バグダッド――今年末に期限切れとなるイラク駐留米軍の継続に向けた地位協定交渉に関連し、米軍の即時撤収を要求するイスラム教シーア派の反米指導者サドル師派の数万人が18日、首都バグダッドで同協定に反対するデモを実施した。AP通信が報じた。混乱などは報告されていない。
同師はイラク議会あてのメッセージを発表し、同協定を破棄するよう要請。承認した場合、イラク国家が将来、汚名を着ることになるとし、「協定が占領者の存在を終えさせると説明されても、占領者による基地の保持は続く」と主張した。サドル師は現在、イランに滞在している。
交渉では、米国防総省のモレル報道官が16日、実務レベルで草案の合意に達したと述べている。今後の焦点は、最終承認を目指す両国政府、議会内の手続きに移っている。
イラクのマリキ首相は17日、草案を大統領と副大統領、連邦議会の主要議員らに提示しともされる。賛否両論があったという。首相は政界指導者の同意を取り付けた後、協定案を連邦議会に諮る予定。
地位協定交渉は、国連安全保障理事会決議に基づく多国籍軍のイラク駐留期限が年末で切れることを受けている。交渉では、犯罪を犯した米兵らの訴追免除特権が対立点となり、イラクが主権侵害を理由に自国の裁判制度の適用を主張した。
米メディアは草案について、軍事作戦に従事中の犯罪行為だけを免責することで妥協が成立したと伝えている。また、駐留米軍の戦闘部隊の撤収時期については、治安状況次第としながらも、2011年末までとの目標時期が盛り込まれたとしている。
ブッシュ政権はこれまで、軍事戦略上、米軍の撤収期限の明示を拒絶してきており、駐留米軍の要である戦闘部隊の撤退の目標時期が盛り込まれれば、米国の譲歩とも受け取れる。イラク政府は撤退期限の明示をこれまで求めてきたとされる。