◎かなざわごのみ お城を発信の場に生かしたい
今年から金沢城公園をメーン会場にして開催中の「おしゃれメッセ2008かなざわご
のみ」が佳境に入っている。夏の金沢城オペラ祭でも、華やかなファッションイベントが開かれたが、城郭を借景にした幅広いファッションの提案は、歴史都市・金沢であればこそ実現できる試みであろう。
金沢城はこれまでも史跡としてだけでなく、百万石行列のクライマックスや金沢城・兼
六園大茶会の会場として使われ、出初め式では加賀鳶はしご登りが演じられるなど、お城の風格を生かしたイベントを中心に幅広く活用されている。伝統と趣を異にした「かなざわごのみ」の会場となったことで、オペラ祭と合わせ、金沢城に流行の最先端を発信する役割を持たせたい。そのことによって、県外のみならず、県民からの復元整備への関心も盛り上がるだろう。
今回は、新作アパレルや工芸、ジュエリーなどで、ものづくりの伝統に裏打ちされた斬
新なファッション作品が多数展示され、十八、十九日は特設ステージで華やかなファッションショーが繰り広げられる。全国の名だたるお城で行われるさまざまなイベントを見渡しても、城とファッションという意表をつくマッチングを前面に出した試みは、ほとんどないと言えるのではないか。
折しも金沢市内では、国内外で文化を生かした街づくりに取り組む都市の代表が集う世
界創造都市フォーラムが開かれただけに、参加者に、都心部のランドマークとしての城を多様に生かした金沢の創造の力をアピールする効果は十分あっただろう。
金沢城の復元は、今夏に河北門の整備に取りかかったが、まだまだ先の長い取り組みで
ある。「かなざわごのみ」のような流行の最前線を扱ったイベントの城内開催が定着すれば、中高年だけでなく、若年層の来場も促すことにつながるだろう。
そうなれば、城内へ毎年足を運び、イベントと合わせて復元整備の足取りを確かめる機
会も増えよう。それは将来の復元の推進力となる幅広い金沢城ファンを増やすことにも役立つに違いない。
◎雇用保険引き下げ 埋蔵金の活用に道開く
労使折半の雇用保険の保険料引き下げは、いわゆる「霞が関埋蔵金」を使って、失業給
付の水準を維持したまま労使双方の負担を減らす実質的な減税案といえる。負担軽減は年間で三千億円程度とはいえ、埋蔵金を財源として活用した点にも大きな意義がある。
政府は、保険料引き下げを追加経済対策に盛り込む方針という。特別会計のなかに、景
気対策に使えるお金がまだまだ眠っているのではないか。埋蔵金を財源に使う第二、第三のアイデアを具体化してほしい。
雇用保険は失業した場合などに、安心して求職活動ができるようにするための保険で、
引き下げにより、月給三十万円の会社員で、月額三百円安くなる。一人当たりの金額は小さいが、恩恵を受ける事業所は約二百万、就労者は三千六百万人に上り、「減税」効果が広い範囲に及ぶ利点がある。
政府の行政支出総点検会議の中間報告によると、労働保険特別会計のうち、〇八年度で
年間一千六百億円の国費が投じられている「失業等給付」の積立金は、五兆四千億円ある。戦後最長の景気回復期が最近まで続いていたため、過去最高額が特別会計に積み上がっているのである。
むろん、不景気になれば、失業者が増えるため、この先、積立金を取り崩して使わなけ
ればならない局面があるかもしれない。実際、九〇年代後半の不況期に、積立金が底を尽きかけたこともあった。
だが、本当に失業者が増えて、積立金の取り崩しを迫られる状況になるまで、このお金
を眠らせておくのはもったない。現実に景気の悪化が懸念される今こそ、積立金を活用して企業や労働者に還元し、消費拡大につなげる案は理にかなっている。
ただ、政府案は、保険料引き下げと同時に、国庫負担を廃止したい考えのようだが、不
況が予想外に長引いた場合などに、積立金が不足する事態が起きぬとも限らない。そのときは、保険料を安易に引き上げてもらっては困る。必要に応じて国費を投入する道も残しておくべきではないか。