増え続ける認知症の対策として、国が中核施設と位置づける「認知症疾患医療センター」の整備が大幅に遅れている。初年度の08年度中に150カ所設置するのが目標だが、現在11カ所。実施主体となる自治体側の財政難が背景にあり、国の計画実現が危ぶまれている。
同センターは、専門医配置や検査機器設置などの要件を満たす医療機関を、都道府県が指定する。認知症治療で課題となっている早期の確定診断や、医師向け研修開催など、地域医療の中心的存在となることが期待されている。
だが、これまでにセンター指定が決まったのは、大阪府や新潟県、北九州市など5府県市の11施設。厚生労働省によると、08年度末時点でも計13施設にとどまる見込み。厚労省が自治体にアンケートしたところ、来年度の整備予定は10施設の見通し。国がセンター移行を期待する施設約150のうち111施設は「時期未定」、16施設は「予定なし」との回答だった。
整備が進まない背景には、病院側にとって補助金だけではセンター運営が難しい事情があるようだ。国と実施主体の都道府県・指定市から半分ずつ出る補助金だけで、指定要件の「専従の精神保健福祉士」の人件費や研修費を賄うのは難しい。
その補助金も心もとない。厚労省のアンケートに対し、28自治体が「財政が厳しく、予算措置するのが困難」、13自治体が精神保健福祉士などの「人員確保が困難」と回答した。神奈川県は「今の国の補助額では難しい」、大阪府は「人件費が足りず、医療機関の負担がある」と漏らす。
国は来年度から、介護との連携を図るためセンターに対応する形で全国150カ所の介護施設に専門家を配置する計画だが、センター設置の段階でつまずきそうだ。厚労省精神・障害保健課は、「自治体に制度の趣旨を呼びかけていくしかない」としている。(中村靖三郎)