深刻で、ゼネラル・モーターズの株価は1年前の10分の1の水準にまで落ち込んでいます。ウォール街の混乱に翻弄されるアメリカ自動車産業の拠点、デトロイトを取材しました。
デトロイト近郊。自動車ディーラーが軒を連ねます。どの車にも「値引き」の文字。しかし、客の姿はほとんどありません。
「9月は全国的に大きく売り上げが落ち込みました。トラックやSUVなど、大型車の需要が極端に減っています」(自動車ディーラーの担当者)
今年、アメリカではおよそ700軒のディーラーが閉店に追い込まれる可能性があるといいます。2006年のおよそ2.4倍です。
創業100周年を迎えたゼネラル・モーターズ(GM)。しかし、その台所事情はこれまでになく厳しいです。記念式典のわずか3週間後、デトロイトのランドマークともいえる本社ビルの売却が検討されていることが明らかになりました。また、先週末にも、新たに1600人の人員削減が発表されました。
「本当に不安です。会社を維持するための流動資金があるのかどうか、とても心配です」(GMの従業員)
GMだけではありません。金融市場の混乱から9月のアメリカの新車販売は、およそ15年半ぶりに100万台割れ。フォードとクライスラーも、共に30%を越える大幅減となりました。
自動車社会アメリカを襲った“嵐”は、関連業者の経営も直撃しています。
デトロイトの郊外にある自動車の部品工場も9月に閉鎖となりました。「ブルーウォーター」社。破産に伴い、工場周辺だけで、およそ800人が解雇されたといいます。元従業員の女性が、解雇手当を取りに来ていました。
「14年間働きましたが 1週間前に解雇されました。いつもどおり出勤したら、“解雇だ”と・・・」(「ブルーウォーター」社の元従業員)
渡されたのは小切手と、その説明だけでした。
「解雇の理由については何も書かれていません。14年の勤務に対する手当、それだけです」(「ブルーウォーター」社の元従業員)
次の仕事は、まだ決まっていません
「忙しいから、行かないと・・・」(「ブルーウォーター」社の元従業員)
工場の閉鎖は、地元の経済にも暗い影を落とします。「ブルーウォーター」社に近いショッピングモールでは閑散とした敷地内、テナントの移転も目立ちます。
ブライアン・デピューさんがショッピングモールに食堂を開店したのは、ちょうど1年前。しかし、このところ客足が激減しています。
「『ブルーウォーター』社の人たちは、たくさん注文してくれたし、よく出前もとってくれた。これからどうやって、その分の稼ぎを取り戻せばいいのやら・・・」(モール内で食堂を経営するブライアン・デピューさん)
工場が閉鎖した9月の売り上げは、開店以来、最悪の数字でした。今も去年より2割〜3割少ないといいます。
「ご覧のとおり夜の7時半なのに客は誰もいない。でも何ができる?心配するぐらいしかできないよ」(モール内で食堂を経営するブライアン・デピューさん)
金融危機がもたらす実体経済への打撃。GMとクライスラーは、今月に入って合併も取り立たされる事態に至っています。実現すれば、経営のスリム化に伴い、関連企業への影響はさらに広がるでしょう。“負の連鎖”は、どこまで続くのでしょうか。(21日23:12)