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医療現場に警察の知恵/医療期間がノウハウ活用
- 社会
- 2008/10/18
患者からの暴力や苦情などへの対応をめぐり、医療機関が警察官のノウハウ活用を始めている。院内暴力対策用に作製したハンドブックに元署長の寄稿を依頼したり、事件性が疑われる患者の扱いについて助言を得ながら対応したり。元警察官の採用を検討する動きも目立ってきた。
医師や看護師が安全に医療を行える環境づくりに取り組んでいる北里大学医学部(相模原市)の和田耕治助教は七月、「ストップ! 病医院の暴言・暴力対策」(メディカルビュー刊)を出版した。
「他の患者の前で『ヤブ医者』と罵倒(ばとう)された」「事務室に乱入された」「殴られた」などの事例を紹介したほか、産業医時代に面識があった元秦野署長の谷山悌三さん(67)に寄稿を依頼。谷山さんは経験を生かし「悪質なクレームは金銭で解決せず組織で対応を」などと提言を寄せた。
背景には、患者による精神的、身体的な暴力の増加があるという。私立医療法人などでつくる全日本病院協会(東京都千代田区)が行った全国調査で、過去一年間に医師らへの暴言、暴力があったと回答した医療機関は回答数の半数以上に当たる五百七十六院に上った。
和田助教は「普通の患者からの暴言や、文書での謝罪要求など、深刻な内容が増えている」と傾向を説明。理由について「医療技術を過信する患者側と、人手不足や経営難に追われる病院側とのギャップが一因」とみている。
院内暴力対策に限らず、的確な医療のために警察官の知識を生かしているのは、聖マリアンナ医科大学病院(川崎市宮前区)だ。病院事務管理課の職員として、六年前から県警の元警察官二人が勤務している。
当初は救命センターの受け付けなどに携わっていたが、交通事故で運ばれた患者が死亡した場合や異常死など、警察への届け出が必要な場合には助言をもらう。「一般の人は知らない分野の知識があるのが強み」(同院)という。
東京慈恵会医大付属病院では元警視庁捜査一課管理官が渉外室長を務める。警察OBを採用する動きは広がり、県内では北里大学病院も既に採用、東海大医学部付属病院(伊勢原市)も検討に入っている。
ただ「医療機関の事情と警察官の技量について双方が把握しきれず、ミスマッチが多い」(和田助教)のも事実という。業務内容などについて共通認識を持つことが課題になっている。
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