【パリ=国末憲人】小説「存在の耐えられない軽さ」で知られるフランス在住のチェコ人作家ミラン・クンデラ氏(79)がプラハ在住時の1950年、当時のチェコスロバキア共産党秘密警察に協力したとする資料をチェコ誌が掲載し、騒ぎになっている。本人は全面否定しているが、自由を求めてフランスに亡命した作家というイメージが変わる可能性も出ている。
仏ルモンド紙などによると、西側のスパイとしてプラハで活動していた男性(80)が50年に逮捕され、14年間投獄された。そのきっかけが、男性と共通の知人を持っていたクンデラ氏の密告にあるとする文書を公共研究機関「チェコ全体主義体制研究所」が発見。文書のコピーが13日、チェコのレスペクト誌に掲載された。
クンデラ氏は出版社を通じて「まったくのつくり話だ」とする声明を発表した。しかし、同氏の作品には裏切りの物語が多く「実体験に基づいて書いたのでは」との憶測がチェコで出ているという。
同氏は旧チェコスロバキア中部ブルノ出身。68年の「プラハの春」の改革を支持して作品発表を禁じられ、75年仏に移住した。仏の市民権を取得し、仏語で著作活動をしている。ノーベル文学賞候補にしばしば名前が挙がる。