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若年性認知症対策「まずは生活維持を」

 若年性認知症対策を検討するため東京都が10月16日に開いた会合では、「一家の働き手が働けなくなり、家族が経済的に困窮している」「若くして認知症になった人は精神的ショックを抱える」などの意見が出され、若年性認知症患者やその家族が直面している厳しい現実が浮き彫りとなった。また、自立支援医療費の交付について、「自治体によって対応が違う」との指摘もあった。

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 若年性認知症とは、65歳未満で発症する認知症のこと。65歳以上の認知症患者の人数の推計値が人口10万人当たり6700人とされる一方、若年性認知症患者は、はるかに少ない同24.5―33.5人と推計されている。しかし、若年性認知症対策は、厚生労働省の報告書で、今後の認知症対策の一つに挙げられており、来年度の予算概算要求では、若年性認知症対策総合推進事業として3億5000万円が計上されている。
 
 会合ではまず、都の担当者が若年性認知症の現状について、「診断や要介護認定などに時間がかかり、その間に認知症が進行してしまう」「若年性認知症についての情報が少なく、患者の家族らは利用できる制度について知るのが困難」「介護が長期にわたる場合があり、家族の負担が大きくなる」「認知症の発症や介護により、家計を支える働き手を失ってしまう」などと指摘。また、介護保険制度など現行の制度では支援対象から外れてしまうケースや、受け入れ可能なサービスが見つからないケースがあるとして、「高齢者とは異なる、若年性認知症に特有の課題に配慮した支援策の検討が必要」と述べた。
 また、都が今年2月下旬から3月にかけて、若年性認知症患者がいる47世帯に対して実施した「東京都若年性認知症生活実態調査」の結果を提示。患者の就労状況について、「働いていない」と回答した41世帯のうち31世帯が、認知症になる前は「仕事をしていた」と答えていることを指摘し、「やはり発症を機に退職する人が多い印象を受ける」と語った。

 若年性認知症患者への支援の在り方について、認知症介護研究・研修東京センター研究企画主幹の小野寺敦志氏は、「特に若年性認知症では、介護以前に、生活維持が切実な問題」と強調。東京都介護支援専門員研究協議会の末延法子理事も、「若年性認知症の夫を持つ人が、パートの掛け持ちでケアマネジャーとの相談どころではなかった」との実例を紹介、経済的支援の重要性を指摘した。
 東京都地域密着型サービス事業者連絡協議会の林田俊弘副代表は、「若年性認知症患者は『何で(自分が認知症に)』という思いが強い。じっくり話を聞き、こうした患者の思いに、早期に向き合うことが大切」と述べた。
 東京都や北海道で活動を展開する「若年認知症家族会・彩星の会」の干場功代表は、「東京都の精神保健福祉センターなどでは理解が進み、自立支援医療費の交付を断られるケースはほとんどないが、札幌市ではすべて否定される」と言い、自治体によって対応が違う現状の改善を訴えた。また、東京都医師会産業保健委員会委員で浅川クリニック院長の浅川雅晴氏は、受診時に病気が大幅に進行していたケースを紹介し、「早期受診の啓蒙(けいもう)活動が必要だ」と述べた。このほか、介護保険の枠組みで認知症の高齢者と同様に若年の認知症患者を受け入れても、「(若い人は)なじめないのではないか。ほかの方法を考えていかないといけないのではないか」という意見も出た。
 
 これに対し、翠会和光病院の斎藤正彦院長は、「少数の若年性認知症患者に限定したデイケアなどの介護サービスを整え、若年性認知症の患者を集めるのは現実的に不可能。むしろ、現行の介護保険サービスが若年性認知症患者も受け入れられるようにならないといけない」と指摘。また、若年性認知症患者の就労支援について、「今ある職場にできるだけ長く籍を置いて、能力がある限り職場で支えていくという就労維持支援などが現実的でうまくいくのではないか」と述べた。さらに、一部のケアマネジャーや行政の窓口担当者の制度に対する理解不足が行政サービスへのアクセスを妨げているとして、対応の必要性を指摘した。
 会合終了後、斎藤氏はキャリアブレインに対し、「まずは、今あるものをきちんと使えるようにし、それでも既存の制度では解決できない新しい壁に対しては、現場の声を聞き、対策を取ることが必要だ」と語った。


更新:2008/10/17 16:48   キャリアブレイン


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