黄金色の穂波が真っ青な空に映える。垂れた稲穂が収穫を促す日本の秋が、岡山県南でも本番である。朝の通勤は今ごろが一年で一番気持ちよい。
沿道の田の半分くらいは、すでに稲刈りを終わっている。次の土日あたりでほぼ刈り終えることだろう。田の間を縫う道のわきに、地元の神社の秋祭りを告げるのぼりが揺れていた。この週末、祭りでにぎわう地域も多かろう。
本紙に連載中の「白川静文字学入門 漢字物語」は毎回勉強になる。今月七日付では「祭」の字が解説されていた。祭は「月」と「又」、それに「示」からなる。月は夜空の月ではなく肉を表すにくづき、又は手を表す。そして示はテーブルの形だそうだ。
だから、祭は神へのささげものを載せるテーブルの上にお供えの肉を手で置き、神へのお祭りをする意味になる。さらに言えば「際」は神と人が接する場所だそうだ。一読して収穫に感謝する秋祭りが一段と味わい深く思えてきた。
現代社会では多くの人にとって食べ物は作るものから買うものになった。生産、流通も複雑化し、殺虫剤混入インゲンのような問題も起きる。
食べ物が天の恵みであることは昔も今も変わりない。収穫の秋は食欲の秋でもある。食べ物を口にする時、自然に対する感謝の念を忘れてはならない。