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臨床研修制度で医学部生と指導医の意識調査を―舛添厚労相

 厚生労働省と文部科学省は10月16日、「臨床研修制度のあり方等に関する検討会」(座長=高久史麿・自治医科大学長)を開いた。医師不足を招いた一因とされる臨床研修制度を見直すためのもので、今回で2回目。前半は3人の有識者からヒアリングし、後半は全出席者で意見交換した。会議の最後に、舛添要一厚生労働相は、現場の医学部生と指導医の考えを把握するため、早急に意識調査をするよう厚労省と文科省の担当者に求めた。

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 今回の会議から初参加の塩谷立文部科学相は、「臨床研修制度によって医師不足に陥ることは最初から予測できたこと。舛添大臣と協力して、少しでも早く結論を出したい」とあいさつした。会議の前半は、札幌医科大の今井浩三学長、金沢大学附属病院の富田勝郎院長、長崎大医学部の河野茂部長の3人がそれぞれ意見を述べた。

 今井学長は、私案として研修2年目の「自由選択」の期間(8月−翌3月の8か月間)を「地域医療」研修に充て、出身大学のある都道府県内の病院で臨床を経験させるプログラムを提案した。

 舛添厚労相はこの私案に賛意を表明した上で、「(2年の研修期間を)1年に短縮してはどうか。一気に8000人医師が増えるので即効性はあると思う。そこで発生する問題についても、重点的に議論していきたい」との考えを示した。

 富田院長は、「大学病院の医局制度の良さを適正に評価せず、医局崩壊を図ったことが問題だ」と指摘。「日本では大学病院が軸となって、『医の心』『倫理感』を大切にして、拝金主義、市場原理主義に偏らない真の医療を教育してきた。また、そのことが地域医療を支えてきた。大学の医局制度は、日本が150年かけて試行錯誤しつつ築いてきた『資本主義と社会主義の中庸をいく』素晴らしいシステムだ」と医局制度のメリットについて言及し、大学病院を基軸にして地域医療を立て直すべきだと強調した。
 また、「大学病院専門医特別コース」を全科に適応するプランを提案。これによって、▽実質的に、研修期間が1年短縮することになる▽医学部との連帯感が強くなり、卒業大学の病院に残る率が高まる▽指導医が教育に力を入れやすくなる▽地域医療が大学病院と行政の連携を強くする―などのメリットがあるとした。
 研修医たちが研修先の病院で、手掛けた症例の数(かかわった症例の数)を競っている現状についても取り上げ、「(医師は)患者に対してそんなことを言ってはいけない。一人の患者に対し、真心を込めて最高の治療を提供することが医師の役目だ」との持論を展開。さらに、「地域医療は(経験の少ない)若い医師に任せればいいという意見は、地域(の患者)にとって失礼ではないか。そんな医師には誰も診てほしいと思わないはずだ」と疑問を投げ掛けた。

 河野部長は、医学部生たちが講義を抜け出してマッチング試験を受けに行っていることや、研修医たちが希望以外の科を回ることを時間の無駄ととらえていることを問題点として挙げた。また、長崎大の研修医が年々減っている現状を示した上で、「都市部と地方に適正にマッチングされるような制度をつくってほしい。まずは入り口である医学部の入学定員数を増やしてほしい」と強調した。

 会議の後半は全参加者で意見交換した。山形大医学部の嘉山孝正部長は、「医師数が足りない中で、教育の質を確保しながら、地域医療の崩壊と科ごとの偏在を改善していかなければならない」とした上で、「国家試験を医学部5年時に受験させてはどうか」「(政府予算の)教育費、医療費をもっと増やしてほしい」などと主張した。

 聖路加国際病院の福井次矢院長は、研修医になる卒業生が全国で8400人しかいないのに、募集枠は1万1290人もあることが地域や科によって偏在が起こる原因だと指摘し、募集枠の適性化を求めた。また、医学部生の「卒前研修」の充実についても検討する必要があるとした。

 意見交換終了後、舛添厚労相は厚労省と文科省の担当者に対し、医学部生と指導医にアンケート調査をするよう求め、「医学部生たちはお金で研修先を選ぶのか、それとも研修先の場所で選ぶのか、また教える立場の人たちはどんなことを考えているのか知りたい。その調査結果を基に議論を重ねたい」と述べて会議を締めくくった。今後も月に1回のペースで議論を重ね、年内には中間報告をまとめる考えだ。


更新:2008/10/16 20:57   キャリアブレイン


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