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こころとからだの相談室:骨粗鬆症治療について

 ◇ 質問

 50歳の時、卵巣のう腫で卵巣を全摘し、ヨガを20年ぐらい続けています。昨年5月、婦人科で踵の超音波検査をしたところ、骨密度55%、尿中NTX 96でした。血中のALPなど異常はありませんでしたが、「100歳の骨」と言われショックを受けました。以来、塩酸ラロキシフェンとビタミンDを飲んでいます。もともと腰痛、変形性脊椎症もあります。

 1年たった現在、骨密度は60%に上がっていますが、本で精査の必要性を知り、整形外科で腰椎と股関節の骨密度をDXAで測定したところ、腰椎の骨密度(BMD)は0.739g/cm2、股関節は0.687g/cm2、尿中NTX 52.8という値で、「今は骨粗鬆症ではない」と言われました。また、骨もスカスカではないとのことでした。

 薬で5%上がったとしても、それほど差があるものなのでしょうか? 薬に副作用はないとのことですが、飲む必要がなければ、胃もあまり丈夫ではないので服用したくありません。本には変形性脊椎症の場合、骨密度が高くなり、さらに、卵巣を摘出していると骨吸収が進むと書いてあるので、服用を続けたほうが良いのか迷っています。確かにNTXはだいぶ改善されていますが。どうしたらよいでしょうか?

(53歳、女性、身長:165cm、体重:41kg、既往症:卵巣のう腫で全摘出)

 ◇ 回答

「薬で5%骨密度が上がった」のは誤差の影響があり信頼性は低いと思います。踵の骨密度測定は骨粗鬆症であるか否かをおおよそふるい分けるものであり、検診にはよく使われますが、治療効果の判定には適しません。治療開始前に腰椎と股関節の骨密度を測定しておけばよかったと思います。それにしても52歳時の骨密度が(若年成人平均値の)55%とは、かなり低い骨密度と判断します。ただ、「100歳の骨」の表現は、比喩としては直感的でわかりやすいのですが、科学的には適切な表現ではなく「ショックを受ける」ことはありません。尿中NTXも著しい高値を示しており、急速に骨吸収(骨が溶けること)が進行している状態と考えられますので、塩酸ラロキシフェンとビタミンDの内服は適切だったと思います。1年後の尿中NTXが大きく改善したことからも適切だったことがうかがえます。

 治療開始1年後の腰椎の骨密度0.739からは、「骨量減少」と思われますが、変形性脊椎症があると骨密度が高めに表れやすく、背骨のX線写真の所見を併せると「骨粗鬆症」と判断される可能性があります。いずれにしても53歳でこの値は、同年齢の平均値に比べてもかなり低いと思われます。

 さて、今後の治療ですが、その前にいくつか気になることがあります。

 まず、身長と体重から計算したBMI(体格指数)が15.1とかなりの低体重(やせ)です。低体重は骨密度を低下させる大きな要因です。次に、治療前の尿中NTXが相当高いことです。骨代謝マーカーといわれるこの値が89.0を超えますと異常高値とされ、通常の閉経後骨粗鬆症以外の骨粗鬆症(続発性骨粗鬆症と言われます)も考える必要があります。

 低体重以外にも低骨密度になる要素はないでしょうか? 家族歴、食事と運動を含めた生活習慣、月経歴、過去および現在の病気などに問題はないでしょうか? これらを考慮に入れて、主治医とご相談のうえ、治療の継続か経過観察かを決めたらよいと思いますが、私は、ご質問の文面から判断しますと、もう少し加療を続けられることをお勧めします。

 塩酸ラロキシフェンとビタミンDは、他の骨粗鬆症治療薬に比べると飲みやすく、また副作用の少ない薬ではあります。服用半年ごとに血液や尿の検査をし、異常のないことを確認しながら服用を続けるとよいでしょう。

 なお、50歳に卵巣を全摘されましたが、そのときはすでに閉経していましたか? 閉経していれば、卵巣全摘は骨密度に大きな影響を与えません。もっとも、40歳代前半までに閉経したとすれば、早い閉経が骨密度に影響を与えた可能性は高いと思います。

回答者:赤澤憲治(赤澤クリニック院長)

2008年10月17日

 

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