モスクワ市で、高さ457メートルのタワーを中心にオフィス、ホテル、美術館などを建設することが計画されている。総工費40億ドル。このような巨大プロジェクトが計画される一方、ロシア政府は資源ナショナリズムの度合いを強めている。消費経済優先やパワーポリティクスへの回帰は、ロシアの中長期的な経済の発展を阻害する可能性が高い。
ロシアよりも原油・天然ガスの埋蔵量が多い中東産油国が自国の産業基盤整備に邁進(まいしん)している中で、原油生産量世界第2位のロシアは原油価格高騰に伴う消費景気に浮かれているように見える。70年間の計画経済のもとで軍事産業への投資が優先された結果、一般の製造業では大半の設備が老朽化しエネルギー効率も悪い。原油輸出収入の80%が国家の収入となる新税制により、石油化学関連産業の設備投資も大幅増加は期待薄で、産業基盤の整備という地道な政策が実行される可能性は低い。
2007年に「サハリン2」石油・天然ガス開発計画で外資の出資比率を強引に引き下げたロシア政府は、今また英国の石油メジャーBPとロシアの民営企業の合弁石油掘削会社の経営に介入している。BPから派遣されている経営陣のビザの更新を認めないというものだが、およそ先進国とは思えない強引さが外国企業の警戒心を引き起こしている。ロシアの製造業が発展するには外国からの生産・省エネ技術の導入が不可欠だが、現状では本格的な外国からの投資は見込めない。
石油輸出から得られる巨額の財政収入をどのように使うのか。軍事産業への資金優先配分は戦争経済という、歴史的に証明された国家衰退の道につながる。(皓)