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「海の博物館」へ新たな船出

2008年10月15日

写真

牛島龍介さんの肖像写真や航海に使われたサナトス号の模型などの展示品

 博多湾内に浮かぶ能古島にある能古博物館が、開館20年目を迎えたのを機に、「海の博物館」として新たな情報発信を始めた。第1弾として特別企画展「能古島発『博多湾物語』〜蒙古襲来からサザエさんまで」を開催中だ。展示室も改装され、博多湾を隔てて福岡タワーなどの眺望が楽しめる「海の見える丘博物館」(愛称)に変身した。

 能古博物館は財団法人亀陽文庫が運営している。同文庫は、江戸時代の福岡藩の儒学者、亀井南冥(なん・めい)の研究を続け、南冥一門に関する資料で知られる。「博多湾といえば、埋め立てなど開発ばかりが連想されがち。市民の目線で博多湾の史実に目を向けてみました」と同文庫の西牟田耕治常務理事(71)は話す。

 特別展の柱の一つは、70年に「史上初、ヨットで太平洋単独往復航海」に成功した牛島龍介さん(62)=兵庫県尼崎市=を取り上げた展示だ。牛島さんは現在、アパレル産業の社長として活躍中だが、若き日の偉業を記憶する福岡市民は少ない。県立筑紫丘高出身の牛島さんは、博多湾に浮かぶヨットにあこがれ、単独航海の夢を育てたという。

 展示室には、航海日誌を初公開したほか、航海中の写真など写真約60点を展示。実際の航海に使われた海図、船の霧笛信号なども並んでいる。

 江戸時代、能古島などでは、「筑前五ケ浦廻船」という船団を組み、江戸や大阪などと藩米や海産物などの物流を担っていた史実も取り上げた。全盛時は50余隻もの千石船が博多湾周辺に浮かび、「能古島の永い歴史の中で最も雄大で輝きに満ちた」(能古小学校百年誌)とされる。

 戦後の博多港は中国大陸、朝鮮半島からの引き揚げ者139万人を受け入れ、国内最大の引き揚げ港だった。また戦時中に朝鮮半島から徴用、強制連行された約50万人の人々が博多港から帰国した。「中国引揚げ漫画家の会」の協力で、8月に急逝した赤塚不二夫さんや森田拳次さんらが「引き揚げ」の記憶を描いた作品が展示されている。

 漫画「サザエさん」の作者の故長谷川町子さんはかつて、博多湾を望む西新町に疎開した。執筆中の長谷川さんのポートレートなども展示している。

 特別展は11月30日まで。開館は金、土、日祝日。入館料は400円(高校生以下無料)。問い合わせは同博物館(092・883・2887)へ。

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