先日、岡山県南の大学で授業を聴講した。今春定年退職した先輩記者が受け持つマスコミュニケーション論の講義。「新聞は編集者が記事の扱いの大きさ、量で価値判断を示す。そこが電子情報と違うところ」「何か起きてもそれだけでは単なる事象にすぎない。マスコミが報道し、読者や視聴者の元に届いて初めてニュースになる」…。自分の仕事の意味や役割を再認識させられた。
彼が強調したのが「編集力」の重要性だ。膨大な情報を取捨選択し、読者に必要なニュースを分かりやすく提示する。ニュース編集部の一番肝心な仕事だが、これが実に難しい。
新聞社には通信社からひっきりなしに情報が飛び込んでくる。日航機墜落事故を扱った映画「クライマーズハイ」を見た人はお気付きだろうが、一面トップで扱うような重大ニュースの速報は「キンコン」というチャイムの音とともに告げられる。「何が起きた?」編集局内に緊張が走る。紙面作りを一から考え直さざるを得ない上、ものによってはとてつもない量の記事が配信される。
それが先週は連日鳴った。ノーベル物理学・化学賞の日本人受賞。記事量は膨大、しかも時間とともに次々差し替えられ、必死にさばいた。翌日他紙を読み比べて、まだ工夫の余地があったのではと自問した。
昨日から始まった新聞週間の標語は「新聞で社会がわかる自分がかわる」。読者に社会や地域の動きをよりよく分かってもらうために、われわれも意識を変え、編集力を磨いていかねばならないと思う。
(ニュース編集部・高坂博士)