October 16, 2008
極悪集団野村ＨＤ100%子会社、ジョインベスト証券の問題（中）
前回の記事はこちらジョインベスト証券は野村ＨＤが急成長を遂げていたネット証券に対抗し、2006年に設立した子会社である。ネット証券の中でも手数料は安く、ツールも比較的使い勝手がよく、評判は悪くない証券会社である。ただ、2007年度は84億円の赤字と、あまり成功はしていなかった。
さて、このジョインベスト証券であるが、36時間の間、何をしていたかが焦点である。火曜日の大引け後、ストップ高での買い注文は比例配分されず、一旦ネット上ではこの買い注文は失効しましたという旨の表示があったという。そして買い注文が失効すれば、注文のために使われていた資金は自動的に顧客に戻り、余力は回復する。事実、水曜日には何事も無く、何も比例配分されていないまま、新たな取引ができたという。
だが、木曜日になったとたん、顧客に対し、比例配分で株が買えましたという連絡がある。失効となっていた株は成立してしまった。
大きな問題点の一つは、一度失効となった注文が、後に復活した点である。ジョインベストが原因としている、許容範囲を超える注文数によるシステムトラブルが本当であったとすれば、顧客に対する配分も行われていないのに、失効と表示されるのはおかしい。仮にシステム上失効と表示されてしまったのであれば、その旨を顧客に対し迅速に伝えるべきであったはずである。
このことで何が起こるかと言えば、失効となり、余力が復活した顧客が翌日の水曜日に新たに株を売買している可能性があるということである。もし顧客が水曜日、資金目一杯株を買うか売るかして資金の余力が無いまま木曜日となった時、火曜日の比例配分は実はされていました、成立した株式分の資金が必要となりました、という場合、新たな現金が必要となってしまう。
例えば1000万円の資金を持つ人がいる。この時点で余力は1000万円である。火曜日、任天堂株を800万円分ストップ高で買い注文。余力は200万円に減少。注文は比例配分されないまま失効。次の日、水曜日の余力は当然1000万円に戻っている。この人は新たに1000万円分トヨタ株と三菱ＵＦＪ株を買い、そのまま売らずに持ち越した。この時点で余力は0円。だが、木曜日になってから実は火曜日の800万円分の任天堂株が比例配分されていました、という通知が来る。ここで余力はマイナスの800万円となってしまう。追加で800万円の資金を要求されてしまい、この人は何とかして800万円を作らなければならない。このような感じである。実際、現物株であるのに追加の現金の入金を要求されている顧客もいるとのこと。
一度失効となったものを復活させること自体、意味のわからない行為であり、それが36時間後であるというのもおかしい。どれだけ遅延したとしても翌日水曜日の朝までに比例配分がしっかりなされていれば、余力が復活することは無く、ここまで大きな問題とはならなかった。
二つ目の問題点は取引参加者の取引機会を奪ったことである。このあたりは難しい。と言うのも、システム上の遅延はあり得るものとして、ある程度顧客は認識しなければならないからである。普段の株式注文でも考えられるタイムラグの他にシステム上、何らかのトラブルがあり、数秒以上遅延するような事例もある。だが、36時間という時間は到底常識では考えられない。
もし、正常なシステムにおいて、顧客が受けるべき比例配分で株を買うことができていた場合、水曜日にその株を売るという取引が可能であった。仮に株を持ち続けていたいと考えたとしても、売るか持ち続けるか、顧客の意思として選択できたわけである。
運の悪いことに、火曜日はストップ高続出の大幅高であり、水曜日は小幅高、木曜日は大幅下落であった。もちろん個別株によって高安まちまちなので一概には言えないが、火曜日に買った株を水曜日に売ることによって利益を得ることができた可能性もある。
さらに言えば、木曜日に比例配分で得られる株価は火曜日のストップ高の価格である。三菱商事株の例を出せば、火曜日のストップ高での株価は2020円。もし比例配分が正常にされていれば、火曜日に2020円で株を買えたことになり、水曜日の高値、2040円で売り、利益を得ることも可能であった。しかし、実際は木曜日に比例配分の株が来てしまい、仮に木曜日の高値で売れたとしても1785円でしか売ることができない。この問題点において実質的に株価の上下は問題の焦点ではないが、こういった取引機会を逸したことは重大な問題であり、損失補填の問題に発展してもおかしくはない。
そして重要なのは三つ目の問題点である。（続く）
ジョインベスト証券の問題（下）part1