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2008年7月 5日

リニア中央新幹線を諏訪へ

 JR東海、自己負担でリニア新幹線整備へ 東京〜名古屋(産経新聞)

 昨年暮れのニュースだが、JR東海は東京と名古屋を結ぶリニア中央新幹線について、建設費5兆1000億円を全額自己負担して建設を目指すと発表した。この建設ルートについて、東京と名古屋をできるだけ真っ直ぐ結ぶために、南アルプスをトンネルで抜けるという案が示されたことで様々な議論を呼んでいる。


 リニアBルート、諏訪の駅誘致で新組織立ち上げへ(信濃毎日新聞)

 このニュースにもあるように、諏訪地域への駅誘致がとくに取沙汰されている。上記の建設費5兆1000億円は、名古屋と東京の間の駅の建設費を含まず、それは地元での負担とされている。それでは、諏訪に駅を誘致した場合いったいいくらかかるのか。そもそもJR東海案は、建設費を押える上からも最短ルートを指向しているのだから、諏訪へ迂回させることによって派生する費用も地元負担と考えられる。簡単ながら試算してみる。

 まず、諏訪回るとどの位距離が長くなるか。地図の上に大雑把ながら線を引いてみる(My Map、JR東海が試掘している場所は、A氏の旅行生活大鹿村早川町より)。Google Map上での計測で、東京名古屋間を真っ直ぐ結んだ場合が約275km、諏訪回りの場合が約325km、その差約50kmとなった。この差と、諏訪と飯田の駅建設費が地元負担となる。

 上記5兆1000億円は事業総額なので、275km(あるいは、既に完成している実験線約18kmを除いた257km)の建設費以外、車両費をはじめとする諸経費も含んでいる。リニア中央エクスプレス建設促進期成同盟会のHPに、東京大阪間建設の際の車両費として6000〜7000億円という数字のが載っている。東京名古屋間だとこれよりも安くすむので、仮に5000億円としてみる。残りの4兆6000億円を257kmで割ると、約180億円となる。4兆6000億円には、東京と名古屋の駅建設費が含まれているので、1kmあたりの建設費は、これよりも安いことになる。

 山梨にある実験線を24.4km延長するという計画がある。この事業費総額が3550億円。これにも建設費以外の数字が含まれている。3550億円を24.4kmで割ると約145億円だから、少し安く見積もって1kmあたりの建設費を140億円としておく。

 駅建設費はどうか。中止となった東海道新幹線栗東駅の地元負担額が約240億円(産経新聞)、上越新幹線の本庄早稲田駅が約115億円(用地費除く、本庄市)。諏訪と飯田の2駅を作って200億円よりも安いことはなさそうだ。

 以上から、リニア中央新幹線に諏訪の駅を誘致するのにかかる地元負担は、線路建設に140億円で50km、7000億円、駅2つで200億円。かなり大雑把な計算ではあるが、合計で7200億円以上ということになる。


 飯田市長、リニア駅実現なら「県にも負担を」(信濃毎日新聞)

 長野新幹線の建設時に長野県は1000億円余を負担したとのことだが、リニア中央新幹線を諏訪に誘致するための費用はそれを遥かに上回る。リニア中央新幹線が公共交通施設であるとはいえ、JR東海が自己資金で造ると言っているのだから、この地元負担額を大幅に減額することは厳しいと思われる。あとは、国、県、市町村、あるいは地元企業などがどう出し合うかという話し合いが残る程度。

 現在の東海道新幹線と、東京と諏訪を結ぶ特急あずさ号とでは、輸送力に10倍以上の差がある。東京名古屋(あるいは大阪)間の輸送需要はとても大きく、その意味でもリニア中央新幹線が東京と名古屋を結ぶことに徹して、中間を素通りすることには大きな理がある。それを多少なりとも曲げて長野県に恩恵をもたらすための経費は極めて巨額となる。

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