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2006/04/03
京都府長岡京市で2004年5月16日,下水道のマンホールが陥没。同時に,上流側にある別のマンホールから下水があふれ出し,道路が冠水する事故が発生した。同市が調べたところ,陥没したマンホールの直壁の一部が欠損。さらに,下流側に1m離れた下水道管の上半面に幅0.8m,長さ1mの穴が開き,土砂が流入していた。
左は,上面に穴が開いた下水道管。管の内径は80cm,厚さは8cm。右は,鉄筋や骨材がむき出しになるほど激しく腐食した下水道管の内部。最大で91.8ppmの硫化水素ガスが充満していた(写真:長岡京市) |
この下水道管を使い始めたのは1983年から。下水道施設は一般的に50年の耐用年数を見込んでいる。市は1999年に,陥没したマンホールや下水道管の調査を実施。このとき,腐食などはほとんど見当たらなかった。その後,わずか5年ほどの間に腐食が急激に進んだことになる。
排水基準を守っていても腐食
下水道管やマンホールが腐食した原因は,管内に充満した高濃度の硫化水素ガスだった。陥没したマンホールには,鉄筋コンクリート製の下水道管のほか,ビール工場からの排水を流し込む取り付け管がつながっている。硫化水素ガスが発生して腐食が急激に進んだのは,このビール工場と無関係でなかった。理由は主に三つある。
一つ目は,ビール工場からの排水が急こう配の取り付け管を通り,80cmもの落差でマンホール内に流れ込んでいたこと。この際,排水中の硫化水素が,マンホールや下水道管内に気体となって拡散した。
二つ目は,工場内で処理した排水を,長さ450mの圧送管でマンホールの近くまで送っていたこと。圧送管内には空気がない。酸素を嫌う細菌が活発に活動して,排水中に硫化水素を作りやすい環境になる。
そして三つ目は,工場が排水の処理方法を変えたことだ。工場は当初,活性汚泥法を採用。ところが1998年に,嫌気法と呼ぶ処理方法を導入した。ちょうど,下水道管の腐食が急に進み始めた時期と重なる。嫌気法は活性汚泥法に比べて省電力で運転できるが,圧送管と同じく硫化水素が生じやすい。
一方,ビール工場の排水や処理方法は基準を満たしていた。下水道法が定める排水基準は,窒素やリンなどの濃度を制限しているが,硫化水素の濃度は定めていない。
市は事故後,セメントを使わないレジンコンクリート製のマンホールで復旧。取り付け管は落差が10cmになるように延ばした。さらに,劣化した約150mの下水道管を更生工法で改築した。これらの工事には約2億円かかった。
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[ケンプラッツ]
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