NHK執行部と最高意思決定機関である経営委員会の間で難航していたNHKの次期経営計画(二〇〇九―一一年度)は、一二年度から受信料収入の10%を視聴者に還元することでようやく決着した。
「受信料の還元」について経営委の古森重隆委員長は値下げを意味するとしたが、具体的な方法などは今後検討していくという。NHK受信料が値下げとなれば初めてのことだ。
経営計画は、昨年九月、経営委が当時の橋本元一NHK会長ら執行部が示した月額最大百円(約7%)の受信料値下げを「不十分」として認めず、再検討を求めた。今月七日には福地茂雄・新会長ら執行部が一二年度からの値下げを示したが、不確定要素があるとして下げ幅などは明記しなかった。これに対し、経営委は「10%の値下げは十分可能だ」として議決を先送りした。十四日の会議でも執行部が示さなかったため経営委が修正動議を出して押し切った。経営委が執行部案を修正議決したのは初めてという。
異例の展開を見せた要因には、経営委の強い姿勢がある。経営計画は、国会承認が必要なNHK予算にかかわるため、これまで執行部と政府側の水面下での調整で事実上決まっていた。経営委はNHKの最高意思決定機関でありながら、追認機関的な色合いさえあった。
それが一変したのは、相次いだ不祥事で国民の信頼を失い、受信料の不払いが広がる中でNHKの抜本的改革とともに経営委の在り方が問われたためだ。今回は計画の立案段階から関与した。「10%還元」にこだわったのも、昨年九月の執行部案を下回らないよう意地を見せ、存在感を示したといえよう。
経営委が執行部と前向きな緊張関係を持つことも、受信料の値下げへと動くことも意義がある。しかし、経営計画の目的はNHKを望ましい公共放送へと抜本的に改革して国民の信頼を回復することだ。受信料の値下げは、あくまでも改革に取り組み成果を挙げていく過程から生じるものだろう。
その点で論議が「10%還元」を明記するかなど値下げ問題に終始したのは残念だ。経営計画には、携帯端末サイトでのニュース配信、取材・制作体制の強化、子会社の削減など数々の項目や目標を盛り込んでいる。民放との分担の関係や、活力あるスリム化、政治からの独立性を守れるのかといった公共放送としての在り方をめぐる議論が高められたか疑問である。NHK改革の本筋を忘れては再生はおぼつかない。
後期高齢者医療制度や国民健康保険に加入する高齢者からの保険料徴収で、今月から新たに約四百三十万人が年金からの天引きの対象になった。しかし、自治体や社会保険庁の事務処理の不手際などで、本来対象外の高齢者から誤って天引きするケースが続出した。
共同通信のまとめでは、誤徴収は二十八道府県百六十二市町であり、約二万四千人に上った。相次ぐミスに制度への不信感は募るばかりだ。
今年四月に導入された後期高齢者医療制度は、二カ月ごとに保険料が天引きされ、今月で四回目になる。新たな天引きの対象者は会社員の子どもらに扶養されて保険料を負担してこなかった約二百万人をはじめ、七十五歳以上で約三百万人に上る。さらに、六十五―七十四歳で国民健康保険に加入している人のうち約百三十万人も新たな徴収の対象になった。
四月のスタート時にも誤徴収や天引きへの批判が高齢者から渦巻いた。政府・与党は六月に制度を一部見直し、十月からの低所得者への天引き停止や、一定の条件で天引きを口座振替に選択できるようにしたが、自治体側の手続きミスが多発した。社保庁のコンピューターシステムに制約があって、データ処理できなかったものもあった。
年金生活のお年寄りにとって本来、軽減されるべき保険料が天引きされていたり、二重に徴収されていたのではたまったものではない。受け取っている年金に間違いはないのか、不安に感じる人も多いに違いない。
麻生太郎首相は国会で制度見直しの方針を示すものの、見直し案の提示に一年ぐらいかかると答弁している。早く抜本的な見直し案を示すべきだろう。このまま混乱を引きずっていたのでは、信頼回復は望めない。
(2008年10月17日掲載)