「社会的退院」の高齢低所得者にどう向き合う
医療や介護を必要とする高齢の低所得者をいかに支えるか―。ホームレスや低所得高齢者、要介護高齢者の生活支援を行っている民間非営利団体(NPO)「自立支援センター・ふるさとの会」はこのほど、「高齢低所得者の居住支援と地域ケアネットワークの広がり〜中間施設利用者の<重篤化>を踏まえて」をテーマにシンポジウムを開き、医療関係者、NPO関係者が意見を交わした。この中で、同会の佐久間裕章代表理事は、療養病床の削減の動きの中で、「社会的入院どころか、『社会的退院』が起こっている」と指摘。医療や介護を必要とする高齢低所得者を支えるには、「地域の連携が重要」と訴えた。
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浅草病院の本田徹医師は、「10対1の看護配置を取る浅草病院のような中小の病院は、患者の平均在院日数を3週間以内に抑えないと採算が取れず、病院自体がつぶれてしまう。『社会的退院』への非常に物理的、具体的なプレッシャーになっている」と語った。また、「医療区分1に分類される患者へのケアに対する診療報酬が低く、採算が取れないため、医療区分1の患者を3割以下にしないと、療養病床は持たないといわれる」と指摘。いかに医療区分1の患者を減らし、転院させるかで「きゅうきゅうとしている」と述べ、“医療難民・介護難民”の発生につながっていると訴えた。
ホームレスなどが多く住む東京都台東区、荒川区の「山谷(さんや)」地区などで訪問看護や健康相談に取り組んでいるNPO、訪問看護ステーション・コスモスの山下眞実子代表理事は、山谷の現状について、「65歳以上の人口割合が50%以上で高齢化が著しい」と指摘。また、「スタッフから『医療依存度の高い単身者が旅館やアパートで生活している』『退院に向けた調整が不十分なまま退院してくる人が多い』『症状が重篤な人でも病院に入院できない』との声が上がっている」と述べ、医療や介護の必要な高齢低所得者の置かれた厳しい状況を訴えた。
「ふるさとの会」が運営する自立援助ホーム「ふるさとホテル三晃館」の田辺登館長は、「ケースワーカーの方が、『社会的退院で、高齢者の行き場がない』と困り果て、三晃館を頼ってくる」と話した。三晃館は、個室68部屋、定員78人の施設で、「社会的入院」の患者や介護・見守りの必要な単身高齢者、地域の高齢低所得者の受け皿となっている。田辺氏は、「入所者の症状の重篤化が進んでいる」「複数の疾病を抱える方、要介護度の高い方が増えている」と述べ、医療や介護を必要としつつも行き場のない高齢者が同館に流れている現状を指摘した。
また田辺氏は、「入所して1年だが、もうここを追い出されるのか」「いつまでここにいられるんだ」という高齢者の「叫び」にしばしば向き合うという。「(三晃館の入所者の)多くが、今まで安定して暮らせる環境を持てなかった人たち。一つの所に安定的に暮らすのは非常に大切だと実感した」と述べた。
佐久間氏は、地域の高齢低所得者の問題を解決するには、「居住支援と社会サービスのリンクが重要」と指摘。「社会的退院」を迫られた高齢低所得者や家族で支えることが困難な高齢低所得者の住居をきちんと確保しつつ、「訪問看護ステーションや介護事業所、医師などとの連携を図っていくことが大切」と述べた。山下氏も、「訪問看護は地域との連携によって生きる」と指摘した。
佐久間氏は、「連携することで、自分たちだけの力量ではできないことができるようになる。受け入れ支援の幅の拡大につながる」と述べ、今後の活動の展開への意欲を語った。
更新:2008/10/15 21:54 キャリアブレイン
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