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社説:前田議員離党 「衆院選に不出馬」は当然だ

 民主党の前田雄吉衆院議員(比例東海)が、業務停止処分を受けたマルチ商法業者から講演料などを受け取っていた責任を取って離党し、次の衆院選に出馬しないことになった。

 本来なら議員辞職してもおかしくない話だが、民主党は衆院解散・総選挙が近いとみて事実上の議員辞職とみなしているのだろう。いずれにしても厳しい対応は当然のことだった。

 この問題は、前田議員が代表を務める政治団体や党支部が05~06年に化粧品や健康食品などを扱う東京都内のマルチ商法業者から計80万円の講演料を受け取っていたというものだ。この業者は07年11月、「絶対にもうかる」などと誘っていたとして、経済産業省から3カ月間の業務停止命令処分を受けている。

 さらに重大なのは、前田議員が04年3月の衆院予算委員会で、マルチ商法業界に対する取り締まりに関して「まじめに汗している皆さんがばかを見ないような警察行政を行っていただきたい」と業界を擁護する質問をしていた点だ。

 国会の本会議や所属委員会で質問し、議決に加わるのは国会議員の職務権限である。例えば86年に摘発された「撚糸(ねんし)工連汚職事件」では、当時の野党議員が関係委員会で業界に有利な質問をするよう業界団体から請託を受け、200万円を受け取ったとして受託収賄罪に問われ、有罪が確定している。

 こうした基本的な知識もなかったのだろうか。前田議員は、このほか業界の政治団体からも05年に50万円の献金を受けていた。「質問では業界に厳しい言葉も述べており、擁護をしているわけではない」と反論しているが、政治信条から業界の育成が必要と考えていたのなら、むしろ講演料や献金など受け取らず、国会で質問すべきだろう。

 これでは業界から金と票を得て、業界の権益擁護に走るあしき族議員そのものの行為ではないか。「民主党よ、お前もか」と失望した国民は多いはずだ。

 前田議員は民主党内では小沢一郎代表を支持するグループの一員だった。小沢氏自らが今回、事情聴取に乗り出したのは、このままでは次期衆院選に打撃となると考えたからだろう。

 しかし、これで一件落着となるだろうか。党内には前田議員以外にもマルチ商法業界の団体からパーティー券を購入してもらっていた議員がいるとも指摘されている。これについてもきちんとした説明が必要だ。

 16日には、自民党の野田聖子消費者行政担当相も96年にマルチ商法業者を擁護する国会質問をしていたことも判明した。国会での質問は何のためにするのか。政界では再び忘れ去られたようになっている政治家とカネの問題にどう決着をつけるのか。与野党の泥仕合に終わらせてはならない。

毎日新聞 2008年10月17日 東京朝刊

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