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社説:補助金不正経理 知事は猛省し徹底調査を

 氷山の一角かもしれないだけに、暗たんたる気分になる。会計検査院が国の補助金について12道府県の経理を調べたところ、06年度までの5年間にすべての自治体で計5億円の不正処理が判明した。

 本来の用途と違う目的に使っていたのであれば税金の流用だ。自治体の裏金問題がこれまで問題化したにもかかわらず、不正を見逃し放置した自浄能力の欠如にはあきれる。全国知事会は失態を重く受け止め、徹底解明を主導しなければならない。

 「補助金」は地方交付税など使途を定めない財源と異なり、中央官庁が使途や使用基準を決め、自治体に配分する。

 会計検査院の調査から浮かぶのは、自治体があの手この手で余った補助金の返還や減額をごまかす姿だ。愛知県や岩手県などでは予算が年度内に消化されたようにするため、物品の発注を装い業者に資金をプールさせる「預け」と呼ばれる手法が用いられたという。国の補助事業と関係ないアルバイト給与を補助金から支出した例もあった。システム化された手口が多いとみられ、悪質だ。

 自治体の不正経理の問題化が後を絶たないことは深刻な事態だ。4000人を超す大量処分が出た岐阜県をはじめ長崎県、大阪府、大阪市などでここ2~3年で新たな裏金問題が発覚している。

 今回の調査をきっかけに愛知県で使途不明金が発覚したが、不正経理は私的流用の温床にもなる。「預け」については自治体関係者によると以前から存在を指摘する声もあったという。

 検査院による徹底調査、流用された金額の国への返金はもちろん、全都道府県が調査を進め、実態を説明したうえで関係者の処分に踏み切らねばならない。さもないと分権の受け皿能力に疑問符がつく。内部からの通報制度の拡充や公金支出の情報公開の徹底など防止措置に知事会は手をこまねいていてはならない。

 一方で無視できないのは国から地方へのヒモつき補助金という制度自体がもたらす弊害だ。

 補助金は使途が縛られ、余れば国に報告し減額される。それだけに、自治体は節約よりも「使い切る」ことに意識が誘導されがちだ。可能な限り事業と財源を地方に委ねた方が、むしろ自治体に「自分のカネ」としてコスト意識が働く。所管官庁も必要な額として交付した以上、本音では返金を望まない部分があるのではないか。

 政府はさきの「三位一体の改革」で国から地方への補助金の削減と、その見返りとしての地方への税源移譲を進めた。だが、国土交通省、農水省が所管する公共事業に関する補助事業は切り込み不足に終わった。自治体に猛省が必要なのは当然だが、いびつな補助金制度のあり方も問い直す契機とすべきである。

毎日新聞 2008年10月21日 東京朝刊

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