現在位置:
  1. asahi.com
  2. 社説

社説

アサヒ・コム プレミアムなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

給油法案審議―「アフガン」を広い視野で

 「テロとの戦い」で日本は何ができるか。何をすべきか。インド洋での海上自衛隊の給油支援活動継続をめぐる国会審議がきょうから始まる。

 思い起こせば、アフガニスタンへの攻撃が始まったのはちょうど7年前、9・11同時テロから間もない01年10月のことだった。ひと月ほどで戦闘はほぼ決着し、カルザイ大統領の政権が誕生した。だが、その後の展開は国際社会の期待とはかけ離れたものだった。

 ビンラディン容疑者の行方は今も分からない。タリバーン勢力が盛り返し、国際治安支援部隊に参加する外国軍は守勢に立たされている。カルザイ政権の支配が及ぶのは全土の3割にも満たないといわれる。民間と軍の死傷者は急増し、日本人も犠牲になった。

 いまや米政府内にも、このままでは手に負えなくなるといった悲観論が渦巻いている。

 なぜ、こんなことになったのか、原因はいくつもあろう。米軍がイラク戦争で力をそがれ、手薄になった。ケシ栽培や麻薬密輸を根絶できず、タリバーン復活の資金源となった。政権の腐敗体質。米軍の空爆で民間人が多数巻き添えになり、民心が離反した……。

 ブッシュ政権は軍事力増強の方針に転じ、各国にも増派を要請している。だが、反応ははかばかしくない。治安改善のためにはアフガン国軍を強化するしかないとして、部隊を増派しない国や、部隊を派遣しない国にその費用の負担を求める案も浮上している。

 結局のところ「軍事力でタリバーンに勝利することはできない」(アフガン駐留の英軍司令官)というのが、国際社会が7年にしてたどりついた結論ではあるまいか。

 では、どうするか。タリバーン穏健派との対話を探り、和平を結ぶことで国際テロ組織アルカイダを孤立させることだ。当初、対話に反対だったカルザイ大統領や米政府も、ようやくこの可能性に着目しだした。

 同時に、復興支援を厚くし、平和の配当を早くアフガンの人々に届けることだ。タリバーンの中心勢力である多数派民族パシュトゥン人をもっと政権に取り込む必要もあるだろう。それがひいては隣国パキスタンの政情を落ち着かせることにもつながる。

 政治、民生支援、軍事を合わせて、アフガンをめぐる国際社会の取り組みを仕切り直すべきなのだ。米国に新政権が誕生してからでないと本格的な検討は難しいかもしれない。それまでの間、パキスタンへの越境攻撃などで状況を複雑にするのは控えるべきだ。

 アフガン再建と国際テロの根絶に日本はどう貢献すればいいのか、この時期に国会で話し合うのは意味のあることだ。給油支援を続けるかどうかだけでなく、民主党の対案も俎上(そじょう)にのせて視野の広い論争をのぞみたい。

政治とカネ―企業・団体頼みいつまで

 民主党の前田雄吉衆院議員が、離党して次の衆院選に立候補しないと表明した。マルチ商法業者から多額の金銭を受け取り、業界を擁護する国会質問をしていたことで「党に影響を与えないため身を引いた」という。

 近づく総選挙で党が被るダメージを最小限に食い止めるには、早めにけじめをつける必要があると判断したに違いない。

 前田氏が代表を務める二つの政治団体は、04年から07年にかけて、業務停止命令を受けた会社を含む多数の業者らから、あわせて1千万円以上の講演料と献金を受け取っていた。

 商品の購入者が販売員にもなって購入者を増やすマルチ商法には、全国の消費生活センターに毎年2万件あまりの苦情が寄せられる。前田氏は衆院予算委員会の分科会で「キャッチセールスなどと一緒にされて(業界の)みなさんは非常に迷惑している」といった質問を繰り返していた。

 「国会質問とカネ」といえば、参院での代表質問の見返りに現金を受け取り、受託収賄で有罪が確定した村上正邦元労相のような事例があった。

 それにしても政治とカネ、とりわけ企業・団体献金をめぐる不明朗なできごとは、いつまでも後を絶たない。

 発足したばかりの麻生内閣でも、談合事件で公正取引委員会から排除勧告を受けた企業などから閣僚への献金が相次いで発覚した。河村官房長官は、自身が支部長の自民党支部が、排除勧告を受けた法人などから問題発覚後に計410万円の献金を受けていた。

 似たようなケースは、中川財務兼金融担当相や小渕少子化担当相らにもあった。麻生首相の党支部も、社長が汚職事件で今年起訴された医療機器販売会社から献金をもらっていた。

 マルチ商法がらみでは、きのうの参院予算委員会で野田消費者行政担当相が、これを新産業として認知すべきだとの質問を12年前にしていたことを明らかにし、業者からの献金があったかどうか調べて報告すると答弁した。

 河村長官らは、違法性はなくとも道義的な見地から返金する意向を示した。あわてて返さねばならないようなお金を受けること自体、企業との関係が極めてルーズになっている証拠だ。自民党はこうした企業からの献金には党としてルールをつくるというが、法で規制するのが筋だろう。

 今年も共産党を除く各政党に総額319億円の政党交付金が渡される。この制度の導入にあたっては、当時の細川政権与党も野党だった自民党も、将来は企業・団体献金は縮小廃止する方向で議論していたはずなのに、すっかり忘れてしまったようだ。

 企業・団体頼みをいつまで続けるのか。各党がどんな態度を示すのか、総選挙でも目を凝らしたい。

PR情報