法科大学院の現状に不安を抱かせる結果が、また明らかになった。法科大学院の認証評価機関である日弁連法務研究財団は、二〇〇八年度の上期に認証評価した七校のうち三校について、設置基準などを一部満たしていないとして「不適合」と判定した。
法科大学院の認証評価機関は同財団など三つあり、各校は五年に一回、評価を受けることが義務づけられている。不適合とされると、文部科学相が対象校に報告を求め、必要な改善指導をする。
現在、法科大学院は七十四校あり、今回を含めて三十一校が評価を受け計八校が不適合となった。割合は約26%に上り、実に四校に一校が運営などに問題があったことになる。
法科大学院は〇四年以降、全国各地に創設された。時代とともに司法へのニーズが多様化する中、法曹人口を増やして法的な思考力だけでなく、幅広い教養や人間味を兼ね備えた質の高い法律家を育成するというのが設立理念になっている。
「身近で開かれた司法を目指す」という司法制度改革の一環だ。今回の評価では、学内での成績評価が甘かったり、バランスの悪いカリキュラムを組んでいたことなどが問題として指摘された。
こんな状況で期待される法曹養成機関としての役割が、きちんと果たせるのか。残念ながら懸念を覚えざるを得ない。
法科大学院については、厳しい自己改革が求められるような課題が相次いで表面化している。当初は修了者の70―80%が新司法試験に合格すると想定されたが、〇六―〇八年の合格率はそれぞれ48%、40%、33%と下がり続けている。
さらに定員割れや教員不足の法科大学院も少なくない。最高裁の報告書は、新司法試験の合格者が中心となった最近の司法修習生に関して「実力にばらつきがあり、下位層が増加している」と分析した。
法科大学院の質向上策を検討している中教審大学分科会の法科大学院特別委員会は先月、各校の自主的な定員削減や統廃合などを推奨するという中間報告をまとめた。文部科学省と法務省は、これを基に各校へのヒアリングを実施し、年内にも改善策を出すよう求めるという。
学校によって事情は異なるだろうが、まず定員規模に応じた質の高い教員を確保した上で、指導内容を充実していくことが不可欠である。志願者や社会の信頼を得るためにも、これまでの取り組みをしっかり検証し改革を進める必要があろう。
会計検査院が任意に選んだ十二道府県で国の補助事業を調査した結果、すべての自治体で架空発注による裏金づくりや補助対象外への流用などが見つかった。相も変わらぬ公金のずさんな管理実態が、あらためて浮き彫りになったといえる。
不正経理は国土交通、農林水産両省の補助金を中心に二〇〇六年度までの五年間で、総額約五億五千万円に上る。自治体の単独事業などを含めると、不正経理の総額は十億円を超える可能性があるという。
今回の結果は氷山の一角だろう。会計検査院は他の自治体も調査する方針だが、当然である。財政難が叫ばれる中で、徹底的に不正を解明しなければ国民の理解は得られまい。
不正経理が明らかになったのは、北海道、岩手、愛知、京都などである。愛知県は最も多い約一億三千万円の裏金などを指摘された。
愛知、岩手両県などでは、〇六年に発覚して問題になった長崎県のケースのように、コピー用紙などの事務用品を架空発注し、業者の口座に裏金をプールする「預け」という手口が使われていた。私的流用や使途不明金などの有無について、詳細な調査が必要だ。
このほか補助事業とは関係ない部署で雇用しているアルバイトの賃金を支出したり、自治体単独の事業なのに補助事業から旅費を転用するなどしていた。年度末にかなりの剰余金が発生し、裏金に回したり流用していたとみられる。
貴重な税金を扱う公務員としての自覚や責任感はどこへいったのか。あきれると同時に憤りが募る。不正分は国に返還するとともに、関係者の厳正な処分が求められる。不正経理を自ら見抜けなかった自治体の監査の在り方も問われよう。
(2008年10月20日掲載)