一晩で500年の時を超える空前のプログラム。
世界で活躍する異色のカウンターテナー、いよいよ東京リサイタルデビュー!!
カウンターテナー、彌勒忠史の経歴は実に面白い。もともとは千葉大学で長唄や義太夫、歌舞伎などを研究し、週5日は歌舞伎座の幕見席に通うほどの熱の入れよう。歌舞伎俳優になる夢を持っていたが、何の素養も持たない自分には到底無理だと断念。でも自分が舞台に出たいという思いは募るばかり。そんな折、テレビで見たかの大スター、名テノールのマリオ・デル・モナコが歌うオペラ《道化師》を見てたちまち魂を奪われ、一念発起して芸大受験。オペラ歌手への道を歩み始めました。その時、彼の声種はテノール。ふだんも話し声は低いほう。ではなぜ、女声の声域をカバーするカウンターテナーに転向することになったのか?興味は尽きません。バッハ・コレギウム・ジャパンのメンバーとして活躍していた当時、古楽への興味をかきたてられ、さらには同じカウンターテナーの米良美一氏らとの出会いにより、「あ、クラシックでもファルセットで歌っていいんだ!」と開眼したといいます。
というのも、彼は筋金入りのバンド少年。中学の頃からYMOやサザンなどのコピーをし、さらにはアース・ウィンド&ファイアの影響もあって歌う時は当時からほとんどファルセットだったとか。ちなみに松田聖子もOK(笑)。彼にとってはファルセットで歌うことがもっとも自然なことなのです。ヨーロッパでは古くから歴史を作ってきた男性による声域、カストラート(去勢歌手)のレパートリーを引き継いで演奏することが多いので、バロック以前の作品がメインになるのがカウンターテナーの世界です。
イタリアをベースに活躍する彼の東京初のリサイタル。バッハ以前の作品も加わり、B→C企画ならではとなる、一晩で500年を越えるプログラムが実現します。カウンターテナーで現代作品を演奏するということはある意味とても新鮮なもの。世界初演の作品をたずさえ、満を持してのぞむB→Cに、ぜひご期待ください。共演は、イタリアでともに活躍中のチェンバリスト、シルヴィア・ランバルディさんとフラウト・トラベルソの斎藤紫都さん。
東京オペラシティArts友の会会報誌「tree」vol.55より
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