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明日は卒業式 『マリア様がみてる 卒業前小景』
「読書の秋」というが、やはりこの時期の読書は楽しく、気がつけばかなりの冊数を読んでいる。
しかし書評が読書にまったく追いつかない。困ったな。
マリア様がみてる 卒業前小景 (今野 緒雪)

思えば卒業式前日というのは不思議な時間だ。先輩と過ごしてきた時間と、別れの時間の境界にあたる。
卒業生にとっては学校を去るにあたっての思い残しがあるものだし、残される後輩は敬愛する先輩に最後に何かしてあげたいという気持ちがある。新しい舞台への旅立ちは祝うべきだし、笑顔で見送るべきだとわかっていても、覚悟を決めるには少し早い。
祥子さまと祐巳、新聞部の築山三奈子、写真部の蔦子、テニス部の桂。作者は彼女たちの微妙に心揺れる1日を優しい視線で、丁寧に描いている。
築山三奈子と祥子さま、令のラストエピソードでは、薔薇のお二人の心配りが光った。惜しいのは、作者のいつもの蛇足っぷり(60ページ最後の2行)で、「言わぬが花」はやはり言わぬが花だろう。
個人的にお気に入りのエピソードは、蔦子と写真部の先輩達の勝負。指名された後輩が先輩達の集合写真を撮るという伝統が写真部にはあった。無論、厄介なお題もある。
僕の歳になると、1歳違いなど何の意味もないに等しいが、高校生の1つ違いは本当に「年の功」として効いてくる。先輩の知恵といたずら心に後輩は翻弄されがちである。1つ程度の年の差が、きれいに、敬愛を持って描ける舞台は、もはや学校ぐらいかもしれない。
こんなふうに先輩と後輩の数だけ、それぞれの別れがある。しかしメインはもちろん祐巳と祥子さまの二人だ。
『マリア様がみてる』という作品は、祐巳と祥子さまの出会いから始まった。多くの読者は、祥子さまの卒業こそがシリーズのエンディングだと予想していたのではないだろうか。今となっては群像劇的な趣も帯びており、卒業後も物語は続くのかもしれないが、もともとは二人の物語だった。
去る側も見送る側も、すでに心の整理を終えているかのように落ち着いて見える。
いかにも祥子さまらしい態度だし、祐巳も最近は落ち着いた立ち居振る舞いを身につけつつある。どっしりした貫禄と言ってもいい。薔薇の館を訪れて、お姉様たちのばか、と飛び出してきた祥子さまに押しつぶされた1年半前の祐巳とは本当に見違えるようだ。
34巻もの膨大な時間、1年半は二人にとって、読者にとって決して短い時間ではない。
時は流れ、ページをめくり、
最後の数ページにたどり着く。
しかし書評が読書にまったく追いつかない。困ったな。
マリア様がみてる 卒業前小景 (今野 緒雪)
ただ、会いたいだけじゃない。会って、何かするべきことが、二人にはある気がした。明日は卒業式。
思えば卒業式前日というのは不思議な時間だ。先輩と過ごしてきた時間と、別れの時間の境界にあたる。
卒業生にとっては学校を去るにあたっての思い残しがあるものだし、残される後輩は敬愛する先輩に最後に何かしてあげたいという気持ちがある。新しい舞台への旅立ちは祝うべきだし、笑顔で見送るべきだとわかっていても、覚悟を決めるには少し早い。
祥子さまと祐巳、新聞部の築山三奈子、写真部の蔦子、テニス部の桂。作者は彼女たちの微妙に心揺れる1日を優しい視線で、丁寧に描いている。
築山三奈子と祥子さま、令のラストエピソードでは、薔薇のお二人の心配りが光った。惜しいのは、作者のいつもの蛇足っぷり(60ページ最後の2行)で、「言わぬが花」はやはり言わぬが花だろう。
個人的にお気に入りのエピソードは、蔦子と写真部の先輩達の勝負。指名された後輩が先輩達の集合写真を撮るという伝統が写真部にはあった。無論、厄介なお題もある。
ちなみに去年は、全員が心から笑った瞬間を撮るように命じられたらしい。撮影者はとっさに小話をいくつか披露したが、ちらほらとこぼれる笑いは百パーセントに達することはなかった。三十分、四十分と時間ばかり経っていく。それでも先輩たちは笑ってくれない。ついに彼女は泣いてしまった。その瞬間、三年生たちは一斉に笑った、――という。実力もふるまいも浮いていた蔦子は、先輩達にとっても扱いにくい後輩であったに違いない。こうして最後に呼び出したからには……。先輩達の思惑と蔦子の予想。とても短い時間に、緊張もあり、展開もあり、蔦子と先輩達の関係も上手くまとまっている。
僕の歳になると、1歳違いなど何の意味もないに等しいが、高校生の1つ違いは本当に「年の功」として効いてくる。先輩の知恵といたずら心に後輩は翻弄されがちである。1つ程度の年の差が、きれいに、敬愛を持って描ける舞台は、もはや学校ぐらいかもしれない。
こんなふうに先輩と後輩の数だけ、それぞれの別れがある。しかしメインはもちろん祐巳と祥子さまの二人だ。
『マリア様がみてる』という作品は、祐巳と祥子さまの出会いから始まった。多くの読者は、祥子さまの卒業こそがシリーズのエンディングだと予想していたのではないだろうか。今となっては群像劇的な趣も帯びており、卒業後も物語は続くのかもしれないが、もともとは二人の物語だった。
去る側も見送る側も、すでに心の整理を終えているかのように落ち着いて見える。
いかにも祥子さまらしい態度だし、祐巳も最近は落ち着いた立ち居振る舞いを身につけつつある。どっしりした貫禄と言ってもいい。薔薇の館を訪れて、お姉様たちのばか、と飛び出してきた祥子さまに押しつぶされた1年半前の祐巳とは本当に見違えるようだ。
34巻もの膨大な時間、1年半は二人にとって、読者にとって決して短い時間ではない。
時は流れ、ページをめくり、
最後の数ページにたどり着く。
コメント
>どすこい さん
まー、祐巳は歴代の赤薔薇とくらべると、赤薔薇感(真面目さ、優秀さ、気高さ、気品、・・・・)が不足してる感じはしますね。祐巳の卒業までは続くのかな? 1年半で34巻だから、あと1年もあれば、50巻ぐらいは達成できそうですね。
まー、祐巳は歴代の赤薔薇とくらべると、赤薔薇感(真面目さ、優秀さ、気高さ、気品、・・・・)が不足してる感じはしますね。祐巳の卒業までは続くのかな? 1年半で34巻だから、あと1年もあれば、50巻ぐらいは達成できそうですね。
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祐巳と祥子の学校での姉妹という関係をずっと見ていたいが、同時にそれ以降の関係も見てみたい。社会人なら特に制限時間はありませんが、学生には3年間という制限がありますからね。聖と志摩子のような凡人を超越した関係、もしくは令と由乃のような超幼馴染ならともかく、祐巳と祥子の関係で”同じ空間にいない状況”になるとどんな心境の変化が訪れるのやら。
今後の展開にも期待ですね。はたして祐巳は、最強の凡人として歴代に名を連ねる紅薔薇に輝くのか。まあ、こちらは既になりつつありますが。
それにしても、34巻もでていたのですか・・・。
買ったその日に1〜2時間で読んでいたので、そこまで出ていた事に気が付きませんでしたね。軽い気持ちで読んでいましたが、実はかなりの長編であったと(笑)。
各巻の題名に1巻、2巻と付かずにサブタイトルのみだったのも、実際の冊数を感じさせなかった要因ですかね。