岡山県中部の山の中で、場違いな光景が脳裏に浮かんだ。北京五輪の女子棒高跳びで優勝したイシンバエワ選手(ロシア)が、華麗にバーを越えたシーンである。
常に五メートル前後の跳躍を見せる彼女なら、この高さは無難にクリアするだろう。だが、よくここまでコスモスを育てたものだと感心した。真庭市の北房地区にある「コスモスパーク北房」に植えられたジャンボコスモスのことだ。
今年は四メートル四十二センチの高さを記録した。二〇〇四年に「世界一背が高いコスモス」としてギネスブックに認定された三七五・二センチの記録を大幅に塗り替えた。マスコミに報道され、一目見ようと大勢の観光客が訪れている。
ジャンボコスモスは、地域おこしの一環で西日本有数の規模を誇るコスモス園を整備した地元の人たちが、話題づくりのために挑戦している。特別な品種ではなく、風で折れないよう添え木を当てるなどして大切に育てる。
イシンバエワ選手は体操で世界を目指したが、体が大きくなり過ぎて断念し、棒高跳びに夢を託した。何度も世界記録を更新し有名になった。
コスモス園には、過疎に悩む地域の活性化という夢が託されている。地元住民はシンボル的存在のジャンボコスモスの記録更新に挑み続ける。地域おこしに懸ける熱い思いが伝わってくる。