米国のサブプライムローン問題に端を発し、世界中に飛び火した金融危機。各国で株式市況の暴落を招き、東京証券取引所でも平均株価が八千円台に落ち込みました。
原因は違っても、かつて同じような状況に陥ったことがありました。二〇〇一年九月の米中枢同時テロの直後です。株価の下落とITバブル崩壊が重なり、〇三年にかけて地場経済も深刻な不況に見舞われていました。
「うちの新製品が地方経済面で紹介され、社員だけでなく、何よりその家族が喜んでいるんです」
当時、岡山県内のあるメーカーの幹部に、こう言われたことがありました。業績が落ち込む中、残業は減り、ボーナスもカット。それでも黙々と働く従業員と家族が勇気づけられた、ということでした。
もちろん、その製品に価値があると判断したから取り上げました。決して取材相手のための記事だったわけではありませんが、不況の中で何とか活路を見いだそうとする個々の地場企業の取り組みが分かれば、多くの読者にも励みになるのではないでしょうか。
今回の金融危機に対し、各国は財政出動など対策を次々と打ち出しましたが、株価は回復基調に戻りません。円高や原材料高もあって、景気の先行きは非常に厳しいという見方が強まっています。
こんな局面だからこそ、地場企業の前向きな努力を、よりきめ細かく伝えていく必要があると考えています。地域で働く人々の元気につながってほしいと願いつつ。
(経済部・大森知彦)