吉幾三特別公演
待望の「吉ワールド」が錦秋の中日劇場で全開。10月5日から29日
【社会】施設の子に一軒家提供 岐阜の女性、無償で2008年10月21日 夕刊 さまざまな事情で家族と暮らせない子どもが集まる岐阜市の児童養護施設「日本児童育成園」に、同市の河合波子さん(86)が長年住んだ一軒家を無償で貸与した。今、一軒家では働きながら定時制高校に通う女子生徒2人が職員と暮らし、社会へ巣立つ準備中だ。 河合さんは長男(67)が生まれてすぐ、夫を戦争で亡くした。脳炎後遺症で障害が残る長男を女手ひとつで育て、18歳になって児童特別支援学校を卒業した時から住んできた家。2人が市内のケアハウスに移り住むことになり、空き家に。取り壊すため昨年末、布団を同園へ寄付しようとしたところ、長縄良樹園長(61)から「施設の子どもに家を貸してもらえないか」と頼まれた。 育成園では、大部屋で数人が寝食を共にする集団生活。「子どもたちは施設から突然社会へ放り出される。その前に1人暮らしに備えるゆとり、場所があれば」。40年、児童福祉にかかわってきた長縄園長の夢だった。 「長男のことでいろんな人の世話になった。施設の子どもたちのためになるなら、この家が壊れるまで自由に使ってほしい」と河合さんは申し出を快諾。長縄園長は一軒家を「壁にぶつかったときに帰れる止まり木のような場所にもなれば…」との思いから「樹(き)の実ホーム」と名付けた。 今年の4月末から定時制4年の黒沢明日香さん(19)と介護福祉士を夢見る2年生(17)が、ソーシャルワーカーの女性職員とともに新生活を始めた。 最初のころは、夜、心細くなった2年生が一緒に寝てほしいと黒沢さんの部屋に来ることもあった。しかし、2人は「いかにも一般家庭って感じ」とあこがれていた対面式キッチンで料理の腕をふるうなど、仕事や学校に通いながら徐々に生活は軌道に乗っていった。 黒沢さんは幼稚園教諭の資格を取るため、自動車部品工場で働いて貯金。来春、短大への進学が決まっている。「夢を実現させ、自立した自分を見てもらいたい」と話す。 彼女たちは、これが河合さんへの恩返しだと考えている。
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