新型インフルエンザの治療では、毎年のように流行する季節性インフルエンザと同様、医薬品「タミフル」が処方される。政府と都道府県はすでに2100万人分を備蓄した。病院や薬局にも400万人分が流通している。厚生労働省は来年度予算で国民の45%分を備蓄する概算要求をしている。
ウイルスの表面にはHAとNAという二つのたんぱく質が存在する。HAには人の細胞に結合する働きがある。結合した状態から感染が始まる。ウイルスの遺伝子(RNA)は細胞内で増殖。RNAは人の細胞膜を自分の膜として利用し、細胞から分離する。分離する際、はさみの役割をするのがNAだ。
ワクチンを接種するのは、HAが細胞に結合したのを認識してウイルスを攻撃する抗体を作るためだ。タミフルは、NAの働きを抑え、ウイルス増殖を抑える。新型インフルエンザの元とされる強毒性鳥型インフルエンザ(H5N1)でも重症化防止が確認された。だが、感染する細胞が上気道にほぼ限定される季節性インフルエンザには有効でも、新型インフルエンザは全身の細胞に感染する恐れがあり、効果が不十分とされる。
世界保健機関はH5N1の患者に対し、季節性インフルエンザ患者の2倍の量を投与し、全国民の25%以上の量を備蓄するよう、各国に勧めている。
タミフルは異常行動を起こす恐れがあるとして、10代への使用が原則禁止されている。厚労省は「H5N1感染者の死亡率は約60%と高い。新型でも、10歳以上にタミフルを投与する意味はある。投与の是非は発生状況やタミフルの有効性などを踏まえ、判断する」としている。【関東晋慈】
毎日新聞 2008年10月21日 東京朝刊
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