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NO.86 オフィスのユニバーサルデザイン
─ 多様なワーカーをサポートし、企業価値を向上させる ─
  UP DATE : 08.10.15  仲田裕紀子/ユニバーサルデザイン編集部  


ミスターアベレージは今では少数派

ユニバーサルデザインは高齢者や障がいのある人のためのものだから、オフィスには必要ないと考える企業もまだまだ多い。でも、本当にそうだろうか。高度経済成長期に大多数を占めていた若くて健康な男性、いわゆるミスターアベレージは、いまやオフィスの中で半数以下にすぎない。15〜64歳のいわゆる労働力人口といわれる層は8291万4千人で、前年度に比べて70万3千人の減少。 65歳以上人口は2757万6千人で前年度に比べ81万9千人増加している(平成19年112月1日現在確定値・総務省 統計局)。

このように日本では、かつて経験したことのない少子高齢化が進んでおり、経済を支える労働力人口は今後も減り続けていくと予想されている。


多様性を経営に生かすダイバーシティやワークライフバランス

減少する労働力をカバーするために高齢者の定年延長や再雇用、外国人の受け入れ、女性のよりいっそうの活用、障がいのある人の雇用などが進められている。実際にオフィスの中を見回すとミスターアベレージに変わり、女性や年配の男性、外国人、障がいのある人や病弱な人など、多様なワーカーで構成されていることがわかる。そんな中でワーカーの多様性を尊重し、経営に生かすダイバーシティは重要な経営課題のひとつだ。またコンプライアンス経営が求められる中で、企業は、障がい者の法定雇用率を達成することや男女共同参画のための女性管理職の登用を積極的に進めていく必要がある。

さらに世界的な潮流として、仕事と個人の生活を充実させるための「ワークライフバランス」が政策として打ち出され、企業もこれに対応している。企業にとってダイバーシティやワークライフバランスの導入は、優秀なワーカーを確保し、できるだけ長く働いてもらうための方策でもある。

一方でICT(情報コミュニケーション)の活用や雇用形態の多様化で個人の働き方も大きく変わってきた。これまでのオフィスは情報を効率的に処理するミスターアベレージのためにつくられてきた。しかし、短期的な効率性だけではなく、事業継続や企業価値向上を実現するためのオフィスが求められている。


ユニバーサルデザインを実現するためのツールや手法

企業の経営方針や戦略によってオフィスの形態はさまざまだ。これがオフィスのユニバーサルデザインだという完成形はない。しかし、多様なワーカーを支え、個人や組織の力を最大限に発揮できるオフィスを実現するための計画・設計 / デザイン・運用には、ユニバーサルデザインが有効だといえる。推進するためには共通のガイドラインや評価システムも必要になる。日本ファシリティマネジメント推進協会(JFMA)の調査研究部会のひとつ「ユニバーサルデザイン研究部会」(以下JFMAUD研究部会)では、オフィスのUDに関する調査研究を行っている。

JFMAUD研究部会では2004年に「ユニバーサルデザインガイドライン」、2006年に「ユニバーサルデザイン総合評価手法(CASUDA)」、また設計プロセスにユニバーサルデザインを取り込むための「UDレビュー」を考案した。さらに今年は「オフィスへのユニバーサルデザイン導入事例」を紹介した報告書を発刊。ある外資系金融機関がダイバーシティを経営課題に掲げ、それを実現する一環としてオフィスをUDの視点から見直した事例が掲載されている。 【 写真 2〜3 】

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オフィスイメージ
【 1 】 アダプティブ・エンバイロメンツのオフィス

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