政府は追加的な経済対策として、低所得で所得税や住民税を納めていないため定額減税を実施しても恩恵がない人を対象に、何らかの「給付金」を支給する検討を始めた。世界的な金融不安を背景に不況感が強まるなかで、近づく衆院解散を意識して生活者重視をアピールする狙いとみられるが、批判の強い経済対策の「バラマキ色」がいっそう強まることになる。
中川財務相は19日、経済対策で実施が決まっている定額減税に絡んで、所得が課税最低限に達しない人について「対策が当然必要だと思う」と記者団に述べた。所得の高い人よりも、年収300万円以下のような低所得者の方が景気悪化で生活が苦しくなっているとして、給付金のような仕組みの検討を指示した。
定額減税はバラマキ政策として自民党内でも慎重論が強かったが、強く求める公明党への配慮もあって、8月末の総合経済対策に実施を盛り込んだ。定額減税の恩恵を受けない年金受給者に対しては、臨時福祉特別給付金を支給する方針も決めていた。年金受給者だけでなく低所得者にも対象を拡大し、景気対策への支持を高める狙いがある。
98年に定額減税を実施した際、所得が課税最低限に達していない人たちを対象に臨時福祉特別給付金が出された。高齢者が中心で、65歳以上の低所得者や老齢福祉年金などの受給者、在宅寝たきり老人らに総額約1500億円を給付した。
総務省や国税庁の資料によると、日本の労働力人口のうち完全失業者を含む非納税者は約2千万人(06年)。こうした高齢者以外の非納税者のなかで給付対象をどう絞り込むのかが、今後の政府・与党の協議の焦点となりそうだ。