県は20日、村井仁知事と上伊那8市町村が地域の政策課題や要望について意見を交わす懇談会「ボイス81」上伊那地域会議を伊那市の県伊那合同庁舎で開いた。地域共通の課題として各市町村長からは医師不足による地域医療の崩壊を危ぐする声が寄せられ、県に対し医師確保に向けた積極的な施策を求める意見が相次いだ。
意見交換に先立ち、県伊那保健所の山崎宗廣所長が上伊那地域の医療体制について説明があり。人口10万人当たりの一般病院数は4.7院で県平均の5.6院を下回り、10万人当たりの医師数も2006年度末時点で136.8人と、県内10圏域では木曽に続いて2番目に低い水準にあることが報告された。
伊那中央行政組合長の小坂樫男伊那市長は「上伊那では公立3病院が地域の2次、3次医療をほとんど担っている。06年度の病院に対する各市町村の出費は約26億円。他の地域ではこのうような負担はない」と指摘。県に「上伊那の特性に合った配慮を」と要望した。
伊南行政組合長の杉本幸治駒ケ根市長は、経営の悪化が深刻な昭和伊南病院の運営について「地域の拠点病院としてのノウハウを生かし、頑張っていきたいが、そのためには医師確保以外ない」と強調。地域単独による医師確保の難しさを指摘した上で、「公立病院をどうするか。県全体で一緒になって取り組んでほしい」と訴えた。
県衛生部の渡辺庸子部長は、今年度から始まった公立病院改革に伴い「それぞれの病院で改革プランを策定してもらい、それで足りない場合は近隣の病院と連携して、共同購入や人的交流を図ってもらいたい」と要請。村井知事は「これだけ豊かな国で医者にかかれない不安を抱える国はほかにない」と市町村長らの訴えに理解を示し、「今後もありとあらゆることをやってはいくつもり」と述べた。