公立紀南病院組合(管理者=真砂充敏田辺市長)の累積赤字が50億円近くに膨らんだ。組合議会の定例会で報告された2007年度決算では、単年度でも6億8760万円に上る赤字が出ている。 赤字が膨らんだのは、紀南病院が田辺市湊から新庄町に移転した05年度以降。10年前の累積赤字は3623万円だった。移転に関連した組合の出費は109億円に上り、09年度末までこの関連で毎年約13億円の支出が続くという。 県市町村課によると、県内にある14の公立病院の06年度決算はすべて赤字だった。中でも紀南病院の単年度赤字額は15億円近くに上り、最大だった。累積赤字は06年度末現在、橋本市民病院が約52億円で1位、紀南病院が約43億円、那賀病院が約42億円、有田市立病院が約34億円で続いている。 こうした状況から総務省は全国の公立病院に、経常収支の黒字化を目標にした改革プランの策定を求めている。これに基づき紀南病院組合はいま、11年度決算で黒字に転じるプランを策定している。 さらにこの計画とは別に、06年3月に「病院事業経営中期計画」(実施期間06〜09年度)を策定、実施している。初年度の06年度は計画よりも赤字が悪化したが、07年度は計画よりも改善し、07年度末の累積赤字は、当初見込みより約1億円抑制できたという。 今回策定中の計画では、累積赤字のピークは10年度の約63億円。11年度以降は減少に向かうという。病院組合は「一気に減らせないが、黒字を重ねて徐々に減らしていきたい」と話す。 心配は赤字だけではない。社会保険庁の改革で、紀南病院の保有権がこのほど独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO)に移された。組合は「保有権が移っても、地域の医療体制を損なわないよう配慮されるので影響がない」という。しかし、巨額の赤字を抱えた体質では、先行きが心もとない。 運営面でも不安がある。電子システムの業務を委託している北海道のシステム会社が民事再生法適用会社になった。この会社がもし業務停止になれば、紀南病院が使用している電子システムを使えなくなる可能性も出ている。この問題については、組合議会でも厳しい指摘を受けた。 紀南病院組合は、経営健全化に取り組んだ実績がある。1988年度末には10億円を超える累積赤字があったが国や県、組合構成自治体から支援を受け、98年度末には3623万円まで減らした。 しかし、そのころとは市町村の財政事情が激変した。組合を構成する田辺、上富田、白浜、みなべの1市3町の財政状況は苦しく、新たな支援を行う余裕はない。 それだけに、財政再建には病院を挙げた取り組みが欠かせない。病床利用率のアップ、経営効率改善につながる各種数値目標の設定とその実行。緊急にやるべきことは、山積している。 いまこそ抜本的な経営改革に本腰を入れ、改善努力を継続する時だ。地域の基幹病院であり、住民の医療と健康を支える病院である以上、その灯を消すことはできないのである。(N)