4 被告による資金流用
⑴一方、原告会社の株式上場に向け、被告滑水が外部監査法人に対し、原告会社の経営管理制度及び直近の決算書の調査を依頼していたところ、平成18年10月ころ、当該監査法人から、予備調査報告書が提出され、原告会社の経営管理制度に様々な問題点があることが指摘された(甲6号証)。
具体的には、当時の原告会社においては、特別顧問として原告会社の代表者直轄のポストに就いている被告清水が、契約関係を始め重要な管理業務を統括しているにもかかわらず、職務権限及び業務分掌規程、稟議規程などの組織規程が策定されておらず、また、内部監査機能を有する部門も設置されていなかったために、職務権限と責任の範囲が不明確な組織体制であることが指摘された。
また、原告会社においては、少数の従業員数に比して多数の顧問、外注作業者が存在しているところ、その報酬については、株主の監視が十分に及ばず、取締役の専断で会社資金を流用可能な性質のものであると指摘された。
さらに、原告会社の財務会計管理について、入出金元資料となるべき原始証魎の添付が徹底されていないばかりか、稟議制度も採用されていないことから、経費支出に関する社内牽制は殆ど効いていない状況であり、原告会社代表者の親族以外の者で社内において外注先の会計処理の進捗状況のコントロール及び処理内容のチェックができる人材を配置する必要があると指摘された。
(2)それまでの間、鈴木は、被告清水の請求内容について、少なからず疑問を有していたにも関わらず(甲4号証の2)、被告清水に言いくるめられ、請求されるままに支払っていた。
しかしながら、監査法人から前述のような調査報告を受けたことから、株式上場に向け原告会社の財務を任せていた訴外佐田逸郎氏(以下、「佐田氏」という。)に対し、前述の予備調査報告を散桁した追加調査を依頼することとした。
これを受け、訴外佐田氏は、更に外部の公認会計士を通じて原告会社における財務状況の調査を進め、試算表を作ったところ、現預金が合わないことが判明した。これは、原告会社の外部第三者に対する支払については、被告清水が一定の間をおいてまとめてメール等で請求しているに過ぎず、その内訳を示す請求書等を添付していなかったこともその原因として含まれていた。
ところが、訴外佐田氏は、平成18年9月ころ、被告清水から、それ以降、原告会社に出社しないように通告され、事実上、原告会社との顧問契約を解除されてしまったため、その後の調査を続行できなくなってしまった。
それだけではなく、被告清水は、平成18年9月期の決算について、原告会社の顧問税理士による関与を一切させないまま行い、さらに、平成18年10月ころに至っては、被告清水は、原告会社の税務申告や決算に必要な資料を全て持ち帰ってしまい、原告会社の顧問税理士にも開示を拒絶したため、原告会社としては、当年の税務申告については、被告清水が提示する資料を裏付けとしてのみ行わざるを得なかったものである。
なお、別紙請求支払一覧表から窺えるとおり、訴外佐田氏が原告会社を離れた平成18年10月以降、被告洞水の原告会社に対する請求額は増大している。
また、被告清水を通じて支払がなされていたはずである訴外横居の個人事業である訴外ケーテックからの受託業務に関する請求額についても、平成18年8月28日付被告からの電子メールによる請求分から、1,100,000円増加した3,300,000円になったが、鈴木が被告滴水に対しその旨を告げ、謂求額の真偽を確認しようとしても、被告清水は、真偽について明らかにしなかった。
また、訴外横居からの請求について、被告清水は、突然、「MSXプレーヤー利用権」なるものを追加して主張し、これを裏付ける証恐として、利用権許諾に関する高額の請求書(甲9号証)とともに、原告会社の印影が押捺された覚書の写し(甲7号証)が提出されたが、その印影は原告が契約締結の際には使用することのない印鑑に基づくものであり、到底、真正に成立したものではなかった。
⑶そのため、鈴木は、被告清水が適正に契約関係を処理し、原告会社に対して請求を行っているのか疑念を強め、再三にわたって電子メール等で照会し、被告の請求内訳について不明点を質し、併せて請求の元となる資料の提示を求めたが、被告消水はこれに応じなかった。
そのため、原告会社は、被告清水が原告会社の特別顧問として、原告会社のために適正に契約関係及び支払の処理を行っているかに関する疑念を払拭できないとして、被告清水に対し、平成19年2月23日付内容証明郵便を送付し、同人との間の顧問契約を解除した(甲8号証)。
⑷なお、原告会社の顧問を解除された後、被告清水は、平成19年2月末から3月初旬にかけ、原告会社の取引先銀行であった三菱東京UFJ銀行新丸の内支店及び八千代銀行東池袋支店の各担当者に対し、原告会社への融資を行わないよう働きかけるなどしていた。
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