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【発明の名称】 排水用暗渠装置
【発明者】 【氏名】光川 幹雄

【氏名】松本 茂登

【氏名】前田 誠

【要約】 【課題】地面に降った雨水を排水する為の暗渠装置であって、施工が簡単でコストも安くなる排水用暗渠装置の提供。

【構成】所定長さの編み生地から成る繊維筒形構造体1に通水性に優れた物質3を充填して両端4,4を縛り、これを地中8に埋設し、地面7から浸透した雨水が繊維筒形構造体1に浸入し、充填された通水性物質3の隙間を流れて排水することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に降った雨水を排水する為の暗渠装置において、所定長さの編み生地から成る繊維筒形構造体に通水性に優れた物質を充填して両端を縛り、これを地中に埋設し、地面から浸透した雨水が繊維筒形構造体に浸入し、充填された通水性物質の隙間を流れて排水することを特徴とする排水用暗渠装置。
【請求項2】
上記通水性の物質として細かい砂を充填した請求項1記載の排水用暗渠装置。
【請求項3】
上記通水性の物質と共に活性炭などの吸着物質を充填した請求項1、又は請求項2記載の排水用暗渠装置。
【請求項4】
上記繊維筒形構造体を構成する繊維として生分解性繊維を用いた請求項1、請求項2、又は請求項3記載の排水用暗渠装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、速乾性が求められる運動競技場、地滑りし易い住宅地や道路などの排水を目的とした排水用暗渠装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
陸上競技場、サッカー場などの運動競技場、又ゴルフ場は雨水が溜まらないように排水機能を備えている。
ところで、季節の変化に富む我が国にあっては気象条件も四季折々に変化し易く、近年では地球温暖化の影響であろうか、台風時以外にもしばしば大雨に見舞われるケースが多い。その為に、新規な土地有効利用を図る造成等が行われても、治水対策は全体的に疎かにすることが出来ない重要課題であり、単に農耕地帯,工業地帯,住宅団地等に於ける良好な排水機能を具備させることは極めて重要な問題となっており、同じく陸上競技場やサッカー場等の運動競技場等、又ゴルフ場にあってもその機能保持のために排水機能を確実に具備させる必要がある。
【0003】
特に、ゴルフ場やサッカー場にあっては天然芝等の植生を均一に図らねばならないことから、一方において、その成育を確実に図る点から降水や灌水状態を均一に保持しなければならない一方、競技場としての機能を確保する為に良好な水はけを排水機能として確実に備えなくてはならない。
【0004】
特開平7−331640号に係る「排水機能を有するシートマット体構造」はサッカー場等の競技場の表層に天然芝の植生を完全に育成させながら、降水に対しては水はけが良好に行えるようにしている。すなわち、砂礫層の上部の保水層上に上下の透水性薄膜シート間にプラスチック細線等のフイラメント材を不規則にからませて介装させて空気層を形成した排水機能を有するシートマットとし、更に導水体として不織布やドレンハイプをシートマットに所定ピッチで貫挿させ、毛細管作用を介し天然芝に対する吸水機能を持たせると共に空気層を介装させるようにしている。
【0005】
特開2000−290983号に係る「暗渠排水用フィルターとこれを用いた暗渠排水管の敷設法」は、運動競技上やゴルフ場に限るものではないが、渠排水工事に際し、取り扱いが容易で透水能力に優れた暗渠排水用フィルターと、これを用いた暗渠排水管の敷設法に関するものである。暗渠排水を施工する植栽地の地面を掘り下げて形成した溝に塩化ビニル樹脂管からなる暗渠排水管を配置する。一方、柔軟性と透水性を有するポリプロピレンの繊維布のごとき包装体内にパーライトのごとき軽量骨材を収納したマット状の暗渠排水用フィルターを構成する。得た暗渠排水用フィルターの複数で敷設された暗渠排水管の上面および側面部を覆ったのち、溝内に土を埋め戻して優れた透水能力の集水が可能な暗渠排水設備である。
【0006】
これらの他にも排水を目的とした暗渠構造は色々と知られている。しかし、従来の排水用暗渠構造は複雑な構造であって、施工コストも高くなってしまう。
【特許文献1】特開平7−331640号に係る「排水機能を有するシートマット体構造」
【特許文献2】特開2000−290983号に係る「暗渠排水用フィルターとこれを用いた暗渠排水管の敷設法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来の排水用暗渠構造には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこれら問題点であり、簡単な構造で施工コストも安くなり、何所でも手軽に利用することが出来る排水用暗渠構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る排水用暗渠構造は編組織で構成した筒状体の内部に通水性の物質を充填して構成している。筒状体は所定の長さとし、そして編組織である為に湾曲可能な形態と成っている。通水性の物質は特に限定するものではないが、砂などの粒子が適している。そこで、通水性の物質を充填した筒状体は地中の適当な深さに埋着される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る排水用暗渠構造は編生地から成る筒状体に通水性のある物質を詰めたもので、これを地中に埋着している。地面に降った雨水は地中に浸透して上記筒状体へ侵入し、筒状体に入った雨水は内部に充填されている通水性に優れた物質の隙間を流れて排水される。地面から地中に埋着される筒状体までの深さは限定しないが、該筒状体に一旦流れ込むならば、速やかに排水することが出来る。そして、筒状体は編生地から成って柔軟性があり、その為に内部に通水性の物質を充填して土地の形状に合わせて湾曲させることが出来る。さらに、通水性の物質を充填した筒状体は上方からの圧縮荷重に対して柔軟に変形する為に、破損することはない。
【実施例】
【0010】
図1は繊維筒形構造体1を表している。この繊維筒形構造体1は丸編生地が使用され、一定太さDで所定の長さの筒形をしている。丸編み機にてエンドレスに編製され、これを適当な長さに裁断したものである。ここで、繊維の材質としては特に限定しないが、生分解性繊維を使用することが出来る。この生分解性繊維(生分解性高分子)とは、自然界に存在する微生物が分泌する酵素によって分解される繊維(高分子)である。
【0011】
この微生物による繊維の分解は、先ず初めに微生物が対外に分泌する加水分解酵素により高分子鎖がバラバラに分解されて低分子の化合物となり、次いで分解生成物が微生物の体内に取り込まれて各種の生体分子や二酸化炭素と水に代謝される。生分解性は、一般的に天然繊維で優れ、合成繊維では乏しいが、合成繊維でも生分解に優れる高分子が開発されて繊維化されている。例えば、生分解性繊維に使用される代表的な樹脂は、脂肪族ポリエステルである。
【0012】
図2は上記繊維筒形構造体1の内部に通水性に優れた物質を充填し、両端4,4を結んだ本発明の排水用暗渠装置2を示す実施例であり、正面図と断面図を表している。通水性物質3は繊維筒形構造体1に充填され、その長さL及び外径Dは取り扱い易い寸法としている。ここで、通水性物質2は特に限定しないが、細かい砂を使用することが出来、繊維筒形構造体1を構成する編生地は破れないように丈夫なものとなっている。
【0013】
例えば、太さ165デシテックス48フィラメントのポリエステル長繊維の仮撚加工糸を、釜径3吋×24ゲージ丸編機を使用して、天竺組織にて編立てした目付137g/m2の繊維筒形構造体1に、細かい砂を充填して暗渠装置2を構成することが出来る。
【0014】
図3は上記排水用暗渠装置2,2・・を地中に埋着した状態を表している。複数の暗渠装置2,2・・は一定間隔をおいて配列され、その為にこの部分は通水性のある地層となる。繊維筒形構造体1の内部に砂5,5・・・を充填し、土地6の形状に合わせて適度に曲げて所定の深さに埋着することが出来る。そこで、地面7に降った雨水は地中8に浸透して排水用暗渠装置2,2・・に浸入することが出来る。編み組織生地で構成している繊維筒形構造体1は細かい無数の穴が貫通している為に、雨水は地中8を流れ落ちて内部へ浸入できる。
【0015】
そして、内部へ入った雨水は通水性に優れた砂5,5・・の隙間を流れて排水される。勿論、砂5,5・・に限るものではなく、小石を充填することもあり、小石と砂5,5・・との混合物を通水性物質3として充填することも出来る。本発明の暗渠装置2の通水性物質3は機能的には細いパイプを結束した場合と同じであって、雨水は小石や砂5,5・・の間をジグザグして流れることが出来る。
【0016】
特開2000−290983号公報に記載されている暗渠排水管のように地中に埋設し、雨水を該暗渠排水管に流すことは可能である。暗渠配水管へ浸入することが出来るように表面には小さな穴を多数穿設しているが、これら小さい穴にはゴミや泥が詰まってしまう。その為に、該暗渠排水管は暗渠排水用フィルターにて被覆した構造としている。又、樹脂製の暗渠排水管は剛体である為に、上方からの荷重の作用で曲げられ、時には破損することもある。
【0017】
これに対して、本発明の暗渠装置2は、繊維筒形構造体1がパイプ(暗渠排水管)として機能し、通水性の砂5,5・・や小石がパイプ内部の空間として機能する。その為に、無数に存在する繊維筒形構造体1が目詰まりすることはなく、排水機能は何時までも持続される。そして、繊維筒形構造体1を構成する繊維が生分解性繊維を用いる場合には、時間の経過に伴って分解され、通水性物質3を包み込んでいる袋が無くなってしまい、砂5,5・・や小石で作られた層だけが残される。従って、排水機能はそのまま維持することが出来る。
【0018】
図4は土地6のコーナー部に暗渠装置2を埋設した例であるが、本発明の暗渠装置2は柔軟性がある為に、その形を自由に曲げることが可能である。樹脂製パイプ(暗渠排水管)を埋着した装置であれば、コーナー部にはL形の継手を使用しなくてはならないが、繊維筒形構造体1に砂5,5・・や小石を充填した本発明の場合には、特別な継手は不要であり、土地の形状に合わせて自由に曲げることが出来る。
【0019】
そして、長く延ばす為に暗渠装置2,2を接続する接続用継手を用いる必要もない。所定の長さの暗渠装置2を長手方向には配列するだけで排水することが可能である。すなわち、図4において、一方の暗渠装置2aの後端9から流れ出た雨水は、隣接する後方の暗渠装置2bの先端10に継手なくしても流入することが出来る。
【0020】
ところで、本発明に係る排水用暗渠装置2は地中に浸透した雨水を排水するように構成したものであるが、雨水に含まれる薬剤などの有害物を吸着する為の吸着物質を混合することも可能である。例えば、活性炭を砂や小石の中に混入して繊維筒形構造体1に充填する。
【0021】
ゴルフ場やサッカー場などには一面に芝生が植えられているが、これら芝生を管理する為に薬剤が散布されている。そして、芝生に付着した薬剤は雨が降ることで雨水と共に流されて地中に浸透し、地下水として流れる。そこで、本発明の暗渠装置に活性炭などの吸着物質を混入することで、薬剤を吸着して地下水に混入することを防止できる。
【0022】
一方、本発明では繊維筒形構造体1に通水性物質を充填する方法は限定しないが、細長い筒形袋に砂5,5・・や小石を詰めるには繊維筒形構造体1と同じ太さのパイプを使用すると便利である。すなわち、一端4を閉じた繊維筒形構造体1にパイプを嵌め、該パイプに砂5,5・・や小石を一杯に詰める。そして、パイプだけを繊維筒形構造体1から引き抜くならば、砂5,5・・や小石が繊維筒形構造体1に充填される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の暗渠装置を構成する繊維筒形構造体。
【図2】繊維筒形構造体の内部に通水性物質を充填した本発明の暗渠装置。
【図3】暗渠装置を地中に埋着・配列した断面図。
【図4】土地のコーナー部に暗渠装置を配置した場合。
【符号の説明】
【0024】
1 繊維筒形構造体
2 暗渠装置
3 通水性物質
4 端
5 砂
6 土地
7 地面
8 地中
9 後端
10 先端














【出願人】 【識別番号】597052053
【氏名又は名称】ミツカワ株式会社
【出願日】 平成18年6月21日(2006.6.21)
【代理人】 【識別番号】100087169
【弁理士】
【氏名又は名称】平崎 彦治


【公開番号】 特開2008−2112(P2008−2112A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−171203(P2006−171203)