涼しさについ油断しがちだが、行楽の秋はハチの被害が多い季節。気温が高く台風も少ない今年は、とりわけ危険なスズメバチの大きな巣が残っている可能性もあり、専門家らが注意を呼びかけている。
9月28日、北九州市で開かれたウオーキングイベントで山あいの遊歩道を歩いていた参加者をキイロスズメバチが襲い、10人が刺された。いずれも軽傷だった。コンクリート製歩道の足元の鉄骨から直径約30センチの巣が見つかった。
福岡市消防局によると、07年にハチ被害で救急搬送された16人のうち、7人が10月以降だった。今年は今月9日現在ですでに16人。うち2人は入院が必要な症状だった。
怖いのはアレルギー反応による死亡事故。一度刺されると体内に抗体ができ、次に刺されるとショック症状を起こす場合があるという。特に毒性の強いスズメバチの場合は「刺されたときは病院への速やかな搬送が必要」と話す。
福岡管区気象台によると、九州北部は7〜9月の気温が平年より1度程度高く、10月以降も高めが予想される。「ハチは外気温の影響を受けやすい。暖かければ動きが活発になる」と、ハチに詳しい九州大理学部の粕谷英一准教授(生態学)は話す。近年の温暖化により、活動時期が延びている可能性も指摘する。
秋まで残ったスズメバチの巣は大きくなっており、多くの働きバチが飛び交う。「攻撃を前にカチカチと音を出して威嚇する習性がある。気づいたら静かに後ずさりするとよい」と粕谷准教授は話す。
また、庭先などでよく見かけるアシナガバチは秋が交尾の時期。暖かな日は活発に飛び回る。洗濯物に付いているのを気づかずに取り込んで刺されるケースもあるという。