◎輪島の鮮魚直接取引 漁業経営安定化の一歩に
大手スーパー、イオンが石川県漁協と直接取引を始め、第一弾として輪島港で水揚げさ
れる鮮魚を一括購入することになった。市場を通さず仕入れることで、小売側は流通コスト削減や直送による鮮度向上が期待でき、漁業者側も取り分が増える利点がある。県漁協では南浦支所でも愛知県の卸売業者とハタハタの直接取引を計画しており、こうした流れが拡大すれば燃料高騰の苦境に立つ漁業経営の安定化につながることになる。
イオンは今年八月から島根県のJFしまねと直接取引を始め、県漁協は全国二例目とな
る。今回は小売からの提案とはいえ、漁業者側も水揚げにとどまらず、流通や販売段階にもっと積極的にかかわってよいはずだ。流通の中抜きは仲買人には抵抗感もあろうが、水産業界全体で魚価の在り方を考えるきっかけにしたい。
イオンと県漁協の直接取引は毎月十九日に輪島港などで水揚げされた鮮魚を漁協が買い
受け、一括してイオンに渡す。イオンは毎月二十日の「お客さま感謝デー」に合わせ、中部エリアの直営店で販売する。初回の今月十九日には二・五トンの漁獲量を見込み、今後、買い取り支所の拡大を検討する。
魚は競りで価格が決まるため、燃料費上昇分の価格転嫁が難しい。仲買人らが介在する
流通システムが定着し、小売価格に占める受け取り額は農家の平均44%に対し、漁業者は24%にすぎない。これは漁業が抱える構造的な問題といえる。
燃料高騰に伴い全国漁協連合会は七月に一斉休漁に踏み切り、国に上昇分の補てんを求
めてきた。出漁するだけで赤字になるほどの窮状は分かるが、こんな時こそ知恵を絞り、高コスト体質の改善へ踏み出したい。直接取引のように小売とじかにつながる流通システムは石川の鮮魚のブランド価値を高めるうえでも有効だろう。
直接取引は小売側にとっては水揚げ高が当日まで分からず、同じ規格や品質がそろいに
くいリスクも伴うことになるが、今回は漁業特有の不安定要因を承知で引き取ることになる。小売業界にもそうした意識の変化が広がることを期待したい。
◎東証再び大暴落 市場は内儒活性化を催促
東証の日経平均株価が再び大暴落した。世界同時株安の市況とはいえ、下げ幅一〇〇〇
円超、11・4%もの下落率はブラックマンデーに次ぐ過去二番目で、米国市場の下げ幅を五割近く上回っている。世界的な金融危機がひとまず落ち着きを見せるなか、株価は次に実体経済の悪化を織り込みにきているのだろう。
折しも総合経済対策を柱とする補正予算が成立した日である。市場はこれで満足せず、
追加の景気対策を声高に催促し始めたと見るべきだ。世界経済が縮小に向かうなか、内需を活性化させる対策がより重要になる。企業や個人の消費を促す施策を過不足無く盛り込み、景気を下支えしてほしい。
株価の再暴落は、米国が金融機関への資本注入を決め、市場に安心感が広がった直後に
起きた。金融危機の瀬戸際を脱したとはいえ、実体経済の悪化を示すサインが消えたわけではない。景気悪化の度合いがまだよく分からぬために、株価はどこまで織り込んでよいのか分からず、不安定な動きを続けているのだろう。
北陸の景気も停滞している。日銀金沢支店長がゼロ成長の判断を示したのは、六年三カ
月ぶりである。外需の弱さが懸念材料となり、企業、個人の消費マインドも大きく冷え込んだ。北陸の上場企業は軒並み株価が急落し、好業績のコマツすらストップ安まで売られた。不況が長期化するとの見方が強まれば、日経平均株価の下落はまだ続く可能性がある。
欧米の金融機関が国からの資本注入を受け、破たんを回避している現状では、世界景気
の低迷は避けられない。輸出に多くを期待できぬ以上、日本は内需主導で不況を乗り切る必要がある。
そのためには事業投資や研究開発を後押しする投資減税や住宅投資減税、一九九九年に
実施した「地域振興券」のように、個人消費を直接刺激する施策が必要だ。企業交際費を以前のように損金処理しやすくし、消費拡大を促すのも良いだろう。健常な企業が引きこもってしまったり、個人が必要以上に倹約してしまうと、景気はますます悪くなる。