次期衆院選を控える中での不祥事に、民主党は小沢一郎代表自らがスピード決着を図った。マルチ商法業者から講演料を受け取っていた前田雄吉衆院議員(比例東海、16日付で離党)。小沢氏を支持する政策グループ「一新会」事務局長も務めた若手議員に対し、小沢氏は自ら引導を渡した。体調が優れないなか、2日にわたり直接事情を聴き、異例の未明の記者会見で「次期衆院選不出馬」を本人に代わって公表。問題処理を小沢氏が一手に引き受けたことは、次期衆院選に向けた危機感の表れでもあった。【田中成之、渡辺創】
「前田君自身の決断だ」。不祥事発覚を受けた離党、愛知6区公認辞退、次期衆院選不出馬に関し、小沢氏は16日午前0時20分から党本部で開いた会見で繰り返し強調した。しかし当の前田氏はそのわずか50分前、次期衆院選について「まだ考えている」と態度を保留していた。実態は、決断を渋る本人を小沢氏が追い込む形に近かったといえる。
「おれに任せてくれ。近日中に決断する」。前田氏の問題が一斉に報道された14日夕、党本部で開かれた幹部会で小沢氏は宣言。同日別件で会った党幹部が「選挙への影響が大きい」と進言したのに対しても「自分で始末する」と強調していた。
選挙への悪影響を避けるための決断だけに、愛知6区の新たな公認候補選びも早く、県連が前犬山市長の石田芳弘氏(63)とする方向で最終調整を進めている。小沢氏は16日夕、党本部に県連代表の伴野豊衆院議員を呼び、「きちんと説明しないと現場が落ち着かない」と混乱回避に全力を注ぐよう指示した。
参院予算委員会では16日、前田氏がアドバイザーを務めたネットワークビジネス推進連盟と関連の深い議連に所属した民主党議員の名を、自民党議員が次々と挙げて追及した。小沢氏は「議連の解散を徹底するよう指示した」としたうえで「前田議員と他の人たちとは基本的に異なる」と強調。スピード決着には、問題が広がることを未然に防ぐ意味もあったとみられる。
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[14日]
17時ごろ 小沢一郎代表が党本部で会見。前田氏の講演料受け取りを「非常に不適切な行為」と批判
夜 小沢氏が東京都内の個人事務所で、前田氏から事情聴取
[15日]
15時30分 前田氏が議員会館の一室で記者団に事情説明
18時50分 小沢氏が党本部を出る際、「前田さんと会う予定は」と聞かれ「まだ」と答える
23時ごろ 議員会館の小沢氏の部屋で小沢氏が前田氏と会談
23時30分 前田氏が記者団に離党と公認返上の考えを表明。次期衆院選出馬については「まだ考えている」
[16日]
0時20分 小沢氏が党本部で緊急会見。前田氏の離党、公認返上に加え「次の総選挙には立候補しない」と明言
毎日新聞 2008年10月17日 東京朝刊