コラピン・ラタナサッチャタム医師
Dr.Korapin Rudtanasudjatum
産科・婦人科医
Board of Obstetrics and gynecology
Obstetrics and Gynecology Department
――産婦人科の担当領域についてお聞かせ下さい
おりもの・不正性器出血・子宮/卵巣腫瘍などの婦人科疾患の診察と治療、そして妊娠中の健康管理や合併症、分娩など産科疾患の診察と治療を行っています。
――腹痛や不正出血などは一過性のものだと見過ごしてしまいがちですが、どんな病気が考えられますか
腹痛や不正出血は様々な病気のサインだと考えられるので、女性にとって最も身近な病気や症状をいくつかご紹介します。
1)おりもの異常
正常なおりものは透明、又は白色で多少の粘度を持っています。異常なおりものは黄色や血が混ざっていたり、臭いやかゆみを伴います。原因の一つとして、外陰部を清浄に保つラクトバシラス菌が何らかの原因でダメージを受け雑菌が繁殖していると考えられます。何らかの原因とは、多量の抗生物質・ステロイド・経口避妊薬の服用や、殺菌効果のある液剤での洗浄、長時間の不衛生な状態などです。
おりもの異常が示す病気は次の通りです。
1 外陰膣カンジダ症:外陰部に痒みや痛みを感じます。患者によっては歩行が困難になるほどの痒みを感じます。発酵臭のある白色や黄色の塊状のおりものが出ます。
2 細菌性膣症:腐臭と、黄色から茶色までの濃いおりものが特徴です。
3 トリコモナス症:排尿時や性交時などにかゆみと疼痛(とうつう)を感じます。下腹部痛を感じることもあります。
2)不正性器出血
以下のような様々な原因が考えられます。
1 若年性交による妊娠の合併症、流産など。
2 ガオクルアなど女性ホルモンに影響を与える薬物の服用。
3 初潮を迎えたばかり、又は閉経の近い女性、ストレス過多の女性に起こりやすいホルモン異常。
4 子宮頸部や子宮内膜の細菌感染、又は腫瘍。
子宮頸ガンは女性がかかるガンで最も多いといわれています。弊院では子宮頸ガンを予防するHPVワクチン接種を9歳から45歳までの女性を対象に行っています。10月中は特別割引料金(1回4700バーツ)を設定していますので、是非この機会にご利用ください。
不正出血は命の危険を知らせるサインかもしれません。放置せずに、必ず医師の診察を受けて下さい。
3)下腹部痛
原因は様々で、一時的に起こるもの(急性)と、長期的に起こるもの(慢性)があります。
急性の原因は子宮内膜症、卵管炎、卵巣膿腫や子宮外妊娠などが考えられます。また、性行為感染による生殖器の炎症は下腹部痛のほかに発熱やおりもの異常、排尿異常、腰痛、不正性器出血などが見られます。子宮内膜症は子宮内腔以外で子宮内膜が発達する病気です。不妊症の原因にもなるため、特に妊娠を望む女性は早期の治療が大切です。また、卵巣膿腫を引き起こすことがあります。卵巣膿腫は良性のものもありますが、悪性(卵巣ガン)の場合は治療が必要です。
慢性の原因は急性とほぼ同じで、不正性器出血などほかの症状と合わせて起こることがあります。急性の下腹部痛が慢性化することもあります。月経痛もこの一種で、原因はプロスタグランジンというホルモンが子宮を過剰に収縮させるからだと考えられています。
下腹部痛の原因は生殖器疾患以外にも腸炎や尿道炎、筋肉の炎症、精神的なストレスも考えられます。
4)妊婦検診
妊娠が分かったら、遅くとも最後の月経から3ヵ月目までには検査を受けましょう。これは正常な妊娠であるかどうかだけでなく、胎児に異常がないかも調べるためです。高血圧症や糖尿病、貧血症など妊娠に危険な合併症や性病感染症が起きていないかも調べる必要があります。
5)妊娠中毒症
妊娠5、6カ月目から出産後1週目までに起こりやすい病気です。初産、双子の妊娠、糖尿病や高血圧症、腎臓疾患の女性に多く見られます。妊娠中毒症の発作や症状は2つに大別できます。一つは比較的軽症のもので、手足顔のむくみや高血圧、尿タンパクです。もう一つは重症で、頭痛やめまい、吐き気、ケイレンや意識不明に陥ることもあり、母子共に危険にさらされる恐れがあります。軽症の場合は出産から1カ月前後で自然に治ってしまうことが多いのですが、重症の場合は分娩中に心臓発作が起きる危険もあり、妊娠中毒症は危険な合併症といえます。
思い当たる症状や疑問があれば、すぐにご相談ください。男性医師で不都合なら、予約時に女性医師を指名することもできます。
――ありがとうございました