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NIKKEI NET

社説2 オバマ外交政策への懸念(10/18)

 3回目のテレビ討論を終えた米大統領選挙は、民主党のバラク・オバマ候補が優勢な戦いを進めている。金融危機のなかの選挙戦であり、経済問題に焦点が当たるが、民主党の政策綱領にあるアジアに対する外交政策には、日本から見て心配な点がある。オバマ陣営に対する懸念を発信しておきたい。

 政策綱領はアジア政策を日本、オーストラリア、韓国、タイ、フィリピンなどの同盟関係の維持から筆を起こし「これらの2国間協定、随時の首脳会談、その場に応じた外交取り決めを超えた、より効果的な枠組みを築かなければならない」と述べる。ライス国務長官が提唱する6カ国協議を安保機構化するのと同様の発想である。

 これには問題がある。それは日米同盟の相対化につながり、さらに形骸化にさえつながる危険があるからだ。ワシントン体制という多国間システムのなかで日英同盟がなくなっていった1920年代の歴史の再現にさえ見える。日英同盟廃棄の後に何が続いたか。あの歴史は語るまでもない。

 当時の日英同盟に相当するのが現在の日米同盟である。それは日本外交の基軸であり、アジア太平洋の安定装置として機能する。「2国間協定を超えた枠組み」を書いたオバマ陣営の担当者は、選挙戦で注目される新提案をしたかったのだろうが、政策綱領は学術論文ではない。

 2国間の同盟と多国間機構は両立可能だとの見方もあるだろう。しかし例えば2007年2月以来の6カ国協議を見れば、それが日米同盟を揺さぶっているのがわかる。

 米国は議長国・中国に気を使い、北朝鮮に対して融和的になった。テロ支援国家の指定解除に日本の世論が不快感を持てば、日米同盟の基礎が侵食される。6カ国協議が制度化された機構になればこの傾向が続く可能性がある。

 日米同盟の維持・強化が日米双方にとっての利益だとすれば、米側だけに努力を求めるのは正しくない。日本側は努力をしてきたか。例えば8年前の超党派の米側報告書(アーミテージ・ナイ報告)が日本に求めた集団的自衛権をめぐる憲法解釈の変更はまだなされていない。

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