にけ
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10/08(水) 18:35 IP:220.148.13.146 削除依頼
屋上から見える空に飲み込まれそうになる。
心地よい風が涙を乾かす。
今日くらいは思い切り泣こう。
私は冷たいコンクリートに仰向けに寝そべった。
−屋上自虐同盟−
NO.1 にけ
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10/08(水) 18:51 IP:220.148.13.146 削除依頼
青空を走る雲を見つめる。
少し眩しくて腕で目を覆う。
なんでこんな学校に来てしまったんだろう。
私立の進学校。
響きはいいかもしれない。
一学年につき何十組もあるマンモス高校で、私は埋もれていた。
私が幼いころ、母親は亡くなった。
今はあまり家にいない父親と、弟と三人暮らしだ。
気に病んでいるわけじゃない。
何かが足りないわけじゃない。
ただ過ぎてゆく毎日に退屈しているだけ。
家事をして、勉強して。
ひたすら繰り返していく日々に悲観しているだけ。
本当に、それだけ。
少し、疲れただけ。
腕をどけて再び青空を見る。
あの空に母親がいるのだろうか、なんて可愛らしい幻想にため息ひとつ。
頑張ろう、と体を起こす。
あたりを見回すと、いつの間にか数人の男女がいた。
NO.2 にけ
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10/08(水) 19:28 IP:220.148.13.146 削除依頼
綺麗な顔立ちでスタイルがいい女の子。
細身で、お洒落な男子。
背が高くて少し怖い男子。
控えめでおとなしそうな女の子。
私は恥ずかしくなって、走って屋上を後にしようとした。
「仲間に入るー?」
細身でお洒落な男子が私に問いかける。
高一の夏休み明け。
友達、と呼べる人を未だに作れていない私。
ネガティブで個性もない私だけど、なぜだかこの人たちになら受け入れてもらえる気がした。
私は勇気を出して軽く首を縦に振った。
「おいで!」
私はまた軽く頷いて、心地よい風を感じながら彼らの輪に入った。
「5組の近藤光です!よろっ!」
細身の彼が笑顔で迎えてくれる。
「9組の、宮本有紀です。よろしく。」
と綺麗な顔立ちの女の子。
「12組の笠原美咲です。」
とおとなしそうな女の子
「3組の木村翔也。」
と背の高い男子。
「7組の神尾舞です!」
最後に私はできる限り明るく、高い声で言った。
NO.3 にけ
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10/08(水) 19:41 IP:220.148.13.146 削除依頼- #
昨日はあれから、少しだけ話して解散した。
放課後はいつも屋上にいるらしい。
今日も行ってみようかな?
まだ午前中なのに放課後が楽しみで仕方がなかった。
ヒカルは、面白いし明るいし笑顔が可愛い。
有紀は、とにかく綺麗。毒舌気味なところも好き。
美咲は、本当に優しくて女の子らしい。
翔也は、見た目よりは全然怖くなかった。
私は昨日みんなと話したことを何度も思い出しながら授業を聞いた。
夏休み明けのテストも昨日で終わって、少し気分がいい。
綺麗にまとめたノートを見て達成感を感じる。
いつもと変わらない日なのだけど。
午後の授業もずっとあの四人のことを考えていた。
時計の秒針とにらめっこして、放課後が来るのを待った。
NO.4 にけ
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10/09(木) 19:58 IP:220.148.20.203 削除依頼 待ちに待った放課後。
私は屋上へ急ぐ。
屋上には既にヒカルがいた。
「よーっす!」
彼は右手を大きく上げて笑う。
半そでは、彼の細い腕をさらに細く見せる。
「おす。」
私は女の子特有の肉付きの腕を小さく上げた。
「今日の時間割まじ最悪だったー!」
そう言って髪の毛をいじる左腕にはたくさんのアクセサリー。
「嫌いな教科なにー?」
「国語かなー。舞は?」
「断然英語だね。」
「あーそれっぽい!」
「何それっ!」
消極的な自分がこんなに自然に会話できていることに違和感を感じる。
「まぁ勉強は嫌いじゃないけどねー。」
「まじですか。」
「まじだよ。」
すごく意外。
それにしても昨日初めて会った人、しかも男とは思えないくらい話しやすい。
独特のオーラとか外見とか意外性とか。
ヒカルはモテるんだろうな。
しばらくして三人がコンビニ袋を持って屋上に登場した。
NO.5 にけ
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10/10(金) 19:28 IP:220.148.8.106 削除依頼 「水曜日はここで飲み食い語りすんの!」
ヒカルはコンビニ袋を漁る。
「今日は一人五百円。翔也に渡してね。」
「今日は舞が仲間入りってことでたくさん買ってきたんだよ。」
私はとにかく嬉しくて、泣き出しそうになる。
なんでこんなに快く仲間に入れてくれるんだろう。
飲み食いしながらみんなでわいわい語る。
クラスの話とか、恋愛とか。
意外にも翔也は経験が豊富、とか。
意外にも有紀に彼氏がいないこと、とか。
どんどんみんなのことを知っていった。
話し始めて十分、有紀が立ち上がる。
「ちょっとトイレ。」
そういって歩き出そうとする有紀の手を美咲が掴む。
今まで騒がしかった屋上が静まる。
「私も行く。」
会話を聞けば普通の会話。
でも、この異様な雰囲気に違和感を覚えた。
みんなの顔が強張る。
「あっ、私も行く・・・。」
「舞ちゃんはここにいな。」
低い声で翔也が言う。
私は返事をすることもできず、ただ二人が屋上から出て行くのを見ていた。
私がこの四人に始めて抱く、違和感。
なんで私は一緒に行っちゃいけないの?
なんて聞くこともできずにそっと唇をかみ締める。
さっきの雰囲気は私の勘違いだったのか、屋上に残された翔也とヒカルはいつものように笑って話す。
「それにしても今日は暑いな!」
ヒカルは細い左腕で前髪をガッと上げた。
#
NO.6 にけ
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10/10(金) 19:52 IP:220.148.8.106 削除依頼- #
もっと、もっと。
もっと可愛くならなきゃ。
もっと細くならなきゃ。
もっと賢くならなきゃ。
みんなは私を外見や結果でしか判断してくれない。
今以上に美しくならなくてはいけない。
醜い欠点があってはいけない。
私はトイレの外で待っているであろう美咲に話しかける。
「なんでいちいち着いてくるの?」
返事はない。
自らが出す、手を石鹸で洗う音しか聞こえない。
「泣いてるの?」
返事がないので、細かい泡を流し落とす。
「美咲?」
トイレの外に出ると、美咲はうずくまっていた。
「美咲、泣いてるの?」
私はもう一度聞き返す。
校舎はあまりにも静かなので、グランドで練習している野球部の声がよく聞こえる。
一向に返事をしない美咲に苛立ちを感じる。
「本当にいちいち着いてこなくていいよ。」
私は吐き捨てる。
「有紀、もうやめて。」
美咲は少し顔をあげた。
「有紀はもう十分綺麗だから・・・。」
切なそうな美咲の表情に胸が苦しくなる。
「美咲に私の何が分かるの?」
また黙り込む美咲に、ため息が出る。
私の苦しみは、誰にも分からない。
こんな苦しみ、誰かに分かってたまるもんか。
勢いよく吐きすぎたせいか。
美咲が見せる表情のせいか。
私は胸が熱くなるのを感じた。
「ごめん、今日は帰る。」
返事をしない美咲を置いて私は屋上にカバンを取りに階段を上った。
NO.7 にけ
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10/10(金) 19:57 IP:220.148.8.106 削除依頼- *********************************
最初に書いておくべきでした。
いまさら申し訳ないですが
この話は若干グロテスクな描写が出てきます。
苦手な方は読むのをやめるか、この先の展開にご注意してお読みください。
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NO.8 にけ
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10/10(金) 22:55 IP:220.148.8.106 削除依頼
ふらつく足元に気をつけながら屋上のドアを開ける。
「あっれー?美咲はー?」
うるさい・・・。
「今日はもう帰るね。」
私はできる限り感情を出さずに笑顔で言った。
「え・・・?」
何その顔。
ヒカルのその表情が私をますますいらつかせる。
どうせ私のこと汚いとか醜いとか思ってるくせに。
「なんかごめんね、特に舞。」
私はカバンを持って言った。
苛立ちで声が震えた。
「うん・・・大丈夫?顔色悪いよ・・・。」
うっとうしい・・・。
「大丈夫。」
私はもう三人の方を見なかった。
彼らを視界に入れると、苛立ちでどうにかなってしまいそうだ。
頭が痛い。
「気をつけてねー!」
私はもう舞の気遣いさえも鬱陶しく感じだ。
野球部の声が聞こえる。
野球部の声にかき消されて聞こえなかった、そうゆうことにしよう。
階段を下りると美咲がそこにいた。
「バイバイ。」
美咲は赤い目を細めて言った。
私は首を縦に振って校舎から出た。
「暑い・・・。」
そういえば今日は暑い一日だった。
額に滲む汗を拭った。
私はこの手・・・この指でこれからも美しさを保つんだ。
でもいつまで美しさを保てばいい?
あとどれくらいで綺麗になれる?
誰もが羨ましがるような、そんな女になりたい。
NO.9 にけ
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10/11(土) 21:33 IP:220.148.2.135 削除依頼 道に転がる空き缶を蹴る。
中身はまだ入っいて私の紺ソックスを汚す。
私の苛立ちは限界に来ていた。
私は汚い。
私は醜い。
私のことをこの世界の全員が笑っている。
馬鹿にしている。
醜い、と私を嫌う。
汚い、と私を避ける。
夕立が降り出す。
ああ・・・この雨が私の汚れを全て落としてくれたら、なんて。
陳腐な台詞しか出てこないのだけれども。
走ってコンビニに行く。
汚れたソックスももう気にならない。
いっそ全部汚い色に染まってしまえば楽なのかもしれない。
勢いよくカゴを取り、品物を放り入れる。
おにぎり、サンドウィッチ、パン、ジュース、お菓子、アイス。
あ・・・梅干おにぎりは嫌いだった。
まあいいけど。
どうせ全て吐き出してしまうのだから。
このお菓子はカロリーが高い。
まあいいけど。
全て吐き出してしまえば関係ない。
私は重いかごをレジに持っていく。
濡れた制服が肌にはりついて気持ちが悪い。
手際の悪い店員に苛立ちの限界目前。
大きいコンビニ袋をひったくるり、店員に舌打ちをした。
私は家まで走る。
大きいコンビニ袋と一緒に走る。
涙なのか汗なのか雨なのかもう分からない。
早く食べなきゃ。
早く、早く、早く。
鍵が開いていないことに苛立つ。
まあ、都合がいいけど。
靴もそろえないで自分の部屋に急ぐ。
早く、早く。
私の胃袋が食べ物を欲してる。
NO.10 唯
10/12(日) 15:04 IP:210.153.84.37 削除依頼- ねく!
更新頑張ってください(・∀・)
NO.11 にけ
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10/12(日) 18:49 IP:220.148.20.216 削除依頼- 唯さん
ありがとうございます! 更新頑張ります
NO.12 にけ
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10/12(日) 19:26 IP:220.148.20.216 削除依頼- 勢いよく自室のドアをあける。
コンビニ袋を漁り、アイスを袋から出す。
アイスは吐くとき、苦しくない。
あとヌルヌルしたものも。
いらない知識や気持ち悪い試行錯誤を重ねている自分が情けなくて、とても醜い人間に思えてきて涙が止まらない。
髪の毛から滴り落ちる水滴も、止まらない涙も気にせず胃袋の中に食べ物を入れていく。
ゴミや食べカスが散らかる。
こんな姿、舞には見せられないな。
どうせみんなも気味悪がってる。
「ハハ・・・。」
私はアイス2個におにぎり3個、紙パックのジュース2本、スナック菓子を1個、チョコレートを2枚食べた所でやっと少し落ち着いた。
ゴミの山を見て震えがとまらなくなる。
そしてトイレに走る。
勢いよく食べたものを吐き出す。
口からは吐瀉物が垂れ、髪の毛からは水滴、目からは大量の涙。
だれか止めて。
そのままでいいんだよ、って止めて。
有紀は綺麗だよって褒めて。
有紀は細いよって羨ましがって。
みんな、私を認めて。
誰に止められてもたぶん止まらないけど。
でも構ってほしいんだ。
鬱陶しいけど。
私は部屋に戻り、ゴミを片付けた。
残りは、また明日食べよう。
サンドウィッチやジュースを冷蔵庫に入れる。
あ、またアイス買っておかないとな。
私はそのまま風呂に入ることにした。
フラフラする。
シャワーを浴びると、自分がしていることが許されるような気がした。
罪悪感、はあるんだ。
やめなくちゃいけないって気持ちも。
鏡に映る自分の体を見てハッとする。
「嘘・・・また太った・・・?」
シャワーは罪悪感も、やめようという決心も簡単に流す。
どうせなら私の高いプライドや汚れを綺麗に流し落としてくれたらいいのに。
#
NO.13 にけ
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10/12(日) 19:40 IP:220.148.20.216 削除依頼- #
朝起きて、ベッドの上で伸びをする。
カーテンを開けると眩しい光が部屋を明るくする。
今日もいい天気だ。
今日はどんな話をしようかな。
そういえば有紀は昨日具合が悪そうだったな。
今日学校に来れるのかな?
いつものように洗顔して、着替えて、朝ごはんとお弁当を作る。
作り終えるころに弟が起きてくる。
「おはよう。あれ、親父は?」
Tシャツにパンツで椅子に座る弟。
「出張。とっくに出てったよ。」
「あそ。」
私は急いで寝癖を直す。
歯を磨いて制服を着て、いざ学校へ!
少し前までは学校に行くのが面倒くさかった。
なのに今は早く学校に行きたいと思える。
できれば早く放課後になれ、とか。
自分に少し自信が持てる。
クラスに友達を作ろう、と思ってたりする。
まだ会って少ししか経ってないのに、彼らの存在は大きい。
もっとみんなのこと知りたいなー。
そうだ、放課後みんなに質問することでも考えようかな。
そうすれば退屈な授業も早く終わる。
「行ってくんね!」
私は軽い足取りで学校へ向かった。
NO.14 にけ
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10/12(日) 19:58 IP:220.148.20.216 削除依頼 ・出身中学
・血液型
・誕生日
・兄弟、姉妹
・中学の時の部活
私は放課後、四人に聞きたいことをノートに書き出した。
退屈な数学の授業もこれで時間をつぶそうと思う。
もっと聞きたいことはあったはずなのに、いざ書き出してみると中々出てこない。
そういえばみんな出身中学は一緒なのかな?
高校で初めて会った人達だとしたら、異常なくらい仲がいい気がする。
てゆうか、なんで放課後屋上に集合するんだろう?
昼休みは人であふれ返ってる屋上も、放課後はあの四人以外に人はいない。
ほとんどの人は部活だからだと言ってしまえばそれまでなんだけれども。
なんであの日、私の話も聞かずに仲間に入れてくれたんだろう。
どうやら私は考え事をすると眠くなるようだ。
おまけにBGMが呪文みたいな数式の羅列。
私はゆっくり眠りに落ちた。
「神尾さん!次体育だよ。」
私はクラスの女子の甲高い声で目を覚ました。
「え・・・あっ嘘!ありがとう!」
私はとっさにお礼を言う。
そしてハッと思いつく。
夏休み明け、入学から5ヶ月が過ぎた今では不自然かもしれない。
でも勇気を出して彼女達を引き止める。
「あの・・・一緒に行っていい?」
彼女達は一瞬驚いた顔をする。
「当たり前じゃん!」
「行こう行こう!」
彼女達は意外にもあっさり受け入れてくれた。
私は嬉しくて、体育の授業中、ずっとニヤニヤしていた。
NO.15 みき
10/12(日) 21:37 IP:220.6.175.127 削除依頼- あげッ♪
NO.16 にけ
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10/13(月) 18:59 IP:220.148.9.48 削除依頼- みきさん
ありがとうございます!
NO.17 にけ
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10/14(火) 19:03 IP:220.148.3.167 削除依頼 終礼と同時に荷物をカバンに詰めて屋上に走る。
今日はクラスの女子と沢山話せたし、天気もいいし、いい一日だったな。
なんて思いながら屋上への階段を駆け上る。
「ヒカルー!」
「おう!」
昨日と同じく、既にヒカルがいた。
「あのね、今日クラスの女子と沢山話せた。」
「まじ?頑張ったじゃん!」
ヒカルはニッと白い歯を見せる。
「うん!」
私もつられてにやける。
ヒカルは再び微笑んで伸びをした。
「当たり前って、実は一番幸せなことなんだよね。」
空を見上げてヒカルが言う。
ヒカルの派手な左腕、というより左手首に目が行く。
昨日と少し違う・・・センスいいな。
こうゆうアクセサリーってどこで買ってるんだろう。
そしてヒカルは私の顔を見て本日三度目のスマイル。
「今日も暑いな!」
ヒカルと話していると時間を忘れる。
沈黙は絶対ないし、おなかが痛くなるくらい思い切り笑える。
本当に自分が喋っているのかと思うほど次から次へと話題が出てくる。
「そういえば四人は同じ中学?」
「そうだよ。」
「やっぱりね!すごく仲いいもんね。」
「まぁねー。」
「ねぇねぇ、ヒカルって何型?」
「ABだよ。舞は?」
「やっぱり。AB型のオーラ出てるもん。私はO型。」
「ぶっ!まんまじゃん!」
「どうゆう意味ですか?」
有紀はB型、美咲はA型、意外にも翔也がA型なんて、血液型の話題に花を咲かせていた。
どれくらい話していたか分からないが、美咲と翔也が遅れて屋上に登場した。
「あっれー有紀は?」
とヒカル。
「なんか休みっぽいんだけど・・・。」
と心配そうに美咲。
「そっかー・・・。まぁいいや。語ろう!」
軽く流すヒカル。
「有紀はよく学校休むんだよ。」
っとヒカルが耳打ちする。
なるほど・・・。
有紀は確かに細いし、色白だし、なんか病弱そうだ。
腰なんかすごく細いし。
なんて考えながら彼らの楽しい話に引き込まれていった。
#
NO.18 にけ
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10/14(火) 19:49 IP:220.148.3.167 削除依頼- #
家のドアを開ける前に気持ちを落ち着かせるために深呼吸をする。
「ただいまー。」
「お帰りなさい。今日は塾がないのに遅いじゃない。」
「今日は、友達と図書室で勉強してたから・・・。」
「そう・・・。じゃあ後でお部屋に夕飯もってくからね。」
たった十五秒間の薄っぺらい会話に思わずため息が出る。
毎日勉強、勉強、また勉強、寝ても覚めても勉強、二言目には勉強。
本来、一番安心できてくつろげるはずの自分家が一番息苦しくてたまらない。
カバンから教科書と問題集を出す。
中間テストの勉強、いまからコツコツやっとかないとな。
放課後屋上で過ごす分ちゃんと家で勉強しなくてはいけない、と思うが体が言うことを聞かない。
ベッドに体を軽く預けて、そのまま寝てしまった。
「美咲!」
母親の耳につく甲高い声で目が覚めた。
やばい、と思ったときには遅くて私の右頬は平手打ちを食らっていた。
「寝てる暇なんかがあったら勉強しなさい!」
ガシャン、と机に夕飯を置いて怒鳴った。
こうなると私にはもう手に負えないので母親の怒りがおさまるまで大人しくしてようと、抵抗するのを諦めた。
母親はひたすら私に罵詈雑言を浴びせる。
馬鹿、恥知らず、努力もしないで、私の気も知らないで、友達と勉強して集中できるわけがない、とかいつものことながら勝手なことばかり言っている。
そして私のこめかみをもう一発平手打ち。
さすがに痛いし、フラフラする。
「分かったの?」
「はい。」
母親はほくそ笑んで部屋から出て行く。
私の気も知らないで?
知るかそんなの。
馬鹿で品のない恥知らずはおまえだろう。
死んでしまえ!
私は母親の作った夕飯を机からどかして勉強を始めた。
NO.19 アネモネ
10/14(火) 21:05 IP:210.153.84.40 削除依頼 ずっと影で読まして もらっていました!
にけさんの文章好きです。
更新頑張ってください。
NO.20 にけ
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10/17(金) 18:17 IP:220.148.4.188 削除依頼- アネモネ様
本当ですか!? ありがとうございます!
まさか誰かに見てもらえるとは思っていなかったので嬉しいです。
更新がんばります!
NO.21 にけ
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10/17(金) 18:42 IP:220.148.4.188 削除依頼 数学の教科書とノートを取り出して今日の授業の内容を復習する。
だいたいこんな複雑な計算が将来なんの役に立つのか。
基本的な和差積商の計算を理解していればそれでいいのに、なんて陳腐な屁理屈を考えてはため息をついた。
だいたいなんで勉強なんかしなくちゃいけないんだろう。
自分のため? 親のため? テストのため? 受験のため? 将来のため? 人生のため?
さっき平手打ちをくらったこめかみが痛む。
机に向かうとイライラする。
つい手に力が入り、シャープペンシルの芯が折れた。
私の中で何かが切れた。
力任せに芯の出ていないシャープペンシルで家庭学習用のノートを引っ掻く。
「あ゛あ゛あああああああああ!!!!」
ノートが引き裂かれる。
シャープペンシルが壊れるんじゃないかというくらい思い切りページを切り裂いていく。
綺麗に整理されたノートが破れていくのを見ながら、私は意外と冷静に物事を考えていた。
大袈裟だけれども、なんのために生きているんだろう、とか。
せっかく綺麗にまとめてあったのに、とか。
お腹空いたな、とか。
右手が滑り、ノートを抑えていた左手を引っ掻いてしまった所で私の奇行はやっとおさまった。
親指と人差し指の間から中指のラインまで切れていた。
血が滲む。
人間って血だけは綺麗なんだよな。
残酷なことや非道なことを考えていても血は綺麗。
人を傷つけたり殺したりしても血は綺麗。
イライラしてストレスの上限を過ぎていても血は綺麗。
勉強ができる人も、できない人も血は綺麗。
私も、母親も血だけはきっと綺麗なんだ。
滴る鮮血に胸が騒ぐ。
ペン立てのカッターを取る。
刃は抜いてある。
そうだ、もう切らないって決めたんだ。
私はカッターをペン立てに戻し、滲む血を見て心を落ち着かせ、数学の問題集を解き始めた。
NO.22 ひゆ
10/18(土) 01:26 IP:220.221.45.31 削除依頼- ねくすと希望!(´∵)ノ
主さんの文素敵です-!★
NO.23 aaa
10/18(土) 16:17 IP:59.141.17.114 削除依頼- ネクスト★
誰から目線とかわかんないんで 書いてくれたら嬉しいです。
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