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過労自殺の小児科医裁判、あす控訴審判決

 小児科医中原利郎さん(当時44歳)がうつ病によって自殺したのは、最大で月8回に及ぶ宿直勤務を余儀なくされるなど、勤務先での過重な労働が原因として、遺族らが病院の「安全配慮義務違反」などを理由に損害賠償を求めた民事訴訟の控訴審判決が10月22日、東京高裁で言い渡される。行政訴訟では、「うつ病は過重な業務によって発症した」と労災認定したが、民事訴訟では「うつ病と業務との因果関係が認められない」と、同じ東京地裁が“正反対”の判決を下し、遺族らが控訴していた。医師の宿直の過重性や病院の「安全配慮義務」について、高裁がどのような判断を示すかが注目される。(山田利和・尾崎文壽)

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 行政訴訟は2007年3月14日に判決があり、東京地裁は「うつ病になる直前の1999年3月には宿直が8回に増え、休日は2日しかなかった。また(6人いた小児科医が3人に減る中)後任の医師を確保できず、(部長代行だった中原さんに)、管理職として強いストレスが掛かっていた。病院の業務が精神疾患を発症させる危険性を内在していた」などとして、労災を認定。厚生労働省が控訴しなかったため、労災が確定した。
 しかし、行政訴訟の判決から半月後の3月29日に同じ東京地裁であった民事訴訟の判決では、「宿直中に仮眠ができないほど患者はなく、一定の余裕があった。業務が原因で、うつ病を発症する危険な状態だったとは言えない」などとして、原告の訴えを棄却した。

 行政訴訟で労災が確定したものの、民事訴訟では、「宿直など労働が過重ではなかったとしたこと、また、うつ病を発症させる原因が業務にはなかったとしたことには承服できない」などとして、遺族らが4月11日、東京高裁に控訴した。

 控訴審の最大の争点は、行政訴訟と民事訴訟の一審判決で見解が正反対に分かれた中原さんの宿直勤務の過重性をどう判断するかにある。

 中原さんの勤務先だった立正佼成会附属佼成病院(東京都中野区)では99年1月から4月にかけて、中原さんを含めて6人いた小児科医のうち、部長を含む3人が退職し、中原さんが部長代行となった。残った3人のうち、中原さん以外はいずれも女性で、出産や育児、介護などを抱えており、宿直などの負担が中原さんに及んだ。中原さんの宿直勤務は最大で月8回あり、宿直回数が月平均で一般の小児科医の1.7倍に当たる5.7回に上るなどの勤務が続いた。
 医師の退職が相次ぎ、宿直など小児科の医療体制に支障を来す中、代わりの医師が補充されず、中原さんには医師としての勤務のほか、部長代行としてのストレスも加わり、同年6月までに、うつ病を発症した。

 控訴審では、遺族ら原告側は、通常を超える宿直などの負担が中原さんに及び、医師としての業務が心身に影響を及ぼすほど過重になりながらも、病院側が使用者として適切な対応を取らなかったとして、病院が「安全配慮義務」を怠ったことについての責任も求めている。

 使用者の「安全配慮義務」については、最高裁が2000年3月14日、過労で自殺した社員の遺族らが電通に使用者としての責任を求めた「電通事件」の判決で、使用者が労働者を雇用するに当たっては、労働者の心身や健康に変調を来さないように配慮する義務があるとの判例を示しており、中原さんを雇用していた佼成病院の「安全配慮義務」について、どのような判断が下されるかが注目されている。


更新:2008/10/21 16:08   キャリアブレイン


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