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【発明の名称】 コルゲート管の製造方法およびこの製造方法により製造されたコルゲート管
【発明者】 【氏名】後藤 隆志
【住所又は居所】愛知県海部郡大治町大字花常字円楽寺15番地 株式会社三洋化成内

【氏名】野崎 勇
【住所又は居所】愛知県海部郡大治町大字花常字円楽寺15番地 株式会社三洋化成内

【要約】 【課題】管の径を小さくしても、管内面が平滑に仕上がり、しかも、屈曲性の良好な多層構造の管壁を製造可能にしたコルゲート管の製造方法を提供する。

【解決手段】本発明のコルゲート管の製造方法は、成形材料を多層に重ねて環状ノズルから押出す工程と、環状ノズルから押し出された多層構造の管状押出品(10)を波付け型の波付け用通路に送る工程と、波付け型の波付け溝で管状押出品(10)の周囲を吸引し、管状押出品(10)の管壁に波付けを行う工程とを備える。管状押出品(10)の外側層(12)より内側のいずれかの層は、発泡層(13)であり、かつ、この発泡層(13)の発泡力は、波付け溝の吸引力を相殺する程度に制御される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料を多層に重ねて環状ノズルから押出す工程と、
前記環状ノズルから押し出された多層構造の管状押出品を、波付け型の波付け用通路に送る工程と、
前記波付け型の波付け溝で前記管状押出品の周囲を吸引し、前記管状押出品の管壁に波付けを行う工程とを備えたコルゲート管の製造方法であって、
前記管状押出品の外側層より内側のいずれかの層が発泡層であり、かつ、この発泡層の発泡力が前記波付け溝の吸引力を相殺する程度に制御されることを特徴とするコルゲート管の製造方法。
【請求項2】
前記波付け型の波付け用通路内に、前記成形材料が多層状態で共押し出しされる、請求項1記載のコルゲート管の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載のコルゲート管の製造方法により製造されることを特徴とするコルゲート管。
【請求項4】
前記発泡層が熱可塑性エラストマーである、請求項3記載のコルゲート管。
【請求項5】
前記管状押出品の外側層と内側層との間の中間層に前記発泡層が設けられる、請求項3または4記載のコルゲート管。
【請求項6】
外側層、中間層および内側層の成形材料が、それぞれ外側層:低密度ポリエチレン、中間層:オレフィン系エラストマー、および内側層:オレフィン系エラストマーであり、中間層のオレフィン系エラストマーには発泡剤が添加される、請求項3、4または5記載のコルゲート管。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コルゲート管の製造方法およびこの製造方法により製造されたコルゲート管に関するものである。本発明によるコルゲート管は、例えば、家電製品(エアコン、洗濯機等)、自動販売機、浄水器、医療機器等のフレキシブルホースとして用いられる。
【0002】
【従来の技術】
従来より、波状に連続する管壁を備えたコルゲート管が知られている。図10に示すように、従来のコルゲート管1は、その管壁2に波状の凸部2aおよび凹部2bが形成される。凸部2aおよび凹部2bは、それぞれ管壁2の周方向に環状に連なり、長さ方向に交互に並ぶ。
このようなコルゲート管1の製造方法としては、あらかじめ押出金型のノズル前方に波付用の金型を向き合わせて配置しておき、これらの金型の間に外側層3と内側層4の成形材料を重ねて管状に押し出す。次いで、金型の波状溝(波付け溝)に管状押出品の周面を押し付けるか、または真空吸引することで管壁2を波状に成形している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のコルゲート管の製造方法では、管壁2に波付けをするとき、外側層3と内側層4とが同時に波付け溝に吸着されるため、コルゲート管1の内面に皺状の凹みHが形成されやすい。このため、このような凹みHによって、管内にゴミ等が詰まりやすくなったり、管内を通る流体の流れが悪くなる等の不具合が生じていた。
【0004】
これに対し、このような不具合を解消するようにしたコルゲート管の製造方法も知られている。この種の製造方法によれば、外側層および内側層の成形材料をそれぞれ異なる環状ノズルから押し出し、外側層の成形材料のみを波付け溝に真空吸引して波付けする。その後、成形材料が固まる前に外側層と内側層とを型内で融着している(特許文献1参照)。
【0005】
このような製法により製造されたコルゲート管5は、図11に示すように、外側層6のみに波状の管壁が形成され、内側層7には形成されない。内側層7の内面が平滑に形成されるため、管内の流体抵抗が小さくなり、流体がスムーズに流れる。
【0006】
【特許文献1】
特公昭51−20548号公報
【特許文献2】
特開平10−95051号公報
【特許文献3】
特表平11−503217号公報
【特許文献4】
特開平8−170761号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようなコルゲート管の製造方法によっても、その製法上、次のような問題がある。すなわち、外側層と内側層とを押し出すための環状ノズルがそれぞれ別個に必要になるため、押出金型の先端口金部分の構成が複雑になりやすい。特に、径の細いコルゲート管を製造しようとすると、環状ノズル等の加工が難しくなり、製造コストが増大する。
【0008】
また、環状ノズルの小型化が難しいために、図11に示すように、外側層6に比べ内側層7の厚みが大きくなる傾向があり、コルゲート管5が肉厚で屈曲性の悪い製品になりやすい。
このような理由から、従来のコルゲート管の製造方法では、近年需要が増大している細径のフレキシブルホースを提供しにくいという問題があった。
【0009】
本発明は、このような現状に鑑みなされたもので、管の径を小さくしても、管内面が平滑に仕上がり、しかも、屈曲性の良好な多層構造の管壁を製造可能にしたコルゲート管の製造方法を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
[第1発明]
前記課題を解決するための本発明(第1発明)のコルゲート管の製造方法は、
成形材料を多層に重ねて環状ノズルから押出す工程と、
前記環状ノズルから押し出された多層構造の管状押出品を、波付け型の波付け用通路に送る工程と、
前記波付け型の波付け溝で前記管状押出品の周囲を吸引し、前記管状押出品の管壁に波付けを行う工程とを備えたコルゲート管の製造方法であって、
前記管状押出品の外側層より内側のいずれかの層が発泡層であり、かつ、この発泡層の発泡力が前記波付け溝の吸引力を相殺する程度に制御されることを特徴としている。
【0011】
本発明(第1発明)によれば、管状押出品が波付け溝に吸引されると、管状押出品の外側層が波状に成形される。このとき、発泡層の内部に発泡ガスが発生し、発泡ガスによる発泡力(正圧)が波付け溝の吸引力(負圧)を相殺するため、発泡層が波付け溝に吸い寄せられるのが回避される。この結果、発泡層より内側の層には、波付け溝からの吸引力がほとんど作用しなくなり、コルゲート管の内面が平滑になる。
【0012】
本発明(第1発明)において、前記発泡層は、成形材料を化学的または物理的な方法によって発泡させることにより形成することができる。化学的な方法としては、例えば、成形材料に発泡剤を適量混ぜることで発泡層とすることができ、また、物理的な方法としては、成形材料に炭酸ガス等の気体を適当な割合で混合することで発泡層とすることができる。
望ましくは化学的な方法による。均一な発泡状態が得られやすく、また、発泡剤の取り扱いが簡単で安全性を確保しやすいためである。
【0013】
前記発泡層の発泡力を制御する方法については、成形材料に添加する発泡剤の添加量を調節することにより行うのが望ましい。具体的には、成形温度、押出速度、波付け溝の吸引圧等を考慮して、波付け溝から発泡層に作用する吸引力と、成形材料の共押し出しの際に発泡層に生じる発泡力とが釣り合うように発泡倍率を調節する。押出し機や波付け機の使用条件に合わせて適宜試験等を行い、発泡剤の最適な添加量を設定しておくとよい。
【0014】
前記成形材料としては、フレキシブルホースを製造するために一般的に用いられる熱可塑性樹脂を使用することができ、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレン,ポリメタクリル酸メチル,ナイロン (ポリアミド),ポリエステル,ポリカーボネート,ポリアセタール,酢酸セルロース等が挙げられる。
なお、各層の成形材料は、全て異なる種類であってもよいし、全て同種の成形材料であってもよい。
【0015】
本発明(第1発明)において、「発泡層の発泡力が前記波付け溝の吸引力を相殺する程度」とは、波付き溝の吸引力によりコルゲート管の内面に皺を生じさせない程度に発泡層の発泡力が高められることを意味する。波付け溝の吸引力と発泡層の発泡力とがほぼ均一に釣り合うと、コルゲート管の内面は、凹凸のない平滑面になる。発泡層の発泡力が小さすぎて波付け溝の吸引力を十分に相殺できないときには、図10に示すように、コルゲート管の内面に皺状の凹みHが生じる。本発明(第1発明)による発泡力の制御の範囲には、コルゲート管の内面が均一な平滑面になる場合の他、このような皺状の凹みが解消される程度に、発泡層の発泡力が制御されているものも含む。
【0016】
なお、多層構造のコルゲート管に発泡層を採用する先行技術としては、特許文献2と特許文献4が挙げられる。これらに記載の発明は、管状押出品の外側層を吸引して波付けをするものではなく、コルゲート管の外径寸法の精度を高めるために、外側層を発泡力で外側に押し広げて波付けを行うものである。このような製法では、内側層の内面が平滑になるように発泡層の発泡力を制御すると、外径寸法の精度が悪くなり、品質の高いコルゲート管を製造することが困難になる。
これに対し、本発明(第1発明)では、波付け溝の吸引力によって外側層に波付けを行い、かつ、発泡層の発泡力によって内側層の平滑化を行う。すなわち、波付け溝の吸引力を相殺する程度に発泡層の発泡力を制御することで、外側層の精度の高い波付けと、内側層の平滑化とを同時に達成することができ、均一な内面をもつ高品質のコルゲート管を製造することが可能になる。
【0017】
[第2発明]
本発明(第2発明)のコルゲート管の製造方法は、本発明(第1発明)のコルゲート管の製造方法において、前記波付け型の波付け用通路内に、前記成形材料が多層状態で共押し出しされることを特徴としている。
【0018】
一般に、多層構造のコルゲート管の内面を平滑にする製造方法においては、最初に外側層の成形材料を押し出し、波付け溝で波付けを行い、その直後に内側層の成形材料を押し出し、外側層の内面に融着させる。すなわち、各層の成形材料を異なる管状ノズル(口金)で時間差をもって波付け通路内に押し出している。また、この種の製造方法では、外側層と内側層との接着を確実に行うために、管軸方向に延びるマンドレルによって内側層の内面を径外方向へ加圧成形するようにしている(特許文献1、3および4参照)。
【0019】
本発明(第2発明)によれば、波付け通路内に多層状態の成形材料を同時に押し出すことから、単一の管状ノズルより、時間差を考慮することなく、各層の成形材料を押し出すことができる。これにより、先端口金部分の構成が簡素化され、小型化を図りやすくなる。また、成形材料の共押し出しによって各層間の接着性が良好になるため、マンドレルによるコルゲート管の加圧成形を行わなくて済む。さらに、発泡層を含む多層の成形材料を波付け通路に同時に押し出すことによって、波付け溝への外側層の吸着と、内側層の発泡力による反発とがほぼ同時のタイミングで行われ、吸引力に対する発泡力の制御が行いやすくなる。
【0020】
[第3発明]
本発明(第3発明)のコルゲート管は、前記第1発明によるコルゲート管の製造方法により製造されることを特徴としている。
本発明(第3発明)のコルゲート管によれば、前述したように、その内面が平滑な面に形成される。これにより、流体が管内をスムーズに流れやすくなり、管内壁にゴミ等が付着しにくくなる。
また、本発明(第3発明)によるコルゲート管は、発泡層の周辺(特に発泡層の外側部分)に発泡ガスによる空洞が形成されやすい。このような空洞によって管壁の断熱性および屈曲性を向上させることもできる。
【0021】
[第4発明]
本発明(第4発明)のコルゲート管は、前記発泡層が熱可塑性エラストマーであることを特徴としている。
一般に、フレキシブルホースの成形材料としては、耐水性、耐蝕性等に優れた低密度ポリエチレンを用いることが多い。本発明(第1発明)の製造方法によりコルゲート管を製造する場合には、各層の成形材料に低密度ポリエチレンを用いてもよいが、発泡層に低密度ポリエチレンを使用すると、管壁が硬くなり、屈曲性が不十分になりやすい。
本発明(第4発明)のコルゲート管によれば、発泡層が熱可塑性エラストマーで形成されるため、発泡層の弾性力によって屈曲性が良好になる。また、エラストマーの柔軟な性質により発泡力の制御が行いやすくなる。
【0022】
熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等を用いることができる。
オレフィン系エラストマーとしては、例えば、プロピレンとエチレンとを共重合したもの、プロピレンとブテン−1とを共重合したもの、エチレンとブテン−1とを共重合したもの、プロピレン、エチレンおよびブテン−1を共重合したもの、プロピレン、エチレンにヘキサジエン、ノルボルネン、シクロペンタジエンやその他のオレフィンを共重合したもの等が挙げられる。
また、スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−ブタジエンランダムコポリマー等が挙げられる。
これらの異なる種類の熱可塑性エラストマーをブレンドしたものを用いてもよい。
【0023】
[第5発明]
本発明(第5発明)のコルゲート管は、前記管状押出品の外側層と内側層との間の中間層に前記発泡層が設けられることを特徴としている。
通常、発泡層の表面には、気泡による細かな凹凸が生じやすいため、コルゲート管の内面に発泡層が露出すると、管内面の流体抵抗等の性能が低下しやすくなり、気泡内に流体が浸透するおそれがある。
本発明(第5発明)によれば、外側層と内側層との間に発泡層が設けられるため、発泡層の表面がコルゲート管の内面に露出することがない。これにより、コルゲート管の内面をより平滑にすることができ、流体抵抗等の性能に優れたコルゲート管を製造することができる。
【0024】
[第6発明]
本発明(第6発明)のコルゲート管は、外側層、中間層および内側層の成形材料が、それぞれ外側層:低密度ポリエチレン、中間層:オレフィン系エラストマー、および内側層:オレフィン系エラストマーであり、中間層のオレフィン系エラストマーには発泡剤が添加されることを特徴としている。
【0025】
本発明(第6発明)のコルゲート管によれば、外側層に低密度ポリエチレンを用いるため、管表面の耐水性、耐蝕性、耐候性等が良好になる。
また、中間層および内側層にオレフィン系エラストマーを用いることで、コルゲート管の屈曲性が良好になる。
さらに、外側層、中間層および内側層がオレフィン系成形材料であることから、成形材料の相溶性が良好になり、層毎に分離しにくい丈夫なコルゲート管を製造することができる。
【0026】
前記中間層のオレフィン系エラストマーに添加する発泡剤には、クエン酸および重炭酸ナトリウムを含むオレフィン系発泡剤を用いるのが望ましい。オレフィン系発泡剤の添加率は、例えば、大気圧下において、オレフィン系エラストマーの比重変化が重量比で45%〜54%程度、望ましくは48%〜49%程度の範囲になるように調節するとよい。なお、このオレフィン系エラストマーの比重変化による重量比の範囲は、発泡剤を使用することなく、物理的なガス発泡により中間層を発泡させる場合にも適用することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の実施形態によるコルゲート管の一例を図1に示した。
コルゲート管10は、三層構造の管壁11を有している。管壁11の外周には、波状の凸部10aおよび凹部10bが交互に並んで形成されている。凸部10aと凸部10aとが長さ方向に伸縮することで管壁11が自在に変形する。すなわち、波状の凸部10aおよび凸部10aがコルゲート管10の屈曲性を良好にし、扁平化強度を高める役割を果たしている。
【0028】
図2および図3に示すように、管壁11は、外側層12、中間層13および内側層14が順に積層されている。これらの層のうち、中間層13が発泡層になっている。
【0029】
外側層12と中間層13との間には空洞Sが形成される。外側層12の凹部10bを構成する部分が中間層13に接し、凸部10aを構成する部分が中間層13から離れた位置にある。空洞Sに露出する中間層13の壁面13aは、凸部10aに向かって僅かに膨張している。
中間層13の内側には内側層14が一定の層厚で長さ方向に延びている。この内側層14は、コルゲート管10の長さ方向に円筒状に延び、その内面はほぼ均一な平滑面になっている。
【0030】
次に、コルゲート管10の製造方法について説明する。
[成形材料の調製]
コルゲート管10の成形材料は、例えば外側層12に低密度ポリエチレン、中間層13および内側層14にオレフィン系エラストマーを使用することができる。中間層13の成形材料には、押出し時に中間層13の発泡力と、波付け溝から外側層に12に作用する吸引力とが釣り合うように、あらかじめ適量の発泡剤を添加しておく。
【0031】
[押出工程]
成形材料の押出工程は、従来から一般的に用いられる多層チューブ製造用の押出金型によって行うことができる。押出金型の構成例を図4に示した。
図4に示すように、押出金型20は、移送部21とノズル部22を備える。移送部21には、成形材料を送り込む導入口が設けられる。移送部21の導入口に投入される成形材料が所定温度を保ってノズル部22側へ送られる。ノズル部22には、成形材料を管状に押し出す環状ノズル23が設けられる。
【0032】
移送部21には、成形材料を供給するための通路r1、r2、r3が設けられる。通路r1、r2、r3には、それぞれ異なる導入口から成形材料が投入される。通路r1、r2、r3は、所定の距離だけ進んだ位置で合流して単一の通路R1となり、環状ノズル23の通路R2に連なる。
通路r1、r2、r3の各導入口に外側層12、中間層13、内側層14の各成形材料を投入すると、各成形材料が通路r1、r2、r3を通過し、通路R1で重なり合って多層構造になる。そして、多層構造を保った状態で通路R2を通過して環状ノズル23から押し出される。
【0033】
[波付け工程]
波付け工程では、押出金型から押し出される管状押出品を一定の速度で搬送しながら、波付用の金型で真空成形する。例えば、図5および図6に示すようなキャタピラ式の波付け機を使用することができる。
【0034】
図5に示すように、波付け機25は、環状ノズル23の延長上に一対の波付け用の金型26A、26Bが向き合わさって移動可能になっている。金型26A、26Bの互いに向き合う面に波付け溝(キャビティ)が形成されている。図5矢印に示すように、金型26A、26Bは、所定の距離だけ移動した後、一旦分離し、逆方向に移動して環状ノズル23側へ戻る。すなわち、管状押出品を搬送しながら波付けを行う動作を繰り返すようになっている。
【0035】
図6に金型26A、26Bの拡大図を示した。金型26A、26Bには波付け溝の各溝に通気孔Tが設けられる。通気孔Tは、金型26A、26Bに貫通して延びている。金型26A、26Bの内側に通気孔Tの一端が開口し、外側に通気孔Tの他端が開口している。
金型26A、26Bの周囲には減圧室Rが設けられており(図5参照)、減圧室Rの気圧を下げることで、通気孔Tを介して型内に吸引力が作用する。
金型26A、26Bの間に管状押出品28を導入して減圧室Rの気圧を下げると、管状押出品28の外周面が波付け溝に吸引されて波状に成形される。管状押出品28の搬送方向に沿って金型26A、26Bを順次移動させることにより、管表面に連続的な波形状が成形される。
【0036】
[作用]
図7に示すように、成形材料は、多層状態のまま環状ノズル23から金型26A、26Bの間の波付け用通路に同時に押し出される。このとき、金型26A、26Bで管状押出品の周囲を吸引すると、外側層12のみが波付け溝に吸着され、中間層13および内側層14はほとんど吸着されずに元の積層状態を保つ。
これは、次に示すような作用による。すなわち、通気孔Tを介して波付け溝が減圧されると、管状品の外側層12が波付け溝に吸引され、その吸引力によって波状の溝面に密着する。このとき、中間層13は、急激な圧力低下にともなって発泡し、発泡ガスの一部を外側層12へ向けて放出する。そして、この発泡ガスの発泡力が波付け溝の吸引力を相殺する効果を発揮し、外側層12から中間層13を引き離す。
このような発泡ガスの作用により、外側層12と中間層13とは、波付け溝内で互いに分離し、両者の間に空洞Sが生じる。また、中間層13の外面には、空洞Sに向けて僅かに突出する程度の膨らみが形成されることになる。そして、内側層14の内面は、波付け溝からの吸引力がほとんど作用しないため、平滑な面になる。
【0037】
このように本実施形態によるコルゲート管の製造方法によれば、平滑な内面を有する多層構造のコルゲート管を容易に製造することができる。
また、単一の環状ノズルから多層構造の成形材料を押し出すため、管壁の厚みを抑えやすく、コルゲート管の屈曲性を良好にすることができる。
さらに、押出金型のノズル部分(口金部分)の構成が簡素化され、しかもマンドレル等の補助部材を設ける必要がないため、細径のコルゲート管を製造する場合でも、平滑な内面をもつ多層構造のコルゲート管を精度よく製造することができる。発明者らの試作によれば、内径φ8mm〜30mm程度のコルゲート管であっても、その内面をほぼ均一な内面に仕上げることができた。
【0038】
次に、コルゲート管の評価試験について説明する。
外側層、中間層(発泡層)および内側層に、各種成形材料を組み合わせてコルゲート管の品質を評価した。
表1に示すように、試験例1〜6は、外側層に低密度ポリエチレン(LDPE)、中間層(発泡層)に低密度ポリエチレン(LDPE)またはオレフィン系エラストマーを使用した。また、内側層には、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、オレフィン系エラストマーのうちいずれか一種を選択的に使用した。
【0039】
【表1】


【0040】
中間層(発泡層)に添加する発泡剤には、クエン酸および重炭酸ナトリウム(合計で40wt%程度)を含むポリエチレン系発泡剤を使用した。ポリエチレン系発泡剤の添加率は、中間層(発泡層)の成形材料に対し重量比で3.0wt%とした。
前述した構成の押出金型および波付け機を用いて、それぞれ同一の製造条件の下、ほぼ同一の外径および内径をもつコルゲート管を製造した。
【0041】
コルゲート管の評価方法は、平滑性、屈曲性および融着性の各項目について行った。
平滑性の評価は、管内面がほぼ平滑であるものを「◎」、管内面がやや波状であるものを「○」、管内面に皺が発生したもの「△」とした。屈曲性の評価は、折り曲げやすさが極めて良好なもの「◎」、やや良好なものを「○」、良好なものを「△」とした。融着性の評価は、各層が手で剥がれない程度に融着しているものを「◎」、いずれかの層が手で剥がれるものを「○」、成形の段階でいずれかの層が分離するものを「△」とした。評価の結果を表1に示す。
【0042】
表1に示すように、試験例1〜5によるサンプルは、平滑性、屈曲性または融着性のいずれかの評価で他のサンプルよりも劣るものがあるのに対し、試験例6では、全ての評価項目で優れた結果を示した。このような結果から、本発明によるコルゲート管を製造する場合の成形材料としては、外側層に低密度ポリエチレン、中間層(発泡層)にオレフィン系エラストマー、内側層にオレフィン系エラストマーのを組み合わせると、高品質のコルゲート管が得られることが判る。
【0043】
次に、中間層(発泡層)の発泡剤添加率を変化させた場合の各種コルゲート管について品質を評価した。
表2に示すように、試験例7〜11は、外側層に低密度ポリエチレン(LDPE)、中間層(発泡層)にオレフィン系エラストマー、内側層にオレフィン系エラストマーを使用した。
【0044】
【表2】


【0045】
中間層(発泡層)に添加する発泡剤には、クエン酸および重炭酸ナトリウム(合計で40wt%程度)を含むポリエチレン系発泡剤を使用した。
発泡剤添加率は、中間層(発泡層)の成形材料に対し重量比で1.0〜5.0wt%まで順に増加するように設定した。
前述した構成の押出金型および波付け機を用いて、それぞれ同一の製造条件の下、同一の外径および内径をもつコルゲート管を製造した。
【0046】
なお、試験例7〜11で使用したオレフィン系エラストマーの比重は0.97であり、ポリエチレン系発泡剤のオレフィン系エラストマーへの添加時の比重変化は、2wt%添加時では重量比43%、3wt%添加時では重量比48.5%、4wt%添加時では重量比54%の軽量化となるものであった。
【0047】
コルゲート管の評価は、平滑性、屈曲性および融着性について、前述した評価方法と同様な方法で行った。
表2に示すように、発泡剤添加率が2.0wt%よりも少ないと、管内面に皺が発生しやすくなり、一方、発泡剤添加率が4.0wt%を超えると、各層の融着性が不十分になる。この結果、発泡剤の添加量2.0〜4.0wt%程度であるとき、すなわち、発泡剤添加時のオレフィン系エラストマーの比重変化が45%〜54%程度(試験例8〜10)、望ましくは48〜49%程度(試験例9)の範囲になるとき、より品質の高いコルゲート管が得られることが判る。
【0048】
前記実施形態では、三層構造のコルゲート管の製造方法を説明したが、その他の実施形態としては、成形材料の層数や層厚を変更することにより、多彩な構造のコルゲート管を製造することができる。
【0049】
例えば図8に示す他の実施形態では、内側層を二層構造にしている。コルゲート管30は、外側層12、中間層13および内側層31、32が順に積層されている。コルゲート管30の製造方法としては、押出工程において、外側層12、中間層13および内側層31、32の成形材料をそれぞれ専用の導入口から押出金型に導入し、原料通路で各成形材料を重ねて押し出す。次いで、前述したような波付け用の金型で管状押出品に波付けを行う。
【0050】
このような実施形態によれば、内側層31および32が二層構造であるため、成形材料の節約を図ることができる。例えば、内側層32に耐水性、耐蝕性等に優れた成形材料を用い、内側層31には再生材料を用いると、低コストで高品質のコルゲート管を製造することが可能になる。
また、内側層31および32を二層構造にすることで、波付け溝の吸引力が管内面に及びにくくなり、より平滑な内面をもったコルゲート管を製造することができる。
【0051】
また、図9に示す他の実施形態は、外側層を二層構造としている。コルゲート管40は、波形の外側層41および42の内側に発泡層13および内側層14が積層される。外側層41は、内側層42よりも層厚が厚い。コルゲート管40を製造方法としては、例えば、押出工程において、外側層41、42、中間層13および内側層14の成形材料をそれぞれ専用の導入口から押出金型に導入し、原料通路で各層を積層して押し出す。次いで、前述したような波付け用の金型で管状品押出品に波付けを行う。外側層41、42の成形材料については、各成形材料の押出量を調節することにより、それぞれ層厚の異なる外側層41および42を形成することができる。
【0052】
このような実施形態によれば、外側層41および42が二層構造になっているため、管壁の耐圧力および偏平化強度を向上させることができる。また、外側層41に透明な材料を使用し、外側層42に色付き材料等を用いることで、低コストで美観の優れたコルゲート管を製造することができる。
【0053】
その他の実施形態としては、例えば、中間層を省略した二層構造のコルゲート管とすることもできる。この場合、内側層を発泡層とし、この内側層の発泡力が波付け溝の吸引力と釣り合うようにする。また、管壁の層数は、前記実施形態に示したものに限られることなく、五層以上の多層構造にしてもよい。
前記実施形態で説明した押出金型および波付け機の構成についても、これらの構成に限定されることなく、本発明を適用することができるものであれば、種々の型式ものを用いることができる。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のコルゲート管の製造方法によれば、次のような優れた効果を奏する。
(a) 屈曲性が良好で、かつ、平滑な内面をもつ多層構造のコルゲート管を簡単に製造することができる。
(b) 複雑な構成の装置を用いることなく、細径のコルゲート管を低コストで製造することができる。
(c) 管壁に発泡層を介在させるため、コルゲート管の断熱化および軽量化を図りやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態によるコルゲート管を示す部分切欠き側面図である。
【図2】本発明の実施形態によるコルゲート管を示す縦断面図である。
【図3】図2に示すIII−III線横断面である。
【図4】本発明の実施形態による押出金型の構成例を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態による波付け機の構成例を示す全体構成図である。
【図6】本発明の実施形態による波付け機の金型を示す部分拡大断面図である。
【図7】本発明の実施形態によるコルゲート管の成形時の作用を説明するための部分拡大断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態によるコルゲート管を示す縦断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態によるコルゲート管を示す縦断面図である。
【図10】従来の実施形態によるコルゲート管を示す縦断面図である。
【図11】従来の他の実施形態によるコルゲート管を示す縦断面図である。
【符号の説明】
10 コルゲート管
10a 凸部
10b 凹部
11 管壁
12 外側層
13 中間層(発泡層)
14 内側層
20 押出金型
23 環状ノズル
25 波付け機
26A、26B 金型
28 管状押出品
R 減圧室
S 空洞
T 通気孔
【出願人】 【識別番号】591167669
【氏名又は名称】株式会社三洋化成
【住所又は居所】愛知県海部郡大治町大字花常字円楽寺15番地
【出願日】 平成15年4月28日(2003.4.28)
【代理人】 【識別番号】100119792
【弁理士】
【氏名又は名称】熊崎 陽一

【公開番号】 特開2004−322583(P2004−322583A)
【公開日】 平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願番号】 特願2003−123628(P2003−123628)