【レポート】劇的3時間SHOW・藤村忠寿(水曜どうでしょう)

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10人のコンテンツプロフェッショナルが語る「劇的3時間SHOW 2008」の7日目に参加してきました。

コンテンツプロフェッショナルが一日1名ずつ登場。それぞれが3時間を自由に構成し、自身の成功につながった技術や経験、コンテンツ観などを語ります。

7日目は、「水曜どうでしょう」でおなじみ、北海道テレビ ディレクター・藤村忠寿さん。豪華10人のコンテンツプロフェッショナルのなかで、一番最初に満席になったセッションです。ほぼ秒殺でしたね・・・

私自身、水曜どうでしょうは好きですが、最近はごぶさたで、ここ数年はオフィシャルサイトにもアクセスしていませんでした。そんな自分がこのセッションに応募した理由は単純で、藤村忠寿という人物がテレビについてどう思っているのか、モノづくりについてどう思っているのかを知りたかったからです。

以下、セッション中メモをした内容です(会話の中でのフレーズの抜粋ですので、細かいニュアンスはうまく伝えられないかもしれません)。

テレビが面白くないと言われているけれど・・・
  • テレビを「友達」に置き換えてみる。友達って呼べるテレビ番組はあるか?
なぜ、こんなふうになったのか?
  • 「視聴率」のせい。スポンサー企業に対する指標・尺度として登場した。
  • でも、水曜どうでしょうをつくった理由は「視聴率をとるため」。
  • 視聴者に指示されているか?と、「視聴率」は異なる。目標がいつのまにか「視聴率」になっている。
  • ディスニーランドは、アトラクションの世界観に対して企業がスポンサーとして投資をしている。テレビ番組もそうあるべき。良質な番組に投資をする。
  • インターネットが普及したから・・・は、テレビマンのいいわけ。
  • 水曜どうでしょうは視聴率20%を超えたことがない。でも、これだけ支持されている。
何に力を入れていたか?
  • 自分たちの仕事をする環境を整える。つくる環境、まわりの環境を変えていくことが大事。
  • 企画、アイデアがあるだけではなく、それをカタチにできないとダメ。つくる機会(いわゆる環境)をどれだけつくれるか。
  • 目的が「面白いテレビをつくる」であれば、ローカルでも全国でも、つくり方は変わるはずがない。ビジネスモデルはあとからついてくる。
  • どうでしょうは、テンポ、リズム、間。テンポが気持ちいいと見れちゃう。テンポをはっきりとつかむ。
東京のテレビ局、ローカル局
  • キー局は大きくなりすぎた。あれだけの建物・人だと、維持するだけでも大変。
  • 北海道らしく、関西らしく、と言うと視点が狭くなる。北海道という環境の違いを生かす。自分たちの環境で何が出来るか。
  • マスコミがコンプライアンスと言った瞬間にジャーナリズムを捨てている。法律を変える、異議を唱えるのはマスコミ。
仕事、モノづくりについて
  • 「自分にふさわしい仕事が見つからない」というけれど、お前のために仕事があるわけではない。仕事とは、社会が要求しているもの。社会に対して貢献するもの。
  • パクるという精神はモノをつくるうえで大事。自分の中でそしゃくしてアウトプットする。
  • モノをつくるとは、人との付き合いであり、伝えたいという気持ち。100万人を喜ばせるのではなく、まず隣の人、身近な人、あんたを喜ばせたい!その視点が重要。

セッション中に登場した「ぱんじゅう」と「カメラ」の話が、「大きくなりすぎた」という点と「モノづくり」について、分かりやすく説明していると思います。

小樽名物ぱんじゅうについて、とあるぱんじゅう屋に入ると「いまは置いてないから、15分後にまた来てくれ」と言われたそうです。店を出て、たまたま帰りに通りかかったので再び入ると、ちょうど出来上がっていて、食べてみるとそれが絶品だった。ただお土産は扱っていないそうで、「あんこが一番おいしい状態で提供したいからお土産は扱っていない」と言われたそうです。ひとつ75円ほどのぱんじゅうだけでは儲からないかもしれないが「地元の人に一番おいしい状態で食べさせたい」という想いがこめられている。

一方、昔は露出やシャッタースピードなど、調整が大変だったカメラ。本当に好きな人だけ市場であったが、オートフォーカスという機能が登場すると爆発的に市場が拡大した。そうすると業界もその市場を手放せなくなり、主役であったカメラ好きな人たちが、ないがしろにされつつある。

こうして見ると、えらいカタいセッションのように思えますが、藤村さんはビールを飲みながら、たばこを吸いながら話しておりました。会場も爆笑の連発でした。ゲストとして嬉野雅道さんも登場しましたよ。
セッション中では「環境」という言葉を多く話していました。それだけモノをつくっていくうえで、生かしていくものも「環境」であるし、つくりやすくするもの「環境」なんだなぁと思いました。
最後、藤村さんが「テレビがつまらない」と言っても、なんだかんだで見てしまう。面白い番組だってある。今までは職場の環境を整えてきたが、これからは日本全体のテレビをつくる環境を整える、テレビをつくる環境を変えていきたいとおっしゃっていました。

私自身は、それほどテレビがつまらないとは思っていないのですが、確かに見る時間も減ったし、テレビをつけている時間も減っています。たしかに視聴率至上主義的な風土は気になりますし、ゴールデンタイムでは似たような番組が多いのもわかります。
このような状況を、藤村さんが、そして同じことを感じているテレビマンが、少しずつ業界を変えていっていくことに期待をしています。

私はインターネット上でサービスを提供している立場ですが、テレビと同じ道をたどっている気がします。ページビュー至上主義になりつつあるこの業界の中でも、「隣のやつに面白いと思ってもらいたい!」という気持ちで、コンテンツをつくっていきたいと思います。

2008年10月16日追記

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こんばんは。
水曜どうでしょうのファンでDVDも見ています。
ディレクターが声で登場するなんて、異色で面白くて、藤村さんには興味を持っていました。
私もナマでこのお話聴きたかったなあ。
確かに夜中やってたバラエティがそのままゴールデンじゃ絶対終わってしまいます。
だから私は勝手に夜中→ゴールデンになる番組は、意図的に終わりにしたいがためにわざとゴールデンにいかせるのかすら思ってるくらいです。(笑)

いいなぁ~…。会場にいらっしゃったんですね…。
私は応募すら出来ず涙を呑んだのですが。
会場に行けなかったのは残念ですが、はやしさんの丁寧な
メモのおかげで雰囲気は良く伝わってきましたよ。

あ、ひとつだけ突っ込みを入れさせて頂ければ、
「水曜どうでしょうは視聴率20%を超えたことがない。でも、これだけ指示されている。」
の「指示」は、「支持」で受け取ってよいですよね?
これなら合点が…。

無用な突っ込み、失礼しました。

藤やん変ってないな・・・
それが嬉しいよ

はやしだいすけ : 2008年10月17日 00:11

>どんこさん
はじめまして。
「意図的に終わりにしたいがためにわざとゴールデンにいかせる」
↑なるほど、言われてみるとそうかもしれません(笑)
いい加減、テレビ業界も気づけばいいと思うんですが。

>KTX001さん
雰囲気伝わりましたか?
・・・そう言っていただけると、光栄です。
誤字への突っ込みありがとうございます。
訂正させていただきましたm(_ _)m

>くんさん
藤村さんのテレビやモノづくりに対する姿勢って、
変わっていないんですね。すごいなぁ〜
いつもテレビの奥でゲラッゲラ笑っている「藤やん」しか知らなかったので、
自分にとって新鮮で勉強になる講演でした。

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プロフィール

はやしだいすけ

旅行サイトを運営する会社で働くWebデザイナー。
デザイン、コーディングだけではなく、プロデューサーみたいなことまで、幅広くやっています。

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