産経関西

[経済] 2008年10月18日

"鉄道空白地"京都と直結 中之島線

 大阪市中心部のビジネス街・中之島で19日、京阪電気鉄道の新線、中之島線(天満橋―中之島、約3キロ)が開業する。“鉄道空白地”の一帯が京都と結ばれることで、観光活性化に寄せられる期待は大きい。水都・大阪の象徴的存在である中之島エリアに、変化の波が押し寄せている。

 新線開業に伴う観光振興に熱心なのがリーガロイヤルホテル。最寄り駅がなく地下鉄淀屋橋駅間でシャトルバスを運行してきたが、今回、始発駅となる中之島駅改札口と結ばれる。

 ホテルを拠点に京都観光の外国人宿泊客など新たな顧客層が開拓できそうで、田附隆専務総支配人は「マーケティングを根本から変える」と強調。京阪を利用した京都観光付き宿泊パックの販売など意気込みを見せる。ホテルと隣接する大阪国際会議場の萩尾千里社長も「中之島での商談、国際会議と京都観光をセットに集客できる」と話す。

 国立国際美術館も京都方面からの来場者を期待。大阪市立科学館は、中之島線開業に合わせて今後、京都方面のタウン誌や情報誌を対象に、イベント情報の提供に力を入れる方針だ。

 想定される新線の乗降客は、1日平均7万2000人。京阪電鉄の運賃収入予想は年間約32億円の計算だ。中之島に本社を置く関西電力では、京阪本線の淀屋橋駅から通勤する約150人の社員が中之島線に切り替えるなど、通勤ルートの変更も始まった。

 京阪電鉄の佐藤茂雄CEO(最高経営責任者)は「中之島内の遊休地を活用して、いろいろなことを仕掛けたい」と乗客獲得のあの手この手に余念がない。

 その1つが、来年7月から阪大病院跡地(大阪市福島区)に大型テントを設けて上演される世界的サーカス団「シルク・ドゥ・ソレイユ」の公演だ。入場者は前回より多い約30万人を見込んでおり、京阪関係者は「劇場の都心誘致と新線開通の効果を狙う」と語る。

 梅田や難波より商業的な発展が遅れた中之島の将来性を見込んで、京阪と大林組は外資系ホテル誘致を含む複合ビル建設を計画。関電とダイビルも、超高層ビル3棟の共同建設計画を進める。すでに今年5月、堂島川を挟んだ対岸に飲食店や多目的ホールを持つ「ほたるまち」がオープンしている。

 平日の人口はピークで8万人を超す一方、居住人口は約750人の中之島に、タワーマンションもお目見えする。京阪の子会社が大京(東京都)と共同で建設するもので、不動産経済研究所の石丸敏之大阪事務所長は「職住近接の利点は大きい」と話す。

 江戸時代、諸藩の蔵屋敷が建ち並び、現在は大阪市立科学館や国立国際美術館などが集まる中之島だけに「国際性と文化性に富んだ都心の魅力をアピールできる」(大阪府立大の橋爪伸也教授)との声もある。

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