何げなく街を歩いていると気付きにくい。だが、注意して路面を見ると、円形などの黒い染みのようなものが多くあることが分かる。
例えば岡山市街地でも繁華街などを少し歩けば、歩道や車道を問わず見られる。路上に吐き捨てられ、踏まれてこびりついたガムである。知らないうちに日々ガムの上を歩かされているのは、気持ちよい話ではない。
日本一の歓楽街といわれる東京都新宿区歌舞伎町の午後三時、歩道のガムを懸命に取るボランティアらがいた。棒の先にへらをつけた「ガム取り棒」を用いる。立ったまま作業でき、しゃがむよりも格段に楽で作業能率も上がった。
開発したのは、NPO法人「環境まちづくりネット」の荻野善昭さん(52)だ。棒には、筑波大との産学連携で作り出したガムをはがしやすくする溶剤も取り付けられている。この新兵器を使って週四回ほど、都内でガム取り活動を行う。
「黒い染みがガムだと知らない人が多く、汚いという意識が薄い」と荻野さんは言う。全国に活動を広げようと、不採算ながらガム取り棒などをインターネットで販売している。
公共空間を大切にすることは、景観形成などにもつながる地域づくりの基本だ。道路や広場をごみ捨て場とさせない文化を根付かせていかねばならない。