<284 ミイラ取りがミイラになる>    「ミイラ取りがミイラになる」といったことわざ(?)があるが、ところで、  ミイラ取りなんて存在したのだろうか。ミイラということは当然死体である。  そんな死体を盗んで何の得になるのだろうか。ただ気持ちが悪くなるだけの  ような気がするが。    ミイラ取りがいたというのは本当の話。世界でもっとも有名なお墓の一つ、  ピラミッドに出没し、一緒に葬られた副葬品など、高価な品々を盗んでいっ  たというのは有名な話。これではミイラ取りではなく、ただの盗掘(貴重品  泥棒)となってしまう。    ミイラ取りは、本物のミイラ本体を狙っていたのである。ミイラというもの  は何十年、何百年と腐敗もしないで残っている。このことから、中世ヨーロッ  パでは、ミイラというのは不思議な力があると信じられていた。当時の人々  は、このミイラからどんな病気にも効く万能薬を作ろうとしたのだ。数十年  もの間、その姿を保っているため、不老不死の薬でも作ろうとしたのであろ  うか。    ミイラから作った薬は、どんな病気、どんな怪我にでも効くと評判になり、  またたくまに一大ブームを引き起こしたのだ。それだけ需要があるというこ  とで、一攫千金を狙ったものも出現した。そんなミイラ取りの中には、行っ  たまま帰ってこなくなってしまった者もいた。それこそ「ミイラ取りがミイ  ラになる」なのだろう。