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東広島の女性殺害:動機も凶器も不明 犯行否認、16日判決 /広島

 ◇逮捕から1年半

 昨年4月、東広島市の会社員、池田美穂さん(当時33)を同市の短期賃貸マンションで殺害し、所持金を盗んだとして、殺人と窃盗の罪に問われた南区向洋新町5の無職、飯田真史被告(52)の判決公判が16日に広島地裁である。今回の裁判は、公判前整理手続きを経て、結審を含め6回の公判を要した。飯田被告は犯行を否認しており、直接的な証拠もないこの事件の争点をまとめた。【矢追健介】

 ◇事件の背景

 検察側、弁護側で争いのない点で、事件の背景を説明する。

 事件のあったころ、池田さんは親しかった男性との関係を男性の親族にとがめられた。親族は池田さんに、「二度と会わない」という誓約書や印鑑登録証明書の提出などを要求した。池田さんは昨年4月23日ごろ、飯田被告が営む「広島悩みが解決できる相談室」に電話し、相談を持ちかけた。

 印鑑登録証明書で実家の住所が知れるのを嫌っていた池田さんに、飯田被告は短期賃貸マンションを借り、住所を異動させればいいと忠告。池田さんは26日にマンションを借りた。池田さんが殺されたとされる29日は、池田さんと親族が午後9時に話し合いの約束をしていた日だった。

 飯田被告と池田さんは29日午後5時ごろ、JR東広島駅(東広島市)で落ち合った。その後、2人は午後6時ごろに食事をするために東広島市のホテルに着いた。しかし、ここでは食事をとらずに立ち去り、午後6時50分ごろに竹原市の飲食店に入った。そして、午後7時半ごろに店を出た。

 検察によると、その夜の9時の約束に池田さんは現れなかった。

 ◇争点

 検察側、弁護側の大きな争点は、飯田被告は池田さんのマンションをいつ訪れたか▽池田さんはいつ殺害されたか--という点などだ。

 マンションをいつ訪れたかについて検察側は、2人は食事後にマンションを訪れたとするが、弁護側は、2人は池田さんのマンションを訪れてから食事に行き、その後別れたと主張する。

 殺害時間について検察側は、池田さんが食事後の午後8~9時ごろまでの間に殺されたと主張。一方弁護側は、食後1時間以内に死亡したものとは限らないと反論した。その他、弁護側は近隣住民の供述からも検察側の犯行時刻が間違っていると指摘する。

 検察側は飯田被告を犯人と断定したが、弁護側は殺人の動機がないのは犯人でない理由として十分だと訴えた。

    ◇

 私が初任地の広島支局に着任して、しばらくして起きたのがこの事件だった。取材を積み重ねても、犯行の動機が分からない。凶器も明らかになっていない。逮捕から約1年半、公判開始から約1カ月半。検察側と弁護側の主張は食い違っている。16日の判決で、私の疑問点は解消されるだろうか。

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 ◆当日の足取り

 ◇検察側の主張

 午後5時15分ごろに池田さんと出会って食事へ。その後、池田さんのマンションへ

 ◇弁護側の主張

 池田さんと出会って、午後5時15分ごろにマンション室内へ。その後食事に行き、JR東広島駅で別れた

 ◆部屋で見つかった飯田被告のDNA型が検出された血液状のもの

 ◇検察側の主張

 殺人時に付着した。被告が言う「できもの」は、公判で言い出したことで虚偽弁解

 ◇弁護側の主張

 マンションに行った際、左耳の後ろにあるできものに触った左手でスイッチを触った可能性がある

 ◆JR東広島駅前駐車場の記録

 ◇検察側の主張

 記録によれば、午後5時16分~同24分まで被告の車は駅前駐車場にあった。ホテルまでは約36分かかるため、マンションへ寄る時間はない

 ◇弁護側の主張

 この記録は飯田被告の車の記録ではない。そもそも車は駐車場に入れていない。マンションには5~15分滞在したが、そこからホテルまでは時間的に間に合う

 ◆池田さんの胃の内容物の鑑定結果

 ◇検察側の主張

 池田さんは食事後30分~1時間後に死亡。竹原市の飲食店を出たのは午後7時半ごろ。店からマンションまでは車で約23分かかるので、池田さんと最後に会っていたのは飯田被告

 ◇弁護側の主張

 池田さんは男性の親族と会う前のストレスで消化が止まっていた可能性があり、その場合死亡時間も遅くなる

 ◆マンションの隣人らの証言

 ◇検察側の主張

 不審な物音を聞いた日や部屋番号はあいまいで、殺害時間の特定に影響はない

 ◇弁護側の主張

 隣室の住人は、午後8~9時の間に大きな物音などを聞いていない。午後10時ないし翌日午前0時半ごろに、真下の部屋の住人や隣室の住人が足音や茶わんなどが割れる音を聞いている

 ◆飯田被告のその後の行動

 ◇検察側の主張

 飯田被告は自らが経営するコンビニに、勤務予定時間から約2時間半遅れて現れた。飯田被告は店員に、あらかじめ自身が来なければ残るよう言っていた

 ◇弁護側の主張

 勤務開始は午前3時ごろと誤解していた

 ◆結論

 ◇検察側の主張

 飯田被告は池田さんが生前に会った最後の人物で、マンション部屋内に血液を残しており、事件後に犯人でなければ考えられない行動をとっている

 ◇弁護側の主張

 池田さんが生前に会った最後の人物は飯田被告と断定できない。マンション部屋内にあったのは血液とは断定できず、また、部屋に行ったことがあることを証明するだけに過ぎない

毎日新聞 2008年10月12日 地方版

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