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第53話 ネットワークバーンナウト
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※これは2000年12月3日の雑文なんだけど、最近(2001年12月)になって、なぜか何通か感想メールが来たりして驚いてます。ふと思い立ってこちらに転載することにしました。[computing]にしては砕けた文章だけどね(^-^)。


 はい、まだ生きてます。←2ヶ月ほど更新をサボったあとの雑文なので。

 存在証明、というのはあんまり好きじゃなんだけど、このまま沈黙していると、死んだんじゃないかとか、宇宙人にさらわれたんじゃないかとか、オーストラリアに行ったついでに大陸横断ツーリングに出かけてしまったのではないか、とか言われそうなので、一応。

 あ、心配してメール下さった皆様。ありがとうございました。嬉しいです。やっぱり。

 このWebSite“みらげ”をオープンしたのが1997年の3月。もうすぐ4年になる。でも長くWebを運営していると、たまにこういう時期があるんだよね。きっかけは色々なんだけど、更新するペースが一度狂ってしまうと、なかなか元のペースに戻れない。書きたいこともあるし、暇な時間が全く無い、というわけでもないんだけど。

 以前は、更新しないのに上がっていくカウンターを見て罪悪感に苛まれ、睡眠時間を削ってまで文章を書いたりしたものだけど、近頃は完全に吹っ切れてます。

 ある傾向として、日記サイトや定期更新のコラムサイトの運営者というのは、人間関係に飢えていて、それゆえ人の期待を裏切れず、逆に過剰に答えてしまうところがある。もちろん俺も含めて。

 WebSite運営は楽しい。人が自分に反応してくれる。感想メールが来る。自分を認めてくれる。それは今まで自分が求め続けても得られなかった、とても甘美な世界だ。

 増減する日割りアクセス数に一喜一憂する。アクセスカウンターの数イコール自分を認めてくれた人の数と拡大解釈して、カウンターが伸びなかった日は自分が否定された気分になる。Webのランキングサイトに登録して一日何度も自分のサイトの順位を確認する。

 どこに行くにもネタ帳を持ち歩く。人の期待に答えるために、どんどん自分に無理をかけて、普段の自分の生活を犠牲にしてまでネットワークにのめりこんでいく。「頑張って下さい」というメールを貰って複雑な気分になる。休日や睡眠時間を削って更新をする。次の日の更新ネタが無いことが不安になる。何でこんなことをやっているのか判らなくなる。

 そして、ある日突然サイトを閉鎖してしまう。そんなサイトのいかに多いことか。

 パソコン通信の時代、この現象は「ネットワークバーンナウト(Network Burn Out)」と呼ばれていた。パソコン通信の会議室や掲示板に毎日大量の文章を書きこんでいた人が、ある日突然居なくなる。書きこみがぷっつりと途絶える。いわゆる「燃え尽き症候群」というやつだ。

 俺にはこれが日本人の国民性に起因しているように思える。事実、日本の個人サイトは諸外国に比べて更新ペースが飛びぬけて高い。また日本以外でここまで日記サイトが多い国は見たことが無い。

 みんな、更新しなければ、と思っている。変わらなきゃ、と思っている。変わらないと、更新しないと、自分は認められない。絶えず更新し続けることで、自分の存在はやっと肯定される。そう思わされているように見える。それはまさに日本という社会を象徴している。

 さて、話をWebSiteの運営に戻そう。上記のような悩みを持っている人に、俺は聞きたい。「WebSiteは更新されなければいけない」なんて、いったい誰が決めたんだ?

 元々Webは、「情報を共有する」ということが本質であり、「情報を更新する」ことはその副次的なものに過ぎない。更新することの負担で、サイト(情報)自体を抹消してしまうのは、まさに本末転倒ってものじゃないか?

 そう、更新したくなかったら、更新しなくってもいいんだ。

 4年近くサイトを運営している俺の経験上、更新しなかったことで後悔したことは全く無い。せかせか更新ペースだけを高めると、必ず質が下がる。そして更新が苦痛になる。自慢じゃないが、俺は最長で半年間更新しなかったことがある。今回の文章も2ヶ月ぶりだ。

 何より大事なのは、楽しむことだ。WebSite更新を、そして人生を楽しむことだ。広い意味で人生を楽しむ手段であるはずの“WebSite運営”自体が、目的化してしまって義務になってしまうのは、あまりにも哀しく、そして空しい。

 サイトの読者は流動的である。無理に読者を留めようとしてはいけない。サイトの読者に合わせて同じテーマに固執するより、その時自分が最も楽しく書けることを書くのが一番だ。だって同じテーマって飽きるだろう?しかし困ったことにあるテーマで成功体験をしてしまうと、そのテーマから離れるのがとても難しくなる。

 そんなときは、新しいテーマのコーナーをさりげなくサイトの片隅に開設し、徐々に主従を入れ替えるといい。このみらげも同じ方法で、サイトのテーマを3回くらい変えた。開設当時の読者で、まだ残っている人なんてほとんど居ないだろう。

 さて、君が日記サイトを運営していて、更新が辛く感じたときは、とりあえず以下の処方を薦める。3つ全部やれば、かなり気が楽になるはずだ。

  1. アクセスカウンターをとっぱらう

     アクセスカウンターは励みになる一方、君に無言のプレッシャーを与える。特に「昨日は何人、本日は何人がアクセスしました」式の日割りアクセスカウンターは、君にプレッシャーを与える以外、何の役にも立たない。

     アクセス数と、そのサイトの面白さには、もう相関関係は無くなっている。アクセスカウンターを見ているのは、WebMasterたる君だけだということに気がつくべきだ。

  2. 定期更新予告を外す

     毎日更新!とか毎週月曜日更新!といった定期更新予告は、確かにリピーターを増やす効果がある。俺も以前は毎日更新!を謳い文句にしていたことがある。更新が苦痛になってきて、その謳い文句を外したとき、日割りのアクセス数の減りが気になったが、結果ほとんど影響が無いことがわかった。定期更新の謳い文句に、アクセス数増の効果は、実はそれほど無いのだ。

  3. 日記という形式をやめる

     日記という形式は、それ自体が定期更新へのプレッシャーだ。日記ではなく“雑文”とか“エッセイ”とか“コラム”と名前を変えるだけで、あら不思議、定期更新へのプレッシャーが何処かへ行ってしまうぞ。

     いやいや、自分の書く文章は日記レベルであり、エッセイとかコラムなどと呼ぶのはおこがましい、と謙遜しているのであれば、逆に聞きたい。君が他のサイトの文章を読むときに、それが“コラム”か“エッセイ”か“日記”かということを気しているのか?エッセイは好きだけど日記は嫌い、なんて人はあまり見かけない。

     要するに、自分の文章をどう呼ぼうが、それはその人の勝手であり、そんなことを読者は何も気にしないのだ。

 WebSite運営は楽しい。一生続けたっていいくらいの貴重な趣味だ。だからこそ、「更新への義務感」なんかで潰れてしまうのは馬鹿らしい。したくなければ更新なんてしなくってもいいんだ。

 君自身が、変わらなくったっていいように。


 さてさて、そんなわけでこの“みらげ”ですが、今後もゆるゆると続きます。将来どうなるかは全く予想がつきませんが、4年といわず40年くらい運営できたら素敵だなぁとか思ってます。

 テーマがどう変わるか判りませんが、今後も宜しくお願いしますね。


#ってことは2002年の3月で5周年だぁ。ゆるゆる(^^;。

2001/12/10 Mayo Aihara

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