マンドリンが初めて作られたのは1620年で、イタリア、ヴェネチアのパロッキが、その頃すでにあったマンドウラを小型にして高い音が出せるように工夫し、マンドリーノと名づけたと伝えられている。その形は、今日のものよりネックが短くて太く、ガット弦を用いていた。
現代のマンドリンは1850年頃ナポリの楽器制作の名工として名高いパスクヮーレ・ヴィナッチアがナポリ型マンドリンを改良したものである。木製の糸巻きをギアを使った機械式糸巻きにし、弦留も金属製にしてより張力の強い金属弦を複弦4コースとし、フレット数もより多くした。その結果、演奏能力が大幅に向上し、金属製の美しい可憐な音色を持つ個性的な弦楽器となった。
トレモロとはピックによる弦の打掬を迅速に反応することによって、一つの継続した流れを形作る奏法で、この繊細な美しさは他楽器に比を見ないものである。
トレモロはマンドリンの代名詞のようにいわれているが、そもそもどういうきっかけでトレモロが使われるようになったのであろうか。
18世紀のマンドリン音楽にはトレモロはほとんど使われていなかった。グレトリーのオペラ(嫉妬深い恋人、1778年の中に32分音符の形で登場したのが最初と思われる。当時はトレモロとトリルの区別が明確にはされておらず、装飾的役割が強かった。
それが古典派の時代を経てロマンス派の時代になるとメロディーの音価が長くなり、それを表現する必要からトレモロが使われるようになった。
ヴァイオリンと同じ調弦(高音からE-A-D-G)で合奏ではメロディーを担当している。あらゆる音域でさわやかな響きを持っているが特に高音域は他にない美しさがある。
マンドリンより1オクターブ低く調弦される。各弦、各音域にさまざまな魅力的な音色を持ち、そのため合奏でもハーモニーからメロディーまでなんでもこなす。暖かさが持ち味。ヴィオラとヴィオロンチェロの両面の顔を持つなくてはならない存在。
ヴィオロンチェロと同じ調弦(高音からA-D-G-C)で合奏の低音を支えている。大きなボディは大変よく響き、独 特の深みある音色で、力強さ、豊かさにあふれている。高音域はマンドラとは違った独特の響きで、魅力的である。メロディーを歌ってもすばらしい効果があり美しい。
マンドリン属とは違った味を持つ。ナイロン弦の独特の音色で合奏に和声的な色付けをする。合奏の中での役割も実に多種多様でギターの扱いいかんで演奏の善し悪しに大きく関係する。独奏楽器としてゆるぎない地位を確立している楽器だけに、マンドリンオーケストラの中でも独奏として扱われることがしばしばある。
合奏の最低音域を担当している。深みある音色と圧倒的な音量をもち頼もしい存在である。マンドリン属とはまったく違った魅力でマンドリンオーケストラにコクを加えてくれる。マンドリンオーケストラに限らず、あらゆる合奏体の低域を支えるすごい楽器である。