救助訓練をする海上保安官=4管提供
「海猿」がドラマや映画で大ヒットしたおかげで人気になった海上保安官の志願者が、今年低迷した。昨年は定員の22倍を超す人気だったが、今年は昨年の7割弱にとどまった。第4管区海上保安本部(名古屋市)は「『海猿バブル』は終わった」と、地元採用に配慮するなど、来年からの人材確保に知恵を絞る。
マンガ週刊誌に連載され、NHKや民放でテレビドラマ化された海上保安官の活躍を題材にした「海猿」。06年に公開された映画「LIMIT OF LOVE 海猿」は同年公開の実写版邦画の興行収入1位を記録するなど大ヒットとなった。
「海猿」人気を背景に、昨年海上保安官を目指して海上保安大学校(広島県呉市)や海上保安学校(京都府舞鶴市)に応募したのは、定員計425人に対し9476人。「近年まれに見る数字」(4管)を記録し、「超」が付く狭き門となった。
ところが今年は6430人と激減。4管人事課は「人気にかげりが出た」とため息をつく。18歳人口の減少や、社会保険庁の不祥事などで、公務員に対する悪いイメージも逆風になっているという。
高校生の地元志向も強くなっている。今年7〜8月にかけて4管が愛知県安城市や半田市の高校で開いた業務説明会では、多くの高校生が地元での就職を希望した。
通例では、大学校卒業者は全国転勤の対象。保安学校卒業者は、一般には入校時にどこの管区に採用されるかが決まる人が多いが、必ずしも希望通りにならないケースもある。4管人事課は「海保受験者は警察や消防を併願する人も多い。複数で内定をもらった場合、『地元で働きたい』と断られる場合が多い」。